チャンネルデバイダーのVR制御(構想編7)

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構想編7

最後に残ったリレー駆動ブロックを構想します。

リレー回路

構想編2でまとめた回路図を改めて掲載します。

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今回使用するリレーの接点仕様は2cタイプなので、1つのリレーでHotとColdのラインを制御する事とします。2c仕様なのでメークとブレークのどちらの端子を使用するかを決定します。決定にあたり以下を考慮しました。

①無制御時(電源オフ状態も含む)ミュートまたは減衰量大

②動作時の制御コイル電流をできる限り減らす

先に掲載した回路図は、上記を考慮して電源オフ時のSWの状態を表したものとなっています。動作時はこの回路上で最大3個のリレーをオンする必要があります。リレーの操作コイル電流は12.5mAなので3way分で以下の消費電流となります。

12.5mA x 3 x 2(stereo) x 3(way) = 225mA

現実的な消費電流の収まっています。それでもリレーの操作コイルのみの消費電力は2.7Wとなり、電源設計および放熱に注意が必要です。それでは具体的なリレー制御の構想前に回路を確定させます。

リレーブロック回路

構想編2でリレーの制御一覧を掲載しましたが、その一覧はそれぞれの抵抗の接続状態を表していました。回路および制御を検討するには、リレーの制御状態が必要なので、一覧表を作成しなおしました。表中の「1」は操作コイルの駆動を意味します。

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制御するリレーの数は6個なので、直接マイコンのポートで駆動も可能ですが、RL2~RL5は2ビットデコーダを使って配線(使用ポート数)を減らすことにしました。秋月電子の取り扱いを確認したところ、HC139を2品種扱っていました。下記は東芝製のTC74HC139APのデータシートの抜粋です。

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真理表を見てのとおり、出力はLアクティブです。続いてリレー駆動用にこれに対応したトランジスタアレイを探します。見つかった物が東芝の4chローアクティブシンクドライバTD62308BP1です。以下データシートの抜粋です。

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接続のブロック図では動作が理解できず、基本回路を見て理解できました。outputにリレー操作コイルを接続し、さらにコイルのもう一方の端子を12V電源に接続します。出力飽和電圧MAXは1.8Vです。リレーは12-1.8=10.2Vで動作が保証できればいいことになります。リレーの最低動作電圧を確認したところ、9.6Vなので問題ありませんでした。ミュートと減衰倍率抵抗リレー駆動用には正論理のトランジスタアレイを選択します。こちらも東芝製の7chシンクドライバTD62003APが秋月電子のラインナップにありました。このトランジスタアレイの出力飽和電圧は最大1.6Vなのでリレー制御上問題ありません。

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これら部品を前提に回路図を作成しました。トランジスタアレイの回路部品図がなかったので、便宜的にトランジスタ2個でトランジスタアレイ1回路分を表しています。

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リレー制御

ATT表示制御と同様に、事前にリレーの制御状態をRelay配列に準備しておき、ATTstateを使って各状態読み出して対応するポートを設定する事としました。Relay配列に準備する数値を決定します。配列内の数値をポート制御に展開しやすいように配列内のbitの並びを表のように決めました。

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この数値を、ATT表示と同様にvoid setup()内で設定しておきます。リレーの制御は、基本的に、Up/Dowボタンのオン確定時に処理をスタートします。具体的には減衰量切り替え前後にミュート操作が必要なので、状態変数Rstate(リレーステート)を設定して処理を進めることにします。次回はリレーブロック制御用コードの作成を構想します。

 

つづく(構想編8)

チャンネルデバイダーのVR制御(構想編6)

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構想編6

表示処理で残ったミュート表示を構想します。

ミュート仕様

ミュート状態には以下の2つの動作で入る事にします。

①ボリュームミニマム(ATTstate=0)時(ATT表示は-36dB)

②通常状態時(mute=0 and ATTstate!=0)にミュートボタンを押す

 但し、ATTstate=1の時はATTstate=0,mute=0としてミュート状態とする

ミュート状態解除は以下の3つの動作時とします。

①ボリュームミニマム時にUpボタンを押す(ATTstateは0→1)

②ミュート状態(mute=1)時にミュートボタンを押して通常状態とする

③ボリュームミニマム時にミュートボタンを押す(ATTstateを0→1)

ミュート状態時もUp/Downボタンを有効として、ATTstateの変更を許可します。とまとめてみたものの、少し複雑な仕様なのでちゃんと実装できるか心配です。

ミュート表示

いろいろ考えてみましたが、回路がシンプルになることから、ミュート状態でATT表示をブリンクさせる事としました。表示モジュールにブリンクの機能があれば処理も簡単に実装できますが、残念ながらありません。仕方がないので表示の点滅を表示の明るさコマンドを使って、またブリンクのタイミングもソフトで実現させる事にします。

ブリンク表示

ブリンク表示のソフト処理は、タイマー割り込みを使うとシンプルに実装できます。そこでArduinoのタイマー割り込みについて調べてみました。ArduinoUNOのAVRマイコンには、ハードウェアタイマーが3個(Timer0, Timer1, Timer2)あり、それらを使ってTimer系の関数を実現しているとの事です。それぞれのTimerは以下のとおり利用されています。

・Timer0

8bitタイマーでdelay(), millis(), micros()と5,6ピンのPWMで使用されます。

・Timer1

16bitタイマーでServoライブラリと9,10ピンのPWMで使用されます。

・Timer2

8bitタイマーでtone()と3,11ピンのPWMで使用されます。

今回の処理では、Timer0以外の機能は使用していないので、Timer1とTimer2を流用する事ができます。標準の状態では、これらを流用できませんが、便利なライブラリがありました。MsTimer2です。これはTimer2を使ってタイマー割り込み機能を提供するものです。このライブラリで提供される関数は以下のとおりです。

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これらの関数を使って割り込みによる7セグの点滅動作を実装します。

MsTimer2の利用

まずはじめに「MsTimer2.zip」をArduino Playgroundからダウンロードします。

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コンソールから「スケッチ」→「ライブラリをインクルード」→「.zip形式のライブラリをインクルード」をクリックしてダウンロードしたファイルを選択します。

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この状態でスケッチの先頭でMsTimer2.hをインクルードすれば提供される関数が利用できるようになります。使い方はいたって簡単で、MsTimer2::set(ms, void(*f)())で割り込み処理を宣言し、MsTimer2::start()で、割り込み処理が有効となります。割り込み処理自体はvoid(*f)()で記述します。割り込み処理を一時的に無効とする場合は、MsTimer2::stop()関数を使用します。さっそく処理を追加してみます。ミュートボタンのオン確定時に、適切なミュート状態遷移処理を追加します。ミュートボタンを押したときの処理を整理します。

1)ATTstate=1の場合、ATTstate=0 and MUTE=0

2)ATTstate=0の場合、ATTstate=1 and MUTE=0

3)ATTstateが0と1以外でMUTE=0の場合、MUTE=1

4)ATTstateが0と1以外でMUTE=1の場合、MUTE=0

上記の設定により、割り込み処理内で適切な処理(ブリンクオンorオフ処理等)を行います。割り込み処理を整理すると以下となります。

①MUTE=0 and ATTstate!=0の場合、そのままreturn

②MUTE=1 or ATTstate=0でdim=1の場合dim=0, 表示消灯してreturn

③MUTE=1 or ATTstate=0でdim=0の場合dim=1, 表示点灯してreturn

ここで、dimは7セグの点灯状態を表し、dim=1で点灯を意味します。コーディングは上記のとおり仕様が明確になっていたので、それほど苦労しませんでした。

ミュートデバッグ

最初はMsTimer2の割り込み許可の記述を間違えて(startの後の括弧を忘れた)、割り込みが有効となっていませんでしたが、その時のキー操作による状態遷移は正しく動作していました。当然の事ながらミュート状態でも表示はブリンクしません。すぐに記述間違いに気づき、修正したところ、プログラムの動作がすぐに止まってしまいます。1度目のMsTimer2割り込み処理の途中で止まっているようです。散々ソースを確認しましたが、ミスは見つかりませんでした。もしやwire.hでtimer2を使っていないかと、ネット検索してみたところwire.hでtimer2は使っていませんでしたが、2つのライブラリを同時に使用する場合に注意が必要な事がわかりました。wire.hライブラリでも割り込み処理が使用されていますが、MsTimer2の割り込み処理では、他の割り込みが禁止されるため、wire.hライブラリが正しく動作しなくなるとの事でした。対策としては、MsTimer2の割り込み処理の先頭でsei()関数をコールし、MsTimer2割り込み処理内でも他の優先度の高い割り込み処理を許可することで、対策する事ができました。下記がデバッグ時の画面です。

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この割り込み許可による対策は、文章で書くと1行ですが、この対策を見つけるためにそこそこ消耗してしまいました。単純な事でも気づくかどうかが勝負のプログラムデバッグの怖い点です。アイキャッチ写真では目立ちませんが、dim=0の時もうっすら点灯しています。それでも点滅に見えるので機能上は問題ありません。次回は最後に残ったリレー駆動ブロックを構想します。

 

つづく(構想編7)

チャンネルデバイダーのVR制御(構想編5)

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構想編5

Arduino UNOを使ったアッテネータ用リレー制御システムの表示ブロックを構想します。

表示ブロック

Arduinoに対応した表示モジュールは豊富にあります。簡単なものではLEDを敷き詰めたものから、7セグLEDやグラフィックに対応したLCDパネル等など、どれも比較的安価に購入できます。今回は、I2Cインターフェースに対応した4桁の7セグLEDモジュールを選択しました。

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購入したのは、sparkfunのSerial7SegmentDisplayです。使い方はいたって簡単で、電源5Vの他にI2C用の配線2本で機能を利用できます。

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このモジュールは、I2C以外にもSerial UART、SPIインターフェースにも対応しているので状況に応じて選択できます。

I2Cバス

せっかくなのでバス仕様について調べてみました。1980年代初めにフィリップス社が周辺ICとの低速通信用に作った2線式のシリアル通信仕様で1992年に標準化が行われてVer1.0がリリースされました。1個のマスターと複数のスレーブがバス上に接続され、そのバス上で通信が行われます。7bitのアドレス空間のうち16の予約アドレスを除く112のノードが同一バス上に接続可能です。2本の通信線はSDA(シリアルデータ)とSCL(シリアルクロック)でArduino UNOは専用のポートをもっています。(汎用ポートとしても使用可)

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前回の記事で紹介したとおり、Arduinowire.hをIncludeするだけでI2C関連の関数を使用する事ができます。

表示ブロックの実装

先に説明したとおり、7セグモジュールとUNOの接続は+5V/GND/SDA/SCLの4本です。今回は、デバッグ用に7セグモジュールをシールド仕様のユニバーサル基板に実装し、それをUNO本体基板の上に装着しました。

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デバッグ環境はこんな感じになりました。

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表示処理の実装

標準ライブラリwire.hで提供され、今回使用する関数を簡単に紹介します。

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これらの関数をつかって、7セグモジュールがサポートする下記のコマンドを発行して必要な機能を実装していきます。

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7セグモジュールの紹介サイトに便利な関数サンプルが提供されていましたのでそれを参考に必要な関数を作成しました。準備した関数(一部サンプル関数そのまま)をまとめます。

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スタート表示

まずは使い方に慣れるために、電源オン後のスタート表示を実装してみます。処理はdemo()関数にまとめて、void setup()関数内でコールする事にします。内容は以下とします。

①無表示の状態から「ATT1」表示が1秒かけて浮かびあがる

②1秒間表示をホールド

③「ATT1」表示を1桁づつ上位の桁にシフトさせて4桁シフトさせて終了

さっそく実装して動作させてみました。写真ではリアルな印象は伝えられませんが、まあまあな感じです。

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所詮7セグ表示は表現がプアで、特に「T」が「ヒ」に見えてしまう点がご愛敬です。

ATT表示

リレーの状態制御用にATTstateレジスタを設定し、この値で表示も制御します。電源オンでATTstate=0でスタートし、UpでATTstat=++ATTstate,DownでATTstate=--ATTstateとします。ATTstateが範囲外(0未満または9以上)になる場合はキーを無効とします。表示データは、ATTdisp[]配列(0~8)に事前に設定しておきます。

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実装してデバッグします。C++は身になっていないのでつまらないミスを連発し、何回確認コンパイルを行ったことか。デバッグ中はスタート表示は時間がかかるだけなので処理を無効としておきます。なんとかできあがったのがこんな感じになりました。

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これでATT表示の処理の実装は完了しました。残るはミュート関連の表示です。次回は、残ったミュート関連の表示を構想します。

 

つづく(構想編6)

チャンネルデバイダーのVR制御(構想編4)

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構想編4

番外編で2回分間があきましたが、Arduino UNOを使ったアッテネータ用リレー制御を具体的に構想します。

制御回路基本ブロック

今回のシステムを大きく下に示す3つのブロックに分けて構想を進めます。

1)キーブロック(Up/Dwon/Muteの3つのSWで構成)

2)リレー駆動ブロック(6 x stereo x 3 way = 36個のリレーを制御)

3)表示ブロック(ATTがどのポジションにあるかを表示します)

キーブロック

Up/Down/Mute用の3つのタクトSW相当を使います。3つのSWの状態を検出しソフトの状態を遷移させます。ここでソフトの基本処理を作り込みます。表はソフトの状態遷移をまとめたものです。

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state0(アイドル状態)でSWオンを検出すると各SWに対応した奇数stateに遷移します。各奇数stateの中では、SWのチャタリングを考慮してSWオンを確定し、次のstate(偶数state)へ移行します。偶数stateの中でもSWのチャタリングを考慮してSWオフを確定して、state0(アイドル状態)へ戻ります。アイドルを除く各stateの中では、非同期のタイマを使ってSWオンまたはSWオフ状態を10ms以上継続して検出するとstepを1つ進めます。この処理を繰り返し、step5を越えた時点でSWの状態を確定し、次のstateへ進めます。ここまでの処理の中では、ローカルループ処理となるdelay(ms)関数は使用せずに、プログラムの基本処理をできる限り回すようにしています。

キーブロックコーディング

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本編はまだ構想編ですが、プログラムが作成できるかあたりをつけるために、基本コードを書いてみます。3つのSWは下記のとおり接続します。

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ポートの設定にはpinMode(pin, mode)関数を使用します。modeの部分にINPUTの代わりにINPUT_PULLUPを設定するとマイコン内部で対応ポートがPull Upされるため、回路は以下となります。

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さっそくコーディングを始めます。コンソールがエディタとなっているのでそこに直接記述します。

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C++のソースと同様に、(SWブロックでは使用しませんが)標準ライブラリwire.h(Serial通信用)を記述(Include)します。続いて変数、定数を宣言してセットアップ用のvoid setup()を記述します。void setup()中では、マイコンのI/O設定と電源投入時の表示(型式表示)を行う予定です。さらに続けてviod main()でプログラム処理本体を記述し、最後に必要な関数を記述します。Arduino用のソースコードはスケッチと呼びますが、上述のとおりC++のソースとほとんどかわりません。

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コーディングが終わったら確認用に左上のコンパイルボタンを押します。画面下のバーエリアに進捗が表示され、コンパイルが終わった時点(エラー終了を含む)で下のステータスエリアにメッセージが表示されます。上図は、millis()関数の記述を間違えた時のメッセージです。このような場合は直接エラー箇所が示されるのでわかりやすいですが、たとえば'{'ぬけのような場合は、影響を受けた箇所がメッセージとして表示されるので間違った箇所の特定が少しやっかいです。確認コンパイルが正常終了したら、バイナリを基板に送ってデバッグをします。コンソール左上の確認用コンパイルボタン右隣の矢印ボタンを押すと、最初にコンパイル実行し、完了後に基板へバイナリが転送されプログラムの実行がスタートします。

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メッセージエリアには、コンパイル終了時に使用されたリソース情報が表示されます。標準ライブラリ使用の注意事項に、Includeされたライブラリは、仮に処理で使用されなくてもバイナリに展開されメモリを消費するとありました。試しに今回使用しないI2C用の標準ライブラリを外してコンパイルして、リソースの使用量の差を確認してみました。結果は以下の通りです。

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それなりにリソースを消費している事が確認できました。注意のとおり使用しないライブラリのIncludeすべきではないようです。早々にデバッグを始めます。デバッグにはシリアルモニタを起動します。現状のデバッグ環境には表示ブロックがないので、代わりにシリアルモニタ画面へ必要なメッセージや数値を表示させて動作状態を確認します。表示にはSerial.print()関数を使用します。

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上図はキーブロックのデバッグ中のシリアルモニタ画面です。プログラムがスタートすると「start」(void setupで記述したもの)が表示され、Upボタンを押すと「+」が表示されアッテネータのステップ(ATTstate)に1加算されます。Downボタンを押すと「-」が表示されてアッテネータのステップ(ATTstate)が1減ります。Muteボタンを押すと「M」が表示されます。モニタ中の「@」マークは、アイドル状態に戻ったことを示しています。キーのチャタリング処理も問題なさそうです。キーの複数押しもアイドル状態へ戻ったときに最初にオン検出したSW処理に進むので問題なさそうです。当初、SWを確定させるためのstep数を10としていましたが、SW連打したときにキーの取り落としがあったため、現状の5に変更しました。簡単なソフトとは言え、C++言語によるソフト作成の経験がなかった為心配でしたが、第一関門はクリアできたとおもいます。次回は表示ブロックを構想します。

 

つづく(構想編5)

2018アナログオーディオフェア(番外編22)

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番外編22

前回に引き続きアナログオーディオフェア2018協賛雑誌社主催の講演を紹介します。

伝説のカセットデッキを聴く

中学生時代にAIWAカセットデッキ(AD-7350)を購入してから、途中でYAMAHA(K-1d)のデッキに買い換えましたが大学を卒業するまで、カセットは毎日使っていました。主にFM放送のエアチェックやレコードのダビングでしたが、録音レベルやバイアス量などダビングする人の技量が問われる部分があった事がおもしろかった気がします。今回の講演は、その懐かしさから聴いてみる事にしましたが、進行の方が始まる前に、参加者へカセットデッキの試聴会である事を再確認するほどにお客様が集まっていました。主催は音楽の友社で、講師として月刊Stereoから吉野編集長が、ステレオ時代から澤村編集長が参加されました。(写真は吉野編集長)

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今回試聴するカセットデッキの紹介に入りますが、そのデッキの所有者がそのまま進行に加わりました。

AIWA KX-S9000(福田先生)

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AIWA最後のカセットデッキフラグシップモデルとの事で、4モータークローズドループデュアルキャプスタンメカ、12層ラミネートピュアアモルファス録再ヘッド、センダスト消去ヘッド。発売は1991年、定価は135,000円で、福田先生の倉庫に眠っていたものを1年かけて修理されたとの事でした。

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ナカミチ RX-505/DRAGON(生島店長)

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RX-505はオートリバースデッキですが、この機能をカセット自体を反転させる事で実現したモデルです。このモデルは、リバース動作を見せたいが為に持ち込んだと説明されていました。DRAGONは、言わずと知れたナカミチカセットデッキの集大成と言えるデッキで、カセットデッキの最大の弱点だと私が考える、アジマス調整をNAACシステムで再生テープ毎に自動調整する機能を搭載しています。所有者はディスクユニオンJazz東京の生島店長です。

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TANDBERG TCD-3014A(加藤館長)

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TANDBERGノルウェーのメーカーで、今回持ち込まれた機種は1980年代中頃に発売されたモデルで定価は破格の49万円との事でした。所有者は、Web上でなつかしのカセットテープ博物館を主催する加藤館長です。(はじめに掲載した吉野編集長写真の左奥の方です)オークションで競り落として、調整をされた物とのことでした。ここからは条件別の比較対決、およびデモンストレーション紹介をします。最初は各デッキを使った自己録再比較試聴です。

■自己録再比較
・KX-S9000自己録再

事前に福田先生が自宅で'75年録音のブラザースフォーのCDからダビングしたものの再生です。使用テープはTDKメタルテープMA-XGです。

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録音にドルビー等のノイズリダクション機能は使っていないとの事ですが、比較的大音量の再生にもかかわらず、ハイポジション同等のEQ設定のため、ヒスノイズもそんなに気になりませんでした。ちなみに私も学生時代にカセットを使っていた時もノイズリダクション機能を使いませんでした。音量によってヒスノイズのレベルが不自然に変動する点が気持ち悪かったためです。最近のデジタルTV放送に、DBXのような?ノイズリダクション機能がかかっているようで気になっています。余談はこのくらいにして、肝心の音の印象ですが、厚い低音、安定した再生でしたが、昔使っていたAIWAのデッキの音を思い出すなつかしい音だと感じました。

・RX-505/DRAGON自己録再

所有者の生島店長のこだわりで、使用テープはマクセルのUD-Ⅰです。ナカミチのデッキは、ノーマルテープの音がいいということが選択の理由です。

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録音はRX-505で行ない、ソースはエセル・エニスのデビューアルバム「Sings for Lullabys for Losers」からです。RX-505の再生は自己録再のためバランス良くかつ安定して鳴っていました。さすがにノーマルテープのヒスノイズは大きく無音時の音量調整をおっかなびっくり行っているのが印象的でした。続いてそのテープをDRAGONで再生します。NAACシステムにより、高域の再生は問題ありませんでしたが、自己録再のRX-505よりも窮屈ななり方をしていました。

・TCD-3014A自己録再

ソースはマドンナCDで、使用テープはマクセルのメタルバーテックスでした。

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ビートの利いた楽曲で、バランス、ダイナミック感は申し分ありませんでした。webで確認しましたが、このデッキはドルビー回路を除き、すべての回路がディクリートで構成されているとの事で、私好みのしっかりした音で鳴っていました。欲を言えば、繊細な部分の音を別の楽曲で聴いてみたいとおもいました。

■ミュージックテープ再生比較

福田先生が温存していた、メタルマスターシリーズが持ち込まれて、各機種の再生比較が行われました。1984年発売の伊藤たけしの「ディアハーツ」です。この比較では、NAACシステムが有効に働いたDRAGONの圧勝だと感じました。

■39年前のエアチェックテープ再生

生島店長が中学生時代にエアチェックしたテープをDRAGONで再生しました。当時YAMAHAのチューナー&ビクターのデッキを使用していたとの事です。テープはTDKの初代ADでした。ソースは当時目黒のパイオニアスタジオからライブ放送された物とのことで、デビューしたての尾崎亜美さんが歌っていました。39年前の録音とは思えない鳴り方で、経時劣化はほとんど感じられませんでした。

■生録会テープ再生

生島店長が企画した生録会で録音されたテープを持ち込みDRAGONで再生しました。録音はSONYのカセットデンスケTC-D5Mとの事です。

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シュアーのダイナミックマイクによるワンポイントステレオ録音されたものですが、アコースティックギターの演奏が目の前に広がるようなダイナミックな鳴り方で、カセットの実力を改めて認識させられました。

まとめ

紙面の関係で、会場での録再対決の紹介は省略させていただきましたが、カセットの楽しさ、実力が伝わる比較イベントが順序良く並べられ、講師人数の多い進行を生島店長がうまくまとめられて、なつかしくまた楽しい時間を過ごす事ができました。このような企画を今後も期待したいとおもいます。

 

おわり(番外編22)

2018アナログオーディオフェア(番外編21)

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番外編21

アナログオーディオフェア2018をレポートします。

アナログオーディオフェア

2018年6月9日と10日に開催されたアナログオーディオフェア2018に行ってきましたので紹介します。今回で4回目とのことですが、私は初参加となります。場所は他のオーディオイベントでおなじみのお茶の水の損保会館です。入場無料で、全開催イベントを楽しむ事ができます。主催はアナログアーディオフェア実行委員会で、オーディオ関連の出版社を中心とした7社と共同通信社の計8社が協賛しています。出展ブランドは約60社で、物品の即売も行われていました。

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私が行ったのは、6月9日(土)です。土曜の講演スケジュールを参考に掲載します。

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今回は、協賛雑誌社が主催する講演を中心に見てきました。

最新MCカートリッジ比較試聴

会館の中で即売スペースを除き、一番広い部屋で行われました。主催は音元出版で、進行は小原由夫先生です。

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下のチラシが比較試聴される12のカートリジッジです。

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学生時代には、アナログレコードを中心にシステムを構築していて、少なくとも当時はCDよりもアナログレコードの方が音がいいと考えていました。その後、諸般の事情によってレコードを含めてアナログ関連の機器を全て処分されてしまいましたが、その当時の考えを検証してみたいと思っています。当時との大きな違いはアナログ再生システムは贅沢なもになってしまい、環境を含めてちゃんと再生するためにはそれなりのお金がかかる点です。このような理由から、現時点ではアナログレコード再生に手を出してはいませんが、何れは環境を整えたいとの考えから、今回の講演を聴いてみました。

■比較試聴方法

再生するレコードを含めて、ヘッドシェルからスピーカーまでを共通な環境で比較試聴する事ができました。スピーカーは、昨年の東京インターナショナルオーディオショウのLUXMANブースのデモで好印象だったfocalのスピーカーです。LUXMANのデモで使用されていたのは、MAESTRO UTOPIA EVOでしたが、今回使用されたものは、scala UTOPIA EVOでした。

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アナログプレーヤーはThechnics SL-1000R, ヘッドシェルはOrtofon LH-4000, フォノイコライザーAccuphase C-37, プリアンプLUXMAN C-900u, パワーアンプLUXMAN M-900uです。

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使用されたレコード1枚目はGEORGE SHEARING & MEL TORMEライブレコードです。小原先生が未知の製品に対して最初の試聴で使うレコードとの事で、1982年サンフランシスコのホテルで行われたライブレコーディングをコンコードレーベルから発売されたものです。今回はB面から「ユッド・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥー」が使われました。

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レコード2枚目はRESPIGHIのローマの松でREINER指揮シカゴ交響楽団の1959年の演奏を録音したもので、2013年にアナログプロダクションズが重量盤復刻リリースしたレコードです。使用された部分は、第一部ボルゲーゼ荘の松で特徴はラチェットやトライアングル等なりものがきらびやかに鳴るところです。

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紙面の関係から12の試聴モデルの中から私の印象に残った5種のカートリッジの試聴結果を紹介します。

Accuphase AC-6

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特徴は以下のとおりです。

・ベースに金イオンプレーティングによる硬化処理をしたチタン削り出し素材

・ボディーは金色アルマイト処理したアルミ削り出し素材

・無垢ボロンカンチレバー

・セミラインコンタクト型スタイラス

・磁気回路にネオジウムN50採用

音の印象は、1曲目ベースが生々しく、音が前に出る印象。バランスも良い。2曲目は鳴り物の広帯域感、奥行き表現に影響する響きが綺麗。

■IKEDA Sound Labs 9XX

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特徴は以下のとおりです。

・チタン合金のベース

・ブラックロジウムメッキ処理したアルミニウム合金製のボディー

・ボロン製カンチレバー

・マイクロリッジ形状スタラス

音の印象は、1曲目再現性、音の分離、奥行き感のそれぞれが良くボーカルが自然な感じに再生されました。2曲目は鳴り物は明るい感じで聴きやすく余韻が綺麗に再生されました。

■Ortofon MC Windfeld Ti

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特徴は以下のとおりです。

・センター部メインフレームをチタン粉末の立体成形タイプにアップグレード

ネオジウムマグネットを採用したFSE磁気回路

・ボロン製カンチレバー

レプリカント100スタイラス

音の印象は、1曲目ベースの音に厚みがあり響きが美しい。ボーカルが前に出る印象。2曲目は鳴り物はきらきら感があるが聴きやすい音で、余韻もきれい

■My Sonic Signature Platinum

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特徴は以下のとおりです。

・ベースにチタンを採用

・ボロン製カンチレバー

・セミラインコンタクト針

ネオジウム#50

音の印象は、1曲目ベースに躍動感があり弦を弾く音がリアル。余韻が綺麗。2曲目は鳴り物のきらきら感がありながら聴きやすい音。全体的に綺麗に鳴る。

■TOP WING 朱雀

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特徴は以下のとおりです。

・コアレスストレートフラックス方式の発電構造

・チタン, ドライカーボン等採用による軽量化

・アルミニウム製カンチレバー

・ラインコンタクト針

音の印象は、1曲目ベースの音が厚く躍動感がある。ボーカルが自然で前にでる。余韻が美しい。2曲目は鳴り物の響きが美しく明るく聴きやすい音でした。

感想

ヘッドシェルを含めたカートリッジの交換作業は繊細な調整が必要ですが、短時間で12種類もの製品の聴き比べできたのは貴重な体験でした。それぞれのカートリッジの音の印象の違いを体感する事ができました。交換調整は2名で行われましたが、事前に練習をされていたとの事で、その成果が発揮されていたとおもいます。非常に手のかかる比較試聴をうまくまとめられていた印象です。次回もアナログオーディオショウのレポートをします。

 

つづく(番外編22)

チャンネルデバイダーのVR制御(構想編3)

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構想編3

アッテネーターのリレー制御にArduino UNOを使う宣言をしてしまったのでArduinoの概要を紹介し、開発環境を準備します。

Arduinoについて

初めにArduinoについてネット上から得た情報を簡単にまとめます。Arduinoプロジェクトは、2005年にイタリアで、大学教授等が教育用に安価なシステムを作ることを目的にスタートしました。マイコンはAtmel AVRシリーズが採用されてました。安価なシステム構築の狙い通り統合開発環境IDE)が無償で提供されていて(ダウンロード対応)Arduino基板とPCがあればすぐにソフト開発が開始できます。C++風のArduino言語を使い、Arduino用のソースコード(スケッチと呼びます)を記述します。現時点では、Arduino LLCおよびArduino SRLが設計製造を担当しています。数多くの周辺回路(シールドと呼ばれるマイコン基板に段積みして使用するものやモジュール基板等)がサードパーティーから発売されていて、その機能を簡単に利用することができる事も大きな特長です。

Arduino UNO

Arduino UNOはArduinoシリーズの1つで2010年に発売され、現在ではArduinoのスタンダードとなっていて、多くのシールド(周辺回路基板)がUNOに対応しています。本体はアマゾン、秋月電子他いろんなサイトで扱われていますが、シールド含め周辺機器を豊富に扱っているのがスイッチサイエンスです。スイッチサイエンスの2018年6月現在のArduino UNOの価格は3,240円でした。

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写真は、Arduino UNO R3の外観です。マイコンDIPタイプのATmega328Pがソケットに実装されています。デジタルI/Oおよびアナログ入力ポートがピンソケット端子として基板の両サイドに配置されています。シールドは、周辺回路が搭載された基板に接続用のピン端子が実装され、マイコン基板の上に直接接続して使用します。写真はイーサーネット機能を実装するためのシールドです。

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基板下のピンをArduino UNO基板上のピンソケットに差し込んで接続します。このシールド基板にもピンソケットが実装されているので、さらに他の機能をもったシールドを段積みして接続する事ができます。話を戻し、Arduino UNOの特徴をまとめます。

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見てのとおり、クロック周波数が16MHzなので高速な処理や、メモリの制約から複雑な処理はできませんが、簡単な回路制御には十分なスペックで、今回のアッテネータ用のリレー制御も余裕で対応できます。

統合開発環境IDE

Integrated Development Environmentの頭文字をとって通称IDEと呼ばれています。Arduino用のIDEは、Arduino公式ページから無償でダウンロードする事ができ、エディタ、コンパイラとデバッガ(シリアルモニタ)で構成されています。具体的なインストール方法は、数多くの解説サイトがあるので紹介を省略いたしますが、Arduino UNOをUSBでパソコンと接続した状態でセットアップを起動するだけでインストールは完了します。写真はデバッグ中の画面で、バックがエディタとコンパイラ機能含む基本コンソールで、手前にポップアップしているのがシリアルモニタ画面です。ソースにSerial.print文を入れることで、数値や文字列をシリアルモニタ画面にリアルタイムに表示する事ができ、デバッグの効率を上げる事ができます。

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デバッグ環境

写真は、スイッチサイエンスが取り扱うArduino UNO用のベースに本体とブレッドボードと呼ばれるピンワイヤーに対応した基板を取り付けたものです。

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本体は、USBケーブルでPCと接続します。ここを介して、電源の供給、ソフトの書き込み、デバッグ時のシリアルモニタ用の文字列の入出力を行います。ブレッドボードは、簡単な回路であれば半田を使わずに実装ができます。このように大変手軽にソフト開発ができます。次回は、この環境を使って基本ソフトの作成デバッグを行っていきます。

 

つづく(構想編4)