真空管HPアンプの製作(まとめ編)

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まとめ編

アンプが完成したので、音質比較をした後、設計を改めてまとめます。

音質比較

比較対照は、先に製作したBTL方式A級DCヘッドフォンアンプです。比較に入る前に簡単に紹介します。回路は入力がDual J-FETのカスケード接続の差動アンプです。2段目は普通の差動アンプ構成で、ドライバおよび終段はコンプリメンタリバイポーラトランジスタ構成です。

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電源には24VAのトロイダルトランスを使用しています。

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比較で使用するヘッドフォンはいつも使っているパイオニアのSE-MHR5です。

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比較の方法は、普段聴いているCDを最初にトランジスタアンプで聴いて、その後真空管アンプに切り替えます。音の印象を比較します。

■氷の世界/LINDENBAUM(井筒香奈恵)

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トランジスタアンプの方が女性ボーカルがよりハスキーに聴こえます。奇数次高調波の影響でしょうか?真空管アンプは中低域が厚く鳴ります。音量を上げて聴きたくなり、音はなめらかです。

木星/惑星

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トランジスタアンプは音の分離が良く聴こえました。真空管アンプは音が厚く暖かみのある音色です。トランジスタアンプも悪くありませんでした。

ファランドール/BJⅡ(Bob James

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トランジスタアンプの音はベースの音に芯があり、ハリのある音がします。真空管アンプは演奏に奥行きを感じます。ブラスの音が美しく響きます。

■海風/海風(風)

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トランジスタアンプはパワーで鳴らす感じのベースが特徴です。真空管アンプはアコスティックギターの響きが厚く美しい。音が厚く鳴ります。

■星に願いを/スペシャル(ケニードリュー)

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トランジスタアンプはベースの基音が明瞭に鳴ります。真空管アンプはベースに迫力がありピアノが美しく響きます。

音質比較まとめ

トランジスタアンプはタイトな感じで鳴ります。ボーカルは真空管アンプと比較して、ややハスキーな感じに聴こえます。真空管アンプは全般的に演奏が厚く聴こえます。ボーカルはハスキーな感じはなく艶やかに聴こえます。この差はアンプの裸ゲインの差に伴う帰還量の違いや、素子の特性の違い(偶数次と奇数次の歪み量の差)に起因するのでしょうか?普段、ヘッドフォンアンプはデスクトップのTVの音を聴く為に使用していますが、この普段使いの場合は真空管アンプの音の方が適している印象です。機会があればヘッドフォンを買い足してまた比較をしてみたいとおもいます。

設計まとめ

最後に設計のまとめを行います。今回は初めて全て3極管を使い、コンパクトに構成するために、オール双3極管構成としました。パワートランスと出力トランスはヘッドフォンアンプ用のものがないので10Wクラスのパワーアンプ用の物を選定した為、音質にも好影響を与えています。

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初段と終段のロードラインも改めて掲載します。終段は負荷抵抗を見直した為、変更を反映したグラフとしています。

■初段ロードライン

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■終段ロードライン

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電源回路は製作実績のある、トランジスタを使ったリップルフィルタを採用しています。

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ここからは外観写真を掲載します。

■フロント写真

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■フロント写真(ボンネット付き)

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■リア写真

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■シャーシ内部

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真空管

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写真を見てのとおり、シャーシは、もう1クラス小さいものでも実装できそうですが、残課題のハムの影響を考えると、このサイズが適当だったとおもいます。本製作は10連休となった今年のスペシャルなゴールデンウィークの過ごし方として設計を開始しましたが、GW中には完成できずにこのタイミングとなってしまいました。今回もおつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)