無帰還広帯域真空管アンプ(製作編37)

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製作編37

引き続きL-ch初段がバランス動作しない原因の特定を行います。

前回のおさらい

改めて回路図を掲載します。

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前回の記事でL-ch終段Cold側のバイアス調整回路をカットすると正常動作する事がわかった事を報告しました。バイアス調整回路は単純で、-5V電源を使って終段のグリッド電圧を調整して終段のバイアス電流のバランスをとる回路です。回路の入力インピーダンスは390kΩ以上あるので、初段の出力に大きな影響を与えると事は考えにくいです。改めてバイアス回路の確認をしてみます。

バイアス回路確認

症状が発生する状態で入力信号を0にして、終段真空管のグリッド電圧をモニタしてみました。掃引速度は1.0s/divです。

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青がHot、黄がColdです。様子が全く異なります。仕方なので一旦バイアス回路基板を取り外して確認をしてみる事にしました。

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取り外した基板にユニバーサル電源で-5Vを入力してバイアス調整回路の確認をおこないました。

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ボリューム位置は動かさずに、出力電圧を確認しました。Hot側が-137mV、Cold側が-353mVで問題なく機能していました。上で確認した入力0時の終段グリッド電圧波形の違いは、どうやら初段のHotとColdのゲインの差に起因していると考えると辻褄があいます。バイアス調整回路基板には問題がなさそうなので、シャーシに再実装しました。同様の信号をR-chでもモニタしてみました。

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Hot/Coldともに同相で振れている事がわかります。L-chの各部の信号をモニタしていたところ、たまたまバイアス回路は切り離さずに正常状態になった為、終段のグリッド電圧波形をモニタしてみました。

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電圧感度が上の観測の1/2の200mV/divとなっていますが、R-chと同様の波形が観測できました。以上の確認から終段バイアス調整回路は実装状態でも正しく動作している事が確認できました。次はHotとColdの調整回路を入れ替えてみたいとおもいますが、終段のバイアス電流がアンバランスとなってしまうので、終段の真空管を外して確認をしてみます。

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まずはこの状態で、症状が再現する事を確認しました。確認は入力信号を200mVppとして初段差動真空管のVp波形をモニタします。

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波形を2つ掲載していますが、上が終段を外した直後に確認して結果です。症状が起こらなかった事から、この現象は終段真空管にも影響を受けていると複雑な気分で、各部電圧の確認を行ったところ、下の波形のとおり症状が発生しました。上波形は、回路に刺激を与えると正常動作する事が確認されていましたが、この事例が発生したようです。

終段真空管なし確認

終段の真空管なしで原因検討できる事がわかったので、まずは終段バイアス調整回路接続のHotとColdを反対にしてみました。

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この状態で症状の発生の有無を確認してみます。確認は今までと同様に200mVppの信号を入力して、初段差動真空管のVp波形をモニタします。結果は以下のとおりです。

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なんと見事にバイアス調整回路出力に現象がついてきました。この状態でHot側の調整回路接続を外してみます。

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こ時の結果は以下のとおりです。

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正規接続時と同様にHot/Coldともに正常動作をする事が確認できました。これらの結果から原因は終段バイアス調整回路Cold出力にあるとしか考えられません。今まで何度も確認したのに・・・?次回も引き続き初段差動回路バランス動作不具合の検討を行います。

 

つづく(製作編38)