無帰還広帯域真空管アンプ(製作編33)

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製作編33

引き続きL-ch初段Cold側のゲインが低い原因の検討を行います。

真空管の交換

前回、L-chの初段差動入力用の真空管の交換を行ってみましたが、症状に変化はありませんでした。今回は、初段の等価抵抗動作をする真空管を交換してみます。組み合わせが複雑にならないように、初段差動入力用の真空管を元に戻し、交換確認を行った真空管を、等価抵抗動作する真空管と入れ替えました。早速、初段Cold側のRk(2kΩ)の両端電圧の確認を行いました。結果は以下のとおりです。

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残念ながら全く変化がありません。チェンジニアになるとほぼ思考が停止します。この状態で、いろんなポイントをオシロで波形観測しているときに、症状が改善する場合がある事を見つけました。下記は入力200mVppでch1がHot側終段入力波形、Ch2はCold側初段のプレート電圧波形です。

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ch2のcold側初段プレート波形は症状発生時、1Vpp出力ですが、ほぼHot側同レベルの約10Vppの波形となっています。ch1の観測ポイントを変えると、また症状が発生します。原因特定につながる大きなヒントですが、まだ原因にたどり着く事はできませんでした。原因の検討に息詰まってしまったので、矛先を変えて耐圧保護回路の動作検証を先に行う事にします。

耐圧保護回路動作確認

改めて耐圧保護回路の回路図を掲載します。

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ch1で初段差動入力真空管のプレート電圧をモニタし、ch2でヒーター用リレーの制御信号をモニタしてみました。オシロスコープの掃引速度を下げて(10s/div)スクロース状態にして電源オンしました。

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リレー制御は行われているものの、動作電圧が設計値どおりではありません。ヒーター回路が切り離される電圧は120Vで、12AY7の定格値を越えています。復帰電圧は80Vで動作のヒステリシスが大きすぎます。このまま電源オン動作を繰り返すと、時間は短いとは言え、定格値を越えているため、真空管を壊してしまします。取り急ぎ基準電圧を2.1V(判定電圧80V)に調整し直して電源オン時の確認をしてみました。

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結果は、リレーオフ電圧が約100Vに下がりましたが復帰電圧も同様に約60Vまで下がってしまいました。この状態でも真空管の定格を越えてしまっています。そもそも判定回路の時定数が大きすぎる事が問題です。耐圧保護回路基板を取り外さずに済まそうと考えましたが調整でごまかせるしろものではありませんでした。意を決して耐圧保護回路の時定数の見直しをします。現状は10uFの電解コンデンサと、充電時は1MΩの抵抗で時定数が決まる為、10sとなっています。これを在庫の関係で0.022sにしてみます。もう一度耐圧保護回路基板を取り外す事になるとは・・・とほほ。なんとか4本の10uFの電解コンデンサを0.022uFのフィルムコンデンサに交換しました。

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交換後の基板をシャーシに取り付けて、基準電圧を2.36Vに調整し直し電源オンしてみました。結果は以下のとおりです。

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設計どおり90Vを境にリレー制御されている事が確認できました。念のため電源オフ時の波形も確認しました。

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電源オフで安定状態で即座にリレーがオフするので、耐圧の心配がない事が確認できました。淡い期待を抱き、この状態でL-ch Coldの初段ゲインの確認を行ってみましたが、何ら変化はありませんでした。次回もゲイン不具合の検討の続きを行います。

 

つづく(製作編34)