EL34シングルアンプ性能改善(構想編1)

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構想編1

過去に製作したEL34デュアルシングルアンプの性能改善を構想します。

EL34デュアルシングルアンプ

今回の改善対象は、バランス入力シングルパワーアンプ製作(2016-10-14~)で記事にしたシングルパワーアンプです。私がブログで公開した製作記事の中でBTLアダプタを除き、唯一バランス動作しないアンプです。真空管アンプ2台目の製作で、あまり理解が深まっていない時の設計の為、見直しをする事にしました。当時の製作の目的は、プッシュプルアンプとの比較で、その為に先に製作したEL34プッシュプルパワーアンプと極力部品を合わせました。この為に終段はEL34のデュアル構成となっています。

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初段は12AX7の差動アンプでバランス入力とし、終段への出力は差動アンプの片側から行っています。終段はEL34シングル構成を単純にパラレル接続しています。出力トランスはソフトンのRW-20を使ってスピーカーへバランス出力しています。

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真空管の並びはEL34ppアンプと同じで外側2本づつがEL34で内側2本が12AX7です。設計上の出力は7.6Wです。音はマイルドな感じで聴く楽曲によってはマッチしました。シャーシ内はこんな感じです。

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EL34シングルアンプ特性

製作後しばらくして発振器とポケットオシロの購入をきっかけに周波数特性の測定を行いました。(パワーアンプの周波数特性番外編7 2017-02-17参照)結果は以下のとおりです。

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FM放送の周波数特性のようです。マイルドな印象はこの特性に起因しているところが大きいとおもいます。マルチアンプシステムでは、この特性を考慮して一時期Mid-ch用のアンプとして使用しましたが、今ではEL34ppアンプ2号機がとってかわり出番がない状態となっていました。今回の製作では、終段を普通のシングルアンプ構成に変更して特性改善して普通に使えるシングルアンプにリメイクしたいとおもいます。

周波数特性考察

前回の製作で検討を行った手法で、現状のシングルアンプのカットオフ周波数を試算してみます。

■終段のゲイン

出力トランスは6Ω-2.7kΩタップを使用していますが、スピーカーのインピーダンスが8Ωのため、終段の負荷は3.6kΩとなります。出力トランスをデュアル駆動するため、真空管1本当たりの負荷は2倍の7.2kΩとなります。

gain = μ x RL / (RL + rp)

= 8.7 x 7.2k / (7.2k + 1.0k) = 7.6(17.6dB)

μ = 8.7

rp = 1.0k

RL = 7.2k

■終段入力部容量

Philipsの仕様書をみたところ、各ピン間の容量仕様が掲載されていました。

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この仕様から、EL34の3極管接続時の必要なピン間の容量特性を推定してみました。

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具体的には下記パラメータを推定値としました。

Cgk = 1p

Cgp = 14p

実際の容量はCgpがゲイン倍されるため以下となります。

Cgk + (1 + A) x Cgp = 1p + (1 + 7.6) x 14p = 121p

終段はデュアル構成の為、2倍の242pFと考えられます。

■終段入力から見た初段出力インピーダンス

(rp || RL || rin) + rg = 49.7k(||は並列を示す)

rp = 80k(12AX7の仕様より)

RL = 150k

rin = 470k

rg = 2.7k

■終段入力部カットオフ周波数

1 / (2 x π x C x R)

=1 / (2 x 3.24 x 242E-12 x 49.7E3) = 13.2kHz

上記の試算ですが、正しいか自信はありませんが、実測値に近い値となりました。次回は改造設計を行います。

 

つづく(設計編1)