製作編23
アンプ2の電源配線を完了し、通電および最終調整を行います。その後、終段のバイアス電流の時間経過特性の測定を行います。
アンプ2配線
アンプ1と同様に各アンプユニットへの電源配線を行います。電圧増幅段とドライバ段へは、三つ編み電線を使い、終段は終段ユニットから直出しの電源線を電源基板へ配線しました。続けて各アンプユニットの終段直出しの出力線をスピーカーターミナルに接続しました。詳細は製作編22を参照ください。
終段バイアス電流調整
これもアンプ1と同様に最初に1アンプユニット電源配線を行ったところで通電確認を行い、ヒートシンクが熱平衡状態になるのを待って終段のバイアス電流調整を行いました。残りのアンプユニットも同様の手順で終段のバイアス電流調整を行いました。
最終調整
終段のバイアス電流調整後、ヒートシンクは熱平衡状態となっているのでアンプの最終調整を行います。VR1で出力オフセット調整を、VR2で2段目の差動電流バランス調整を数回繰り返して最終調整を行いました。ここまで駆け足で説明しましたが、詳細は製作編22を参照ください。アンプ2最終調整後の各部電圧は以下のとおりです。
下の表は、終段の電源オフ時のものです。アンプ2の1つのアンプユニットの初段ソース電位が他と異なりますが、このJFETのみ他のものに比べてIdss値が大きい事に起因します。参考にモジュール実装確認時のIdss測定結果を再掲載します。
下記は2SK2145のVgs-Id特性ですが、初段のバイアス電流を1mAとしている為、Idssが大きい場合、無信号時のVgsの電位が下がる為です。
ソース電位が約-180mVのアンプユニットの場合、それ以上の信号入力ができないように思えますが、大きな信号入力時にソースの電位がプラスバイアスとならないように追従するため、問題ありません。念のため動作確認時に観測してみたいとおもいます。
終段のバイアス電流温度補償動作確認
ヒートシンクには、終段のコンプリメンタリペアトランジスタの間に温度補償用のトランジスタユニットを取り付けています。
この構造の場合、熱伝達の遅延により終段のバイアス電流が熱暴走する心配があります。今回はHi-ch用という事で、終段のトランジスタの選定を許容損失よりもft重視で選定した為に余計気になります。測定は終段の2本直列に接続されたエミッタ抵抗の両端電圧をマルチテスターでモニタしました。電源オン直後は、トランジスタの温度上昇により、急激に電流値が変化するため測定の時間間隔は最初は10秒単位、その後15秒単位、1分単位、5分単位と延ばしていきました。終段の温度の影響をみるため、電圧増幅段の電源をオンして1分待った後に終段の電源をオンする事にしました。最初はアンプNo.1の左側(1-L)のアンプユニットの測定を行います。本記事のアイキャッチ写真が測定時のものです。安定が確認できるまで1時間以上も観測しました。結果は以下のとおりです。
時間軸は6秒を基準に対数化しています。最初に急激に電流が増えていますが、トランジスタ自体の温度上昇によりVbeの値が小さくなる事に起因しています。電流の急激な上昇は約1分で収まり、その後緩やかに上昇を続けます。約4分後に減少に転じます。これはヒートシンクの温度上昇により、温度補償用のトランジスタモジュールの温度が上がり始めたことによります。その後じわじわと電流が下がり約1時間後に電流値が安定しました。想定した動作が確認できました。あと3ユニット同じ測定を行うと考えると気が重くなります。次回は残り3ユニットのバイアス電流の時間経過特性の測定を行います。
つづく(製作編24)