終段スイッチング電源検討(構想編6)

構想編6

TDKラムダ製の電源が届く前に電源ノイズのFFT解析を行ってみます。TDKラムダ製電源が届き次第ノイズの確認を行います。

電源ノイズスペクトラム解析

前回の記事のテーマはハムのスペクトラム解析でしたが、そこで構築した環境を使ってスイッチング電源のノイズをスペクトラム解析してみます。解析環境を簡単におさらいします。FFT解析はオシロスコープFFT機能を使用します。私のオシロスコープはBNCコネクタ入力端で4Vpp正弦波が0dBとして観測されます。オシロスコープにはアンチエイリアスフィルタがないので、外付けでfc=500Hz, -24dB/Octのフィルタを製作し、感度を上げるために入力段を10倍(20dB)のアンプを設けました。回路図は以下のとおりです。

回路はバランス入力としていますが、電源ノイズ観測時はCold入力はオープンとします。このアンチエイリアスフィルタはDCアンプ構成の為、電源ノイズ観測時はDCカットしてノイズを入力します。廃部品箱から100uFの電解コンデンサをピックアップし、10kΩの抵抗と組み合わせて一次HPFを作りました。fcは以下のとおりです。

fc = 1/(2π x 10E-6 x 10E3) = 1.6Hz

最初にYXDV10A電源を3.17A負荷で動作させた時のノイズを確認してみます。

アンチエイリアスフィルタ出力波形は以下のとおりです。

波形のピーク振幅は7.56Vとなっていますが、アンチエイリアスフィルタで10倍している為、電源出力のピーク振幅は0.76Vと言えます。これをFFT解析してみました。

ピークレベルは100Hzで4.0dBでした。0dBは0.4Vpp(4Vpp/10)なので、100Hzのノイズ成分の振幅は0.63Vppとなりました。ほぼ観測波形と一致しました。スペクトラム解析のメリットは、他ノイズに埋もれてしまった信号の抽出なので、この電源のようにリップルの大きな電源の観測にはあまり意味はありません。

TDKラムダ50W電源

FFT解析を行っていたところ、TDKラムダ製電源が届きました。秋月電子へ発注し、中一日で入手できました。おかげで週末の確認ができます。型式はRWS50B-12で4.3Aの出力が可能です。

取り扱い説明書は入っていませんが、外箱に仕様や特性が簡潔に記載されています。なかなかかっこいいです。電源を取り出してみました。

ケースの抜き穴がハニカム形状となっており、開口率が高いうえにかっこいいです。配線用の端子台が特徴的です。

電線は横から挿入し、モールドの丸穴からドライバを差し込んで端子台のネジを締めます。太い軸のドライバーが使えないデメリットがあります。さっそく電源ノイズを確認してみます。パスコンを付けた状態で負荷電流を3.2Aとして、アンチエイリアスフィルタをとおして波形を確認しました。

オシロ上のリップルのピーク値は39.4mVなので、実体は3.9mVと良好な結果でした。この波形をFFT解析してみます。

ピークレベルは-48.0dB(100Hz)でした。振幅換算すると1.6mVです。電子負荷のボリュームを回し、ファンの起動前後でノイズ波形が大きく変わる事から、ファンを止めてノイズ波形を改めて確認をしてみました。

オシロ上のピーク値はファンを止めた事で39.4mVから33.6mVに下がりました。リップル値に換算すると3.4mVです。このレベルになると、電子負荷のファンがアンチエイリアスフィルタに影響を与えているようです。ノイズ特性面では確認してきた中でダントツに優秀で、まさに安物買いの銭失いの典型事例となってしまいました。最後にフィルタなしのノイズ波形(3.2A負荷)の確認を行っておきます。

高周波ノイズがノイズのピーク値を高くしていますが、それでも71mVです。これら確認結果から、終段の電源はTDKラムダ製50Wタイプに決定します。次回は保護回路の検討を行います。

 

つづく(設計編1)