まとめ1
大容量電源トランスを別筐体に組み込んだA級BTLモノラルDCパワーアンプと比較試聴をします。
リファレンスアンプ
NS-1000Mバランスマルチアンプシステムのウーファーを駆動するアンプをリファレンスとして比較試聴を行います。試聴前にこのリファレンスアンプについて簡単に紹介します。外観は以下のとおりです。
上がアンプ本体です。モノラル構成の為比較的小さな筐体に納めています。下が電源トランスユニットです。下の写真のとおり大容量トランスを左右チャンネル独立に搭載しています。
次は回路図を比較します。
構成はほぼ同等ですが、下に示す細かな点が異なります。
・ドライバー段トランジスター
・ゲイン(帰還抵抗)
・2段目位相補償定数
・出力位相補償有無
出力位相補償については、安定性にかかわるのでこのモノラルアンプも含めて今後、全トランジスタ式DCパワーアンプに追加していきたいと考えています。次は電源回路を比較します。
ウーハーch用アンプの電源は、とにかく大容量に拘った設計としています。その分設置性や取り回し、コストを犠牲にしています。それに比べてスイッチング電源を使った電源回路は、効率重視の為最低限のマージン設計としています。この恩恵により電源内蔵ステレオ構成として実現できたと考えています。
比較試聴環境
比較試聴は以下の環境で行いました。
通常の環境との違いは、アンプの音をダイレクトに聴く為にマルチアンプとせずにフルレンジスピーカーを使用しています。この為ボリュームユニットも4chタイプを使用します。各ユニットを簡単に紹介します。D/Aコンバーターは、バーブラウン製PCM1792ステレオDACを2個使用してバランス出力を生成しています。
4chボリュームユニットは、ディスクリート構成のDCアンプをバッファとした4chボリュームを採用しています。
スピーカーはフォステックスの16cmフルレンジユニットFF165WKをフォステックスのエンクロージャーBK165WNに取り付けたものです。
スピーカーは、NS-1000Mを台として寝かして設置しています。
設置の関係でスピーカーユニットや、耳の位置よりもやや高くなっています。
比較試聴
初めに、リファレンスアンプを使ってCDを聴き、1曲聴き終わったらアンプを変更して同じ曲を聴きました。アンプのゲインが1dB今回製作したアンプの方が大きいので、リファレンスアンプから被試聴アンプ切り替え時にボリューム調整を行いました。試聴に使ったCDは以下のとおりです。
音の違いはありますが、大きな違いではありませんでした。スイッチング電源を採用したアンプの音の特徴を列記してみます。
・声の低い帯域あたりの音が豊か
・中音域の奥行きが感じられる
・ボーカルの音の離れが良い
・重低音は逆に控えめ
上記の特徴について考えてみました。リファレンスアンプのドライバー段以降の電源は全波整流コンデンサインプット電源を採用している為、基本周波数100Hzのリップルを含んでいます。このリップルの帯域で音の違いが起こったのかも知れません。可聴帯域外のスイッチングノイズの影響は、この試聴の中では特に感じる事はありませんでした。
おまけ
A級BTL方式の電源電流は、HotとColdアンプで相殺されてDCとなりますが、念のため確認してみました。方法は終段の+電源ラインを電流プローブでクリップして電流測定しました。結果は以下の通りです
上がHotアンプの終段電流波形です。1mV/10mAレンジの結果です。電流は音楽信号のとおり変化しています。下はHotとColdの終段電流の和です。ACモードでオシロスコープの感度を最大(5mV/Div)に上げています。終段の電流はHotとColdで打ち消し合ってDCの電流となっている事が確認できました。次回からは、今回の設計と製作のまとめを行います。
つづく(まとめ2)