ローノイズ真空管アンプ(まとめ編6)

まとめ編6

ハムノイズ特性の測定を行い、無帰還時と負帰還をかけた両状態で音楽を聴いてみます。

ハムノイズ特性

今回のアンプの設計製作のねらいはハムノイズ特性の改善でした。改めて適用した対策を整理します。

1.電源トランスの漏洩磁束の影響の低減
  電源トランスを別ユニットに搭載しました。

2.初段真空管のヒーターのDC点火
  初段真空管ヒーター用に専用の安定化電源を搭載しました。

3.負帰還ループノイズの影響の低減
  負帰還配線に2芯シールド電線を使用

ハムノイズ測定

ハムノイズ特性の測定は、オシロスコープFFT機能を使って行いました。測定ブロックは以下のとおりです。

オシロスコープには、折り返しノイズを除去するアンチエイリアスフィルターが内蔵されていません。その為にLPFを入れています。構成は-12dB/Octのアクティブフィルターを直列に2段接続しています。フィルター特性は以下のとおりです。

また、測定の下限レベルを上げる為に、フィルターは20dBのゲインを持たせています。実際の測定は写真のとおり行いました。

オシロスコープの設定は最大感度の5mV/div(プローブ1:1)としていますが、フィルター入力部で見ると0.5mV/divの感度となります。画面上のレベル表示は設定に関係なく0dBがオシロスコープ入力端で4Vppに相当します。まずは負帰還なしの状態でノイズスペクトラムを測定しました。結果は以下のとおりです。

上がRチャンネルで下がLチャンネルです。差動出力時の結果です。Rチャンネルの方が若干良く、50Hzのハムのピークレベルが-98.4dBです。アンプ出力端の電圧に換算すると5uVpp相当となります。能率90dBのスピーカーに接続して耳を近づけてもまったくハムは聞き取れません。同様に負帰還をかけた状態も測定してみました。結果は以下のとおりです。

同様に上がRチャンネルで下がLチャンネルです。1号機では負帰還ラインの引き回しが悪く却って悪化してしまいましたが、本機ではほとんど変わりませんでした。この結果からローノイズ化は実現できたと判断します。

音聴き

私のメインシステムは、マルチアンプ構成の為アンプ単体の試聴用には適していません。そこで試聴用のシステム構築しました。DACまではメインシステムと共通で、DAC出力を通常チャンネルデバイダに入力していますが、それを12chアッテネーターの4ch分に入力してその出力を本機に入力しました。

スピーカーはFostexのFF165WK(16cmフルレンジスピーカーユニット)を使いました。

写真のアンプは今回分解してしまった1号機です。最初に負帰還なしの状態で音楽を聴いてみました。1号機の印象と変わらず、音が前に飛び出してくる感じがします。同じ曲を負帰還をかけた状態で聴いてみました。音が飛び出す感じは後退し、かわりに繊細な印象に変わりました。最後にマルチアンプシステムのスコーカーチャンネルで使用し、現行のトランジスタアンプと比較視聴を準備したところ、NS-1000MのLチャンネルスコーカーが故障した為、このトライアルは延期しました。

復旧後に改めて比較を行いたいとおもいます。本アンプですが、今後はフルレンジユニットを使ったサブシステムをつくり使っていきたいと考えています。

本企画に約半年間おつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編6)