番外編54
今年の年始番外編は趣向を変えて、今まで製作した真空管パワーアンプの聴き比べを行います。
試聴環境
最初に試聴環境をセットアップします。アンプの音を聴き比べる為に、マルチアンプ環境ではなく、フルレンジスピーカーを使って比較試聴します。スピーカーは、Fostex FF165WKを標準バスレフエンクロージャーに取り付けたものです。
スピーカーケーブルは新たに作ります。常用しているスピーカーケーブルは、バナナプラグ付きのものですが、値段の高いケーブルを使っているわけではないので、バナナプラグに当たり外れがありました。
外れ品は、使っているうちにスピーカーターミナルへの差し込みが緩くなってしまい、接触抵抗が気になります。そこで今回は、ネット経由で購入したバナナプラグを使ってスピーカーケーブルを製作する事にしましした。購入したものは、ONKODOのBP146Bです。
このプラグの特徴は、「無塗装」「非メッキ」「BFA(波)型」「リン青銅製」です。見た目の一番の違いは、BFA(波)型ですが、通常のバナナプラグに比べて接触面積を大きくできる事が特徴です。材質のリン青銅は、強度が高く、バネ性に優れ、加工性も良好です。過去に仕事で、10kWクラスの能力の空調機用コンプレッサの端子部分で時々焼損トラブルが発生した事がありましたが、コンプレッサ端子接続用の旗型端子をリン青銅製に変更したところ、トランブルの発生頻度が著しく減った事を経験しました。早速改造を行います。初めにオリジナルのバナナプラグを外します。
取り外しと取り付けは、それぞれイモネジなので、交換は比較的容易でした。
この状態で収縮チューブを被せる予定でしたが、丁度良い径のチューブがなかった為、後回しにします。全てのバナナプラグを交換しました。
音量調整には、バランスボリュームユニットを使用しますが、改造予定があるので、ディスクリートアンプ状態での運用はこれが最後になるとおもいます。試聴環境のブロック図は以下のとおりです。
試聴真空管アンプ
真空管パワーアンプは今まで6台製作しましたが、その内の1台はメインパーツを流用した製作だったので、現在5台の真空管パワーアンプを持っています。概要は以下のとおりです。
全てバランス入出力仕様で5台中の1台のみ負帰還をかけています。
試聴
試聴は、Bob James Twoから「夢のマルディ・グラ」と「ファランドール」の2曲を聴いて印象をメモしました。
1)シングルアンプ
当初、終段管をパラレル構成としていましたが、デメリットの方が大きかったので改造を加えて現在の状態となっています。無信号時のハムは、スピーカーに耳を近づけると聞こえますが、リッスニングポジションでは聞こえません。音の印象は大胆な鳴りっぷりで音が飛び出してきます。自由奔放な印象です。
2)EL34PPアンプ
私が最初に設計製作したパワーアンプとほぼ同一仕様で、真空管パワーアンプ製作になれたタイミングで再度製作したものです。最初に製作したパワーアンプは部品取りして、LN_PPアンプになっています。ハムは全く聞こえません。シングルパワーアンプと比較して、楽器の分離が良くなり、前後方向の広がりが感じられました。
3)オール三極管PPアンプ
差動2段構成ですが、すべて双極管を使用したので真空管4本で構成しています。ハムは全く聞こえません。改めて5極管の3極管接続のアンプと聴き比べると、3極管のアンプの方がいい感じに聴こえました。録音時のバックグラウンドノイズも聞き取れました。もっと出力の大きな3極管でパワーアンプを製作してみたくなりました。
4)ローノイズPPアンプ
回路は、EL34PPアンプとほぼ同等です。ノイズ源となる電源トランスを別ユニットとして外だししています。もちろんハムは全く聞こえません。私の保有する真空管アンプお中で唯一負帰還をかけています。音の印象は定位が良く、優等生的な鳴り方です。録音時のバックグラウンドノイズも聴きとれ、トランペットの高音もきれいに響きます。
5)広帯域PPアンプ
初段をSRPP構成として初段の出力インピーダンスを下げる事をもくろみました。私の真空管アンプの中で唯一、電源にチョークトランスを搭載しています。ハムは聞こえません。音の印象は、音楽が厚く聴こえます。音も飛び出しますが、トランペットの高音の響きもいい感じでした。
まとめ
比較試聴は、回路構成も忘れている状態で行ったので、音の印象へのプラシーボ効果の影響は少ないとおもいます。真空管アンプは紹介したもの以外、ヘンドフォンアンプを持っています。今年の紅白歌合戦は、このアンプで聴きました。なぜか電源ランプが点灯しなかったので、この後確認してみる予定です。また機会があればトランジスタアンプの比較試聴もしてみたいとおもいます。
番外編54(おわり)