2017真空管オーディオフェア(番外編12)

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番外編12

先週に引き続き、オーディオイベント真空管オーディオフェアに行ってきましたので2回に渡ってレポートします。

真空管オーディオフェア

今年は23回目で10/8と10/9の2日間、秋葉原損保会館で開催されました。主催は真空管オーディオ協会で後援は日本オーディオ協会です。そしてオーディオ関連の雑誌を発行する5社が協賛しています。イベントルームで主に雑誌社が企画する講演と平行してメーカーブースで展示が行われました。それではイベントルームの講演を中心にレポートします。

講演1

タイトルは「RCA845とWE300B/K Choke Drive Single Amp聴き比べ」です。企画は真空管オーディオ協議会で、昨年に引き続き柳沢先生の講演でした。

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初めに使用された機器の紹介をします。RCA845 K-Chole Drive Single Ampですが、講演前に配布された資料に詳細が掲載されていました。ビルダーにとってありがたい配慮だと感じました。

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RCA845に関して、イベント前に予習しておきましたが、その内容を簡単に紹介します。直熱3極管で、プレート電圧max=1250V, プレート損失=100Wです。送信管RCA211のグリッドピッチを変更して変調や音声電力増幅用に開発されたとのことで、送信機の変調部や劇場用のアンプに使用されたそうです。10V/3.25Aのトリタンフィラメント仕様で、ヒーターで30W以上も消費します。ここからは柳沢先生のお話ですが、最近RCA845はお目にかからないそうです。お金を積んでも無いともおっしゃっていました。その後cetron社が生産を引き継いだとのことですが、検索をしたところ、セトロン製のものでも1本\80,000の値段がついていました。

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つづいてWB300B K-Choke Drive Single Ampの詳細は以下のとおりです。

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WE300Bは紹介するまでもありませんが、Western Electric社製の音声増幅用の直熱3極管です。ヒーター仕様は5V/1.2Aで、プレート電圧max=350V, プレート損失=36Wです。あまりにも有名な球なので、柳沢先生のコメントは特にありませんでした。

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スピーカーは、FostexのG-2000aです。能率が90dB/Wmと広い部屋での真空管アンプの試聴には能率面で能力不足の懸念がありましたが、出力8Wの300Bのアンプでもなんとか鳴っていました。

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デモの中に、monoLPやSPレコードが含まれていましたが、それらの再生にはGEのバリレラカートリッジが使用されました。Variable Reluctanceが正式名称で、1940年代頃にRPX-040(シングルプレイ)、1950年代前半にRPX-050(トリプルプレイ/シングル)が販売されていました。それらカートリッジを使った再生時にはMJ2015.06で記事になったバリレラEQアンプが使用されました。

いろんな曲を聴かせていただきましたが、印象に残ったのは、BEN WEBSTER KING of THE TENORSからTenderlyです。monoLPなのでGRバリレラが使用されました。柳沢先生のベンウェブスターのテナーのサブトーンが良いとのコメントのとおり、人と楽器がいっしょになって絞り出しているようなサブトーンが魅力的な曲でした。RCA845+G-2000aの組み合わせは、中音域の厚みがもう少し欲しい気がしました。

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300Bの試聴で印象に残ったものは、1960年代に発売された超HiFiシリーズのレコードからTony Mottola/A LATIN LOVE-INのThe world of Your Embranceです。通常6mm幅のテープで録音されるものを、35mm幅のシネテープを使用し、LPサイズの盤を45回転で回す仕様となっています。音は、当時の頑張って録音された感が伝わり楽しめました。

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昨年に続き、青江三奈をもってこられました。昨年は伊勢佐木町ブルースですが、今回は、デビュー曲の「恍惚のブルース」です。発売は1966年とのことです。再生はLP盤が使用されましたが、青江三奈のハスキーな歌声が魅力的に再生されました。

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最後に瀬戸カオリさんのライブが行われました。瀬戸さんのプロフィールを見ると、舞台女優からジャズ歌手へ転身されたとのことです。柳沢先生から事前に告知がありましたが、10/19に東京タックでゲストボーカルとして、11/29にKEYSTONE CLUB東京で福井ともみトリオとライブが予定されていると紹介されました。全3曲を歌っていただきましたが、ファン層を広げるには良い機会だとおもいました。

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再生のデモの全体の感想は、柳沢先生の録音当時の演奏者が伝えたい物をより良く聴く事への拘りが感じられて良い講演だとおもいました。

メーカーブース紹介

ここからは、メーカーブースを回り、気になった物を紹介します。

■美音技研

全段バランス増幅のフォノイコライザーアンプを展示していました。MCカートリッジの信号を初段FETで受けてE88CCをカスコード接続させています。特徴は、RIAA以外にffrr(Decca)、Columbia、SPレコード用の計4種類のイコライザーカーブをもっています。実際にそれぞれのレコード再生をデモしていましたが、対象のレコードを持っている方には魅力的なアンプだとおもいました。発売は2018年予定とのことでした。

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■花田スピーカー研究所

振動板がボイスコイルというキャッチフレーズで、新たなスピーカーユニットをデモしていました。

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比較試聴のスタイルで、B&W 508 Diamondと切り替えて音を聴かせていました。ユニットの手前にガードがあり、その後ろにユニット見えます。(写真は削除要請がありましたので差替えました。2017.10.12)

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■ハットオーディオラボ

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かわったデモを行っていましたので紹介します。この会社は真空管アンプや出力トランスを製造して販売していますが、今回のデモのソースとしてパイオニア製のカセットデッキを1.5倍速に改造した物をつかっていました。私の聴いたコマでは、一切アンプの紹介なしで、1.5倍速の再生をさせていました。ひさびさにカセットの音を聴きましたが、懐かしい音でした。1.5倍速の効果なのかしっかりした音でした。

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■SOLUTION LABO R

SLR方式を使ったスピーカーシステムのデモを行っていました。平面振動板を使ったドロンコーンとアシストウーファーの技術を使って、小口径ながらバランスの良い低音再生をねらっています。

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私が聴いたものは、SLR-EXTREMEで定価が650,000円のものです。写真の一番外側のスピーカーです。見た目のコンパクトさからは想像し難い、バランスの良い低音が再生され魅力的な音にまとまっていました。

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次回は、イベントルームの講演を中心にレポートします。

 

つづく(番外編13)