トランジスタアンプ位相補償(改造編3)

改造編3

改造中に発覚した終段トランジスタの不具合の修理を行い、改造を完了します。

終段トランジスタ修理

前回の記事で紹介した、終段トランジスタ不具合写真を再掲載します。

写真はPNPトランジスタですが、NPNトランジスタも同様な状態となっていました。両トランジスタが同様な状態となっている事から、バイアス電流が増大したか、発振等により、AB級領域に達する大出力発振をした等が考えられます。まずは修理が先決です。修理用のトランジスタの在庫を確認します。2SA1359Yと2SC422Yのコンプリメンタリペアが1組必要です。管理表を確認してみました。

幸い、hfe偏差0.7%のペアが確保できました。まずはヒートシンク内に折れて残っているプラネジを取り出す必要があります。

最初はカッターの刃を差し込んで、ニートシンク内に残ったプラネジを回す事にトライしましたが、表面が削れるだけでネジを回す事はできませんでした。次は、細身のマイナスドライバで回す事をトライしましたが、カッターの刃と同様の結果となりうまくいきませんでした。最後は、φ1.8mmのドリルのビットを手で回してプラネジに穴をあける事にトライしました。この方法はうまくいき、無事プラネジをヒートシンクから取り除く事ができました。

続いて問題のトランジスタを取り外します。リードをカットして短い状態にしてからコテであぶったところ、ピンセットで簡単にリードが除去できました。外したトランジスタはご覧の状態です。

使用したプラスチックねじはポリカーボネート製で難燃製グレードは94V-2だったために、こんな状態ですんだのかもしれません。ポリカーボネートの射出成形時の温度は290℃との事なので、それに違い温度に達した可能性があります。外した基板の状態は以下のとおりです。

2つのトランジスタを取り外し、新しいものに交換します。正しく基板が取り付けられるように、2つのトランジスタをネジで仮止めしてから基板へ半田付けしました。

ハンダ付けはこんな状態で行いました。

ハンダ付けが完了したら、各部品をヒートシンクに元どおり取り付けます。

本題の改造を忘れずに行い、修理と改造は完了です。

単体通電確認

ケースに戻す前に単体で通電確認を行います。改めてアンプの回路図を掲載します。

電源はユニバーサル電源を使用しました。ユニバーサル電源の仕様上、終段用の電源電圧を+/-6Vとしています。万が一の際の過電流保護は、電圧増幅段を+/-50mA、ドライバ段+終段を+/-700mAにセットしました。配線を完了し、恐る恐る電源オンしたところ、いきなり過電流保護が働きました。終段の電流値が約700mAとなっています。やれやれ。仕方がないので、終段のみ切り離して通電確認をしてみます。

この状態では、問題なく動作しているようです。写真は、手段のバイアス電流を下げる調整を行ったため、6V系の電流値が19mAまで下がっています。この状態で終段を再接続して様子を見る事にします。改めて電源オンしたところ、バイアス電流が小さい状態で安定していました。VR3を調整して所定のバイアス電流値とする事ができました。先ほどの状態は、今回使用したトランジスタのhfeが10~20%くらい前のものより大きかったためなのか、そもそも調整値がずれてしまい、大電流が流れたのか真因はわかりませんが、結果オーライです。単体での通電確認は無事終了しました。次回は基板調整から再開します。

 

つづく(改造編4)