ローノイズ真空管アンプ(まとめ編1)

まとめ編1

ローノイズ真空管アンプの設計と製作のまとめを行います。

設計のねらい

現状、常用のマルチアンプシステムのパワーアンプは全てトランジスター方式を採用しています。システムの特徴付けをするために、真空管アンプの組み込みができればと思い、ローノイズ真空管アンプの設計、製作を行う事にしました。設計上のローノイズ化の為の手法は以下のとおりです。

1.電源トランスを別ユニット化して、電源トランスの漏洩磁束の影響を排除する

2.真空管のヒーターをDC点火方式とする

3.負帰還配線を漏洩磁束の影響を受けないように2芯シールド線を使用する

設計方針

今までEL34を用いたプッシュプル方式のA級パワーアンプを2台設計、製作を行いましたが、その設計を踏襲してローノイズ化手法の効果がわかるようにします。製作済みの2台のパワーアンプは、1号機は負帰還をかけ、2号機は負帰還なしの状態としています。

上記は2号機の概要です。今回は最終的に負帰還をかけるため、1号機をばらして大物部品を流用して製作コストの削減と、保管場所の確保をしました。設計した回路図は以下のとおりです。

1号機解体

解体する1号機は以下のものです。

解体は忍びないですが、部品を流用するので仕方ありません。組立にはそれなりに時間がかかりましたが、解体は2日かからずに完了しました。

電源回路設計

ローノイズ化の為のヒーターのDC点火ですが、初段の12AX7は、2本のヒーターを直列接続すると、電流値が150mAとなります。ステレオ分でも300mA/12.6Vで済みます。一方終段のEL34は1本あたり1.6A必要で、ステレオプッシュプルトータルで6.4A/6.3Vも必要となります。ローノイズ化の為のヒーターDC点火には電源の定電圧かが必要と考えますが、さすがに6.4A出力の定電圧電源の準備は厳しいので、初段のヒーターのみDC点火する事にしました。電源の回路図は以下のとおりです。

初段ヒーター用電源トランスは専用に準備し、製作後の確認でレギュレーター入力電圧不足が発覚したため、急遽一次側を90Vタップに接続変更しました。レギュレータは、STマイクロエレクトロニクス製の可変型三端子レギュレータを使用して6.4Vを生成しています。回路図の一番下のブロックは、電源トランスユニットの電源ランプと電源制御用リレーを駆動する為の電源です。詳細は、ユニット間接続ケーブルの項で説明します。

ユニット間接続ケーブル

電源回路図に示したとおり、2つのユニット間は3本のケーブルで接続します。2本がXLRケーブルで、残りが航空コネクタケーブルです。

使い勝手を考えると、3本ともXLRケーブルにしたかったですが、XLRコネクタの定格電圧が50Vの為、真空管のB電源供給用の配線には使えませんでした。急遽アマゾンで使用可能なコネクタを探して航空コネクタを採用しました。XLRコネクタと違い、パネル側はオスしかありません。ケーブルを接続せずに電源オンすると、コネクタの端子に触れる事ができるため、フェールセーフの仕組みが必要となり、電源制御用のリレーを実装しました。この方式の場合、未接続の航空コネクタには、時制御コイル用電源12Vしか印加されません。ケーブルを接続してアンプユニット側の電源スイッチをオンする事で、電源ユニット側のリレーがオンして、初めてB電源用電圧が供給されます。

上が航空コネクタケーブルで、下が5極のXLRコネクタケーブルです。コネクタ自体のできは、格段にXLR方式のが良いです。次回は電源ユニットのまとめから行います。

 

つづく(まとめ編2)