Hi-ch用トランジスタアンプ製作(まとめ編2)

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まとめ編2

今回の製作のまとめを行います。

製作動機

Lo-ch用アンプの改造(電源トランスユニット増設)時にアンプのケースを作り直した為に、パワーアンプ用のケースが余っていた事と、久しぶりにトランジスタアンプの製作をしてみたくなった事が今回の製作きっかけです。

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製作のねらい

従来のマルチアンプシステムのHi-ch用アンプは広帯域設計にこだわったものの、無帰還の真空管アンプの為、特性に限界があり、広帯域のトランジスタアンプと比較試聴をしたくなり、製作を決めました。

アンプ回路

初段カスコード方式の差動アンプです。入力には東芝のDual-JFETの2SK2145を使用しました。チップパッケージ品しかないので、変換基板に実装して6pinDIPソケットを使って基板に実装しています。

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2段目は普通の差動アンプ、ドライバ段と終段はコンプリメンタリプッシュプル方式のA級BTL方式です。構成自体はオーソドックスですが、使用する部品に多少こだわりました。ドライバ段と終段はHi-ftのコンプリメンタリトランジスタを選定しました。東芝の2SC3422と2SA1359です。

下表は、設計時に検討したパワートランジスタの比較表です。

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最大許容損失が10Wとやや小さいですが、ftは100MHzと良好な値となっています。駆動力よりも帯域の特性を優先させて終段はシングルコンプリメンタリプッシュプル構成としました。パラレルプッシュプル構成は駆動力面では有利ですが、入力容量が増えるデメリットがあります。終段のバイアス電流は0.47Aとしました。8Ω負荷時のA級動作の最大出力は約3.5Wとなります。上記を反映した回路図は以下のとおりです。

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電源回路

基本は、Lo-ch用アンプの初期設計を踏襲しています。改良点は以下のとおりです。

・トランスの唸りの改善

 東栄変成器の汎用電源トランスだったものをトロイダルトランスに変更

・電源基板の小型化

 電圧増幅段の低電圧回路を三端子レギュレータに変更

 終段用平滑用コンデンサを10,000uFx10をオーディオ用の33,000uFx2に変更

・メンテナンス性の改善

 全入出力を端子台に変更

以下の仕様は踏襲しています。

・電源ランプ点灯仕様

 コンセントインで赤点灯、スイッチオンで緑点灯(ドライバ段と終段オン)

回路図は以下のとおりです。

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アンプ動作時に電源ランプ駆動電流で終段のプラスとマイナス電源のバランスが崩れないようにチャージ放電用抵抗の定数を設定しています。赤の点灯電流はアンプ非動作時にのみ流れるので、特にバランスの考慮はしていません。

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アンプケース

ケースはタカチ電機のHY133-23-23SSです。フロントパネルとリアパネルは、Lo-ch用アンプオリジナル製作時に加工済みです。リアパネルの加工は、初めてタカチ電機の加工サービスを利用しました。当時の加工図を掲載します。

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XLRパネルコネクタ部はミスして、取り付け用のM3ネジ穴を反対にあけてしまいました。仕方がないので正規位置にM3.2の穴を追加であけてネジとナットで固定しています。こんなに複雑な加工をしなくても良い事に気づき、以降の加工は丸穴にしています。その方が加工費も安くすみます。フロントパネルもLo-ch用アンプ初期状態のものを使っています。下記が当時の加工図です。

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パネル厚は3mmで、穴径が大きくなると加工が大変ですが、φ6くらいまでは問題ありません。フロント、リアともに取っ手を取り付けていますが、パネル取り付け部品の保護も兼ねています。部品は角パイプ固定用の金具を流用です。次回も引き続きまとめを行います。

 

つづく(まとめ編3)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(まとめ編1)

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まとめ編1

完成したアンプをマルチアンプシステムに組み込んで音を聴いてみます。

DCカットスピーカーケーブル

先週の記事でツイーター用のスピーカーケーブルを製作しました。音を聴く前にマルチアンプシステムに対する影響を確認しておきます。最初にこのマルチアンプシステムのチャンネルデバイダーの特性を改めて掲載します。

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一番右の山がツイーター用の周波数帯域です。一方今回製作したスピーカーケーブルの特性は以下のとおりです。

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2つの特性を比較すると、今回製作のスピーカーケーブルは、ツイーターチャンネルの特性にほとんど影響を与えない事が確認できました。音への影響を考えると余分な部品を追加したくはありませんが、ユニットの保護の為には仕方ありません。このスピーカーケーブルをマルチアンプシステムのブロック図に反映しました。

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マルチアンプシステム音聴き

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最初に現行のシステムで何枚かCDを聴きました。現行のツイーター用のアンプは今年初めに製作した真空管アンプです。前回の記事で紹介済み説明は省きます。音に耳が馴染んだところで、比較試聴用のCDを聴きました。使用したCDは、フルレンジスピーカーを使った比較試聴時と同じものです。それぞれのCDの1曲目を聴き、ツイーター用アンプを切り替えます。直前に聴いたCDを再生して、音の印象を比較しました。その後もう1枚のCDに取り替えて聴き、また元のシステムに戻して直前に聴いたCDを再生して音の印象を比較しました。それぞれのシステムの音の印象は以下のとおりです。

■SRPP方式6N6Pプッシュプルアンプ

・中域の音が厚く聴こえる

・元気よく鳴る

■A級BTL方式DCパワーアンプ

・音に奥行きが感じられる

・音の余韻の響きがきれい

音の好みにもよりますが、上記のとおり今回製作のアンプを使った音は好印象でした。現行のシステムの中域の音が厚く聴こえるのは、何の特性が影響しているのでしょうか?また今回製作したアンプを使ったときの音の印象は、トランジスタアンプの広帯域の特性起因なのでしょうか?当面、このシステムのツイーター用アンプは、今回製作したアンプで運用していく事にします。改めてツイーター用のアンプを今回製作のアンプに切り替えて、いろんなCDを聴きました。このシステムの音を聴きながら、試してみたい事がいろいろと浮かんできます。

・スコーカー用アンプもDCアンプにしてみる

・ツイーター用のアンプを真空管アンプの裸ゲインをあげて不帰還をかけてみる

・ウーハー用とツイーター用アンプを入れ替えてみる(単なる興味)

最後の項目はすぐにできるのでやってみようかな?現行ウーハー用アンプの駆動力が今回製作したアンプと比較してどの程度のものか確認ができます。

Hi-ch/Lo-chアンプ入れ替え

試聴時、Hi-ch用アンプとLo-ch用アンプは段積みして使っているので、入力とスピーカーケーブルをそれぞれつなぎ替えるだけで入れ替えができます。それぞれのアンプのドライバ段と終段の電源をオフして接続変更を行いました。比較試聴の方法は、上記と同様に2枚のCDを使って行いました。接続変更前に2枚のCDを聴き、接続変更して最後に聴いたCDの音の印象を確認します。残りの1枚を聴き、再度接続変更してそのCDを聴きました。各システムの音の印象は以下のとおりです。

■接続変更システム

・低音は出ているが、音の重心がやや上がった

・高音域の音の奥行き感が減少

・やわらかな音で、華やかさが後退

■正規接続システム

・音に奥行きが感じられる

・音の余韻がきれい

上記はほぼ想像していたとおりの印象でした。改めて、当面正規接続システムで運用していく事に決めました。次回は今回の製作をまとめます。

 

つづく(まとめ編2)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編27)

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製作編27

完成したアンプをマルチアンプシステムに組み込んで音を聴く準備をします。

マルチアンプシステム組み込み

私のマルチアンプシステムは、ヤマハのNS-1000Mを改造したスピーカーを前提に構築しています。現状のシステムのブロック図は以下となります。

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このシステム中のツイーターチャンネル用アンプを今回製作したアンプに入れ替えます。現行のHi-ch用アンプを簡単に紹介します。

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初段は出力のインピーダンスを下げる為に、SRPP(シャントレギュレーティッドプッシュプル)構成としています。真空管の耐圧の関係からヒーター回路のオン制御を簡単なロジック回路で行っています。終段は6N6Pのプッシュプル構成です。無帰還アンプの為高域のカットオフ周波数は100KHz強というところです。下記が周波数特性です。

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このアンプ入れ替え後のブロック図は以下となります。

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今回のアンプの入れ替えによってカットオフ周波数が大ざっぱに言うと100KHから1MHzに上がります。この効果を簡単に試算してみました。下記はカットオフ周波数100KHzと1MHzの一次LPFのボード線図です。ネット上に公開されている大川電子様のツールを利用させていただきました。

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上がfc=100KHz, 下がfc=1MHz時のボード線図です。図中の6KHzのラインはツイーター用のHPFのカットオフ周波数です。CD帯域上限の20KHzの位相遅れ特性を比較してみます。fc=100KHz時が約-10°、fc=1MHz時はほぼゼロです。この違いが聴き取れるかわかりませんが、興味がそそられます。

組み込み準備

現行のHi-ch用アンプは出力トランスによりDCオフセットが出力される心配はありません。完成したトランジスタアンプはDCアンプの為、小さく調整したとは言えDCオフセット出力が存在します。ウーハーユニットとは異なりツイーターはDCオフセット信号が想定されていません。あまり入れたくはありませんが、ユニットを保護する為にDCカット用にフィルムコンデンサをスピーカーと直列に接続します。このフィルムコンデンサとスピーカーユニットで一次のHPFが構成されます。このユニットが受け持つ帯域は6KHz以上の為、HPFのカットオフ周波数は余裕を見て600Hz程度にしたいとおもいます。この場合のフィルムコンデンサ容量Cは以下のとおり算出できます。

C = 1 /(2πx 600 x 8) = 33uF

式中の8はユニットのインピーダンスです。ネットでいろいろ調べ、価格も含めてJamtzen AudioのCROSS=CAP 27uF品を選定しました。コイズミ無線で1個1,423円(税込)でした。届いた部品を見てその大きさに驚きました。(本記事のアイキャッチ写真参照)コンデンサは、アンプに組み込む事も考えましたがアンプの使い回しを考えると使い勝手が良くありません。よってツイーター専用にスピーカーケーブルを作ることにしました。ケーブルのHot側にコンデンサを接続します。使い勝手を考慮して、ターミナルから約10cmの位置に接続する事にしました。まずはHot側の端子をカットしてコンデンサに接続します。

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熱収縮チューブはアマゾンで各種太さがセットされた物を購入していたのでマッチした径のものを被せています。次に反対側も同様に接続しました。

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最後にインシュロックで固定したら完成です。

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同様にもう1本も加工しました。これでマルチアンプシステムへの組み込みの準備は完了です。次回はアンプをマルチアンプシステムに組み込んで音を聴いてみます。

 

つづく(まとめ編1)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編26)

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製作編26

各アンプの負荷状態のカットオフ周波数を確認して、フルレンジスピーカーを使って音を聴いてみます。

カットオフ周波数確認

前回行った周波数測定環境を使って、ゲインが-3dBダウンとなる周波数を観測しました。1KHzの出力波形は2Vppとしているので、出力レベルは1.41Vpp(2/SQR2)となる周波数を見つけます。この帯域になると、バランス変換ユニットの周波数特性も怪しくなるため、周波数を変更したら同時にアンプの入力レベルも合わせ直す必要があります。4つの観測結果の中から、一番カットオフ周波数が高かった結果と低かった結果を掲載します。

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上はアンプ2のColdチャンネルでカットオフ周波数は4.7MHzです。下はアンプ2のHotチャンネルで1.2MHzでした。4つのアンプユニットのカットオフ周波数をまとめます。

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アンプ1のカットオフ周波数は安定しています。この結果は周波数特性の測定結果を整合していないように見えます。あらためて検証が必要です。

音聴き準備

まずはフルレンジスピーカーで音を聴いてみます。使用するスピーカーはFostexの16cmフルレンジスピーカーFF165WKを専用のバスレフエンクロージャーに納めたものです。久々に引っ張りだしました。

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NS-1000Mの上に横置きしています。低音再生は不利な設置状態です。再生環境はCDの同軸デジタル信号をいつも使っている自作のDACユニットでバランス出力して、それをバランスボリュームユニットを介してアンプに信号入力します。さっそく音出しをしたところ、変!左右の位相が逆です。またやらかしてしまったかと思い、アンプを確認してみましたが、おかしなところはありません。まさかと思いつつ、新規購入したスピーカーケーブルを確認したところ、こいつが原因でした。

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アマゾンで購入したものですが、ケーブルの両端で+ーが逆になっていました。不良が軽微なので修理することにします。幸い大径の黒の熱収縮チューブ在庫があったので、もう一本のケーブルに合わせて間違って赤の熱収縮チューブが被せてあった部分を黒のチューブに変更しました。

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状態としてはまぎらわしいですが、これで接続間違いはなくす事ができます。

音聴き

気を取り直して音聴きを始めます。

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初めに数枚のCDを聴いてからアンプ3台の比較試聴をしました。比較に使ったアンプは、現状ウーハーチャンネルに使っているトランジスタアンプと、スコーカーチャンネルに使っている真空管アンプです。

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ウーハーチャンネルアンプは、別筐体の大容量トランスユニットが特徴で、回路構成はほぼ共通ですが、終段がパラレルプッシュプルとなっています。スコーカーチャンネルアンプは、EL34を使ったプッシュプル構成で無帰還方式としています。使ったディスクは、ボーカルものとして井筒香奈恵の時代から時代を。

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またいつも聴いているボブジェームのBJ2の1曲目「Take Me to the Mardi Gras」です。

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それでは、それぞれのアンプの音の印象を箇条書きしてみます。今回製作のアンプの音の印象には、比較試聴前に数枚聴いたCDの音の印象も加えています。

■今回製作のアンプ

・録音の善し悪しがわかりやすい

・アタック音が明快

・音に奥行きが感じられ、定位がいい

■ウーハーチャンネル用アンプ

・上記アンプの音と比較してマイルドな印象

・このスピーカーを鳴らす限りでは駆動力の差は感じられない

・音の余韻がきれい

・ピアノの音に暖かみが感じられる

■スコーカーチャンネル用アンプ

・とにかく音が前にでる

・女性ボーカルがよりハスキーに聴こえる

・アタック音が自然

アンプの音の聴き比べは本当に楽しいです。音に違いは感じられても、その違いを言葉で表現する事は私にとってとても難しいです。次回はマルチアンプシステムに組み込んで音を聴いてみます。

 

つづく(製作編27)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編25)

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製作編25

アンプが完成したので、負荷接続状態で周波数特性の測定を行います。

周波数特性の測定環境

簡単に測定システムを紹介します。発信器の出力をバランス変換ユニットに入力し、その出力を今回製作したアンプに入力します。ゲインの測定は、入力と出力をそれぞれオシロスコープで観測して波高値の比較により算出します。測定はHotとCold系アンプ単独で行いました。入力レベルは200mVppです。

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上の写真が、発信器とバランス変換ユニットです。場所がないのでテーブルの下に設置しています。下の写真はオシロスコープで入出力波形を観測しているところです。負荷は以前に作成したダミー抵抗(8Ω)を接続しました。バランス入力、バランス出力しているので、アンプ単体から見た負荷抵抗は4Ω相当となります。抵抗の許容損失が大きくないので、今回の測定の設定値が限界だとおもいます。

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測定を始めたところ、従来の測定では経験のないノイズが発生し、原因の特定をしました。

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黄色の波形が入力信号ですが、ノイズが乗っています。発信器とバランス変換ユニットを確認しましたが、問題ありませんでした。つい最近作業テーブル用のLEDスタンドを買い換えた事を思いだし、スイッチを切ってみました。

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上がスタンドの写真ですが、スイッチオフでノイズは見事にきえました。前に使っていたLEDスタンドは、充電式で点灯時にはバッテリー駆動となっていて、バッテリーの寿命の為点灯時間が短くなってしまったので、新規購入しました。このスタンドは5段階の調光機能があり、ためしにMaxにしてみたところノイズが消えました。

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測定時はスイッチオフか明るさMaxで行う事にします。安物にはそれなりにリスクがあると改めて認識しました。

初段FETソース電位観測

出鼻をくじかれてしまいましたが、気を取り直して測定を開始します。前の記事で信号入力時の初段FETのソース電位の確認をする事にしていましたので波形観測をしてみました。入力信号は1KHz 200mVppです。

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黄色が入力波形で、青がソース電位です。ソース電位の平均値は170mVですが、入力信号と同様に変化してVgsはほぼ170mVに保たれています。従って今回の設計ではIdss=2mA以上のFETであれば問題なく使用できると言えます。

周波数特性の測定

本題の周波数特性の測定を開始しますが、最初にアンプ2のHot(2-L)から測定しました。下記が入出力波形です。

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写真上から1KHz, 100KHz, 1MHz入力時の波形です。1MHz時の出力波形はやや位相がずれていますが、特に問題はありません。波高値の比較からゲインはほぼ20dBです。同様にCold(2-R)の測定も行いました。結果は以下のとおりです。

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cold(2-R)側のアンプで600KHz以上でややゲインが下がっています。同様にアンプ1の周波数特性の測定も行いました。結果は以下のとおりです。

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このアンプはHot(1-L)側の高域でゲインが下がり、Cold(2-R)側の高域でゲインが上がっています。BTL出力で考えると、高域でややゲインが下がる状態と言えます。CDの再生を考えると、CDの出力帯域以上フラットなゲインを持つ意味は位相特性の確保です。結果は十分広帯域なので問題にはならないとおもいます。次回は各アンプのカットオフ周波数を測定して、フルレンジスピーカーと組み合わせて音を聴いてみたいとおもいます。

 

つづく(製作編26)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編24)

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製作編24

残りのアンプユニットの終段電源オン後の電流経過をモニタします。

3ユニット終段電流経過モニタ

前回の記事でアンプ1の左側のアンプユニット(1-L)の終段電流の経過モニタをしました。同条件で測定を行うためには、アンプユニット自体が十分冷えた状態から観測を行う必要があります。スタート時のアンプユニットの温度を考慮して下記の順番で進める事にしました。

1)2-L

2)1-R

3)2-R

前回の測定から4日間たっていますので、全アンプユニットは冷えた状態です。測定は前回と同様に電圧増幅段の電源オンして、1分間待ってから終段の電源をオンして測定をスタートさせます。気温は前回の測定時よりも低く、18℃設定でエアコンを運転して室温は若干18℃上回る状態としています。上記の順番に従い、2-Lの測定を行いました。結果は以下のとおりです。

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前回測定の1-Lの結果との比較となります。縦軸と横軸は前回の測定に合わせています。室温が前回比で2℃以上低かった為か、まだ安定には達していない状況です。測定時は時間軸を対数視点で見ていなかった為に気づきませんでした。バイアス調整時には、電源オンして長時間ほったらかした後に0.47A~0.49Aに調整した事を思い出しました。少なくとも温度補償回路は働いている事が確認できましたので、追加試験はしない事にします。

アンプ2入力配線

今日中に3ユニットの測定を行うつもりなので、アンプ2のクールダウンも兼ねて入力配線をおこないました。作業性が悪いのでXLRパネルコネクタを取り外してケーブルを取り付けます。

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入力電線には、2芯のシールドケーブルベルデンの1503Aを2本使い、芯線をHot/Coldの1本づつ使って配線しました。2本のシールドケーブルの端末をインシュロックで固定し、その状態でXLRコネクタにハンダ付けしました。

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それを改めてリアパネルに取り付けました。

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続いて反対側の端末をアンプユニット入力端子台へ接続します。最初はHot側の入力配線を行います。ハンドルのねじ部分と入力端子台間のクリアランスが少なかったですが、接続作業は問題なくできました。

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続いてColdアンプユニットの入力配線も同様に行いました。

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写真は追加で2カ所2本のケーブルをインシュロックで固定しています。いい感じで配線できたとおもいます。

アンプユニット1-R終段電流経過観測

次はアンプユニット1-Rの終段電流の経過観測をしました。手順は今までと同様です。

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結果はアンプユニット1-Lと比較掲載しています。グラフはアンプ2の結果も考慮して縦軸を変更しました。1-Rの結果の方がばらつきは大きいですがほぼ同等の結果となっています。

アンプユニット1入力配線

アンプユニット2と同様に入力配線を行います。

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写真のとおり、アンプ2と同様にいい感じで入力配線ができました。

アンプユニット2-Rの終段電流経過観測

さすがに長時間の測定で飽きてきています。データレコーダがあるわけではないので、時計とマルチテスターとにらめっこです。結果は以下のとおりです。

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今までの結果とは異なり、1分まで電流の立ち上がりが遅くなっています。それ以降は2-Lとほぼ同じ挙動を示しています。原因はわかりませんが、1分以降の挙動がほかのユニットと同じなので気にしない事にします。時間はかかりましたが、これで全アンプユニットの温度補償回路が正常動作している事が確認できました。次回は負荷時の周波数特性の測定を行います。

 

つづく(製作編25)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編23)

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製作編23

アンプ2の電源配線を完了し、通電および最終調整を行います。その後、終段のバイアス電流の時間経過特性の測定を行います。

アンプ2配線

アンプ1と同様に各アンプユニットへの電源配線を行います。電圧増幅段とドライバ段へは、三つ編み電線を使い、終段は終段ユニットから直出しの電源線を電源基板へ配線しました。続けて各アンプユニットの終段直出しの出力線をスピーカーターミナルに接続しました。詳細は製作編22を参照ください。

終段バイアス電流調整

これもアンプ1と同様に最初に1アンプユニット電源配線を行ったところで通電確認を行い、ヒートシンクが熱平衡状態になるのを待って終段のバイアス電流調整を行いました。残りのアンプユニットも同様の手順で終段のバイアス電流調整を行いました。

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最終調整

終段のバイアス電流調整後、ヒートシンクは熱平衡状態となっているのでアンプの最終調整を行います。VR1で出力オフセット調整を、VR2で2段目の差動電流バランス調整を数回繰り返して最終調整を行いました。ここまで駆け足で説明しましたが、詳細は製作編22を参照ください。アンプ2最終調整後の各部電圧は以下のとおりです。

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下の表は、終段の電源オフ時のものです。アンプ2の1つのアンプユニットの初段ソース電位が他と異なりますが、このJFETのみ他のものに比べてIdss値が大きい事に起因します。参考にモジュール実装確認時のIdss測定結果を再掲載します。

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下記は2SK2145のVgs-Id特性ですが、初段のバイアス電流を1mAとしている為、Idssが大きい場合、無信号時のVgsの電位が下がる為です。

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ソース電位が約-180mVのアンプユニットの場合、それ以上の信号入力ができないように思えますが、大きな信号入力時にソースの電位がプラスバイアスとならないように追従するため、問題ありません。念のため動作確認時に観測してみたいとおもいます。

終段のバイアス電流温度補償動作確認

ヒートシンクには、終段のコンプリメンタリペアトランジスタの間に温度補償用のトランジスタユニットを取り付けています。

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この構造の場合、熱伝達の遅延により終段のバイアス電流が熱暴走する心配があります。今回はHi-ch用という事で、終段のトランジスタの選定を許容損失よりもft重視で選定した為に余計気になります。測定は終段の2本直列に接続されたエミッタ抵抗の両端電圧をマルチテスターでモニタしました。電源オン直後は、トランジスタの温度上昇により、急激に電流値が変化するため測定の時間間隔は最初は10秒単位、その後15秒単位、1分単位、5分単位と延ばしていきました。終段の温度の影響をみるため、電圧増幅段の電源をオンして1分待った後に終段の電源をオンする事にしました。最初はアンプNo.1の左側(1-L)のアンプユニットの測定を行います。本記事のアイキャッチ写真が測定時のものです。安定が確認できるまで1時間以上も観測しました。結果は以下のとおりです。

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時間軸は6秒を基準に対数化しています。最初に急激に電流が増えていますが、トランジスタ自体の温度上昇によりVbeの値が小さくなる事に起因しています。電流の急激な上昇は約1分で収まり、その後緩やかに上昇を続けます。約4分後に減少に転じます。これはヒートシンクの温度上昇により、温度補償用のトランジスタモジュールの温度が上がり始めたことによります。その後じわじわと電流が下がり約1時間後に電流値が安定しました。想定した動作が確認できました。あと3ユニット同じ測定を行うと考えると気が重くなります。次回は残り3ユニットのバイアス電流の時間経過特性の測定を行います。

 

つづく(製作編24)