A級バランスHPアンプ製作(製作編9)

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製作編9

前回の記事で発振対策が完了したので、amp1を調整して動作確認を行います。

調整の続き

改めて終段のアイドリング電流を50mAまで上げて、出力オフセットおよび2段差動アンプの電流の調整を行います。この状態で終段のアイドリング電流が安定する事を確認したら、終段のアイドリング電流を設計値の70mAまで上げます。改めて出力オフセットと2段差動アンプの電流の調整を行い終段のアイドリング電流が安定する事を確認しました。

温度補償回路の動作

ドライバ段用のバイアス回路の温度補償用トランジスタは、最終的に終段のトランジスタと熱結合させるために接着しますが、接着前に温度補償動作の確認を行います。方法は、アンプの電源を一旦切り、アンプの各素子の温度を常温まで戻します。温度が下がるのを待つ間に、終段のエミッタ抵抗(1Ω)の両端電圧を測定できるようにテスタを接続します。温度が下がったら、電源オンして、ストップウォッチ片手に電流値の変化を観測します。具体的には15秒ごとにエミッタ抵抗の両端電圧をメモしていきます。抵抗値が1Ωなので、読みとった両端電圧がそのまま電流値として読み替えることができます。測定結果は以下のとおりです。

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結果から、約1分で終段のアイドリング電流の上昇が止まり安定する事が確認できました。温度補償の設計は、Q07の負の温度係数を持つVbeが約4倍となるようにバイアスが変動します。一方ドライバと終段で4個分Vbeが存在しますので、丁度相殺されて終段のアイドリング電流が下がらずに安定したと考えられます。実は最初の測定は、単純に終段のトランジスタのエミッタ電圧のみ測定してグラフ化しましたが、出力オフセットの変動の影響が入るため歪んだ結果となっていました。改めてエミッタ抵抗の電圧降下を測定し直しましたがほぼ理想の結果となり、測定し直した甲斐がありました。安定後のアイドリング電流は設計値よりもやや高めになっていますが、正規の電源と組み合わせにて改めて調整したいとおもいます。

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温度補償トランジスタ熱結合

学生時代のアンプ製作時は、差動アンプ等のペア特性が要求されるトランジスタは全て熱結合させていました。今では熱的アンバランスの発生の可能性がない部分は、熱結合させていません。熱結合させるためには、トランジスタを対向して配置する必要がありますが、その結果配線が入れ子になってしまうからです。温度補償用のトランジスタは、終段の温度上昇により熱暴走を防止する必要があるので、熱結合をさせます。A級BTL DCパワーアンプの製作の際には、ドライバと終段用の放熱器に温度補償用のトランジスタをネジ止めで密着させて熱結合させましたが、熱の伝搬に時間がかかり、数分間は終段のアイドリング電流が上昇を続けるのをモニタしながらひやひやしました。

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今回は終段のPNPトランジスタの背面に温度補償用のトランジスタを接着します。接着剤には、2液式のエポキシ接着剤を使いますが、学生時代には、2液式のエポキシ接着材は1択で選択肢はありませんでしたが、今ではいろんな種類のものが販売されていました。その中からローコスト(448円)で接着時間が比較的短いものを選択しました。高いものは1,000円近くするものもありましたが、何が違うのでしょうか?

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2液を同量、アルミ板の切れ端に出して付属のヘラで良く混ぜ合わせます。それをトランジスタの接着面に塗布して接着します。固まるまではクリップで両トランジスタを挟んで密着させておきます。

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接着材の説明書には、25℃環境で接着まで40分と記載があったので念のため1時間放置しました。

動作確認

温度補償トランジスタの接着が完了し(本記事アイキャッチ写真参照)、改めて調整結果を確認します。測定前に安定を待ってから各部の電圧の測定をします。測定結果は以下のとおりです。

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最後に信号を入力して動作確認を行います。せっかくなので、周波数特性の測定を行いました。出力電圧を0.1Vppに調整し、そのときの入力電圧を測定しゲインを算出します。測定結果は以下のとおりです。

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ゲインの設計値は19.3dBです。測定範囲はフラットで設計どおりの結果を確認しました。ついでに矩形波応答も確認しましたが素直な波形です。

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次回はこの基板上にcoldチャンネルの実装を行います。

 

つづく(製作編10)