終段スイッチング電源検討(製作編57)

製作編57

ヒートシンク温度確認と温度アンバランス対策を行います。

ヒートシンク温度アンバランス

アンプの発振を止める事ができたので、久しぶりに長時間音楽を聴きました。組み合わせたスピーカーはFostexの16cmフルレンジスピーカーFF-165WKです。一頻り聴いた後、アンプ両サイドのヒートシンクに触れたところ、右側手前のみ温度が低い事に気づきました。この場所は、R-ch/Hot側のアンプが実装されています。いきなり原因調査をせず、まずは今回の製作で購入した熱電対温度計を使ってみたくて、温度確認をしてみました。

ヒートシンク温度測定

購入した熱電対温度計は2chなので、左右のヒートシンクのそれぞれ手前側に熱電対を貼り付けて温度確認を行います。

測定は、朝イチのアンプが冷えた状態で行いました。測定間隔は1分としています。データログ機能がないので、時計とにらめっこをしながら測定値をメモしていきました。結果は以下のとおりです。

青がL-ch側、赤がR-ch側の結果です。到達温度差は約20℃もありました。早速原因を調査します。

温度差原因調査

現状の回路図を参考に掲載します。

最初に終段のトランジスタのベース電圧を確認してみました。結果はNPN側が-3.5mV、PNP側が-7.7mVでした。R-ch/Hot側の終段にバイアス電流が流れていない事を確認しました。終段のバイアス電流値の不具合は、以前に他のチャンネルで経験済みです。その時は、温度補償用トランジスタ基板への配線が半田付け部分に電線のヒゲによりショートしていた事を思いだし、まずは確認してみる事にしました。温度補償用トランジスタ取り付け基板のベースコレクタ間のショートを疑ってみます。今回初の大がかりな分解となりますが、手間はかかるものの、分解を考慮した設計をしていたため、比較的短時間で温度補償用トランジスタ基板を取り外す事ができました。ルーペで確認したものの、ショートを疑うような事象を見つける事ができませんでした。逆の手順で組立直して、次は終段バイアス電流調整用ボリュームを回してみる事にしました。終段トランジスタのベース電圧を確認しながら、ボリュームに触ったところ、所定の電圧約800mVになる事がある事がわかりました。ボリュームの部品不良または、ハンダ不良が疑われます。初めにハンダ不良の確認をします。特に怪しい箇所はありませんでしたが、ボリューム周りのハンダを全てやり直してみました。再組立をして確認したところ、終段電流は所定の値に戻りました。今回の製作の中で温度補償用トランジスタ周りのトラブルはこれで3回目となります。やれやれ…。

ヒートシンク温度再確認

改めて、ヒートシンクの温度の測定をしてみました。初回測定時よりも部屋の温度があがっている為、スタート時の温度が高く安定時間が短くなっています。

安定時の温度差は1℃以下となっていました。これで安心して音を聴く事ができます。この状態に気づかずに、音楽を聴いていた際はそれなりに鳴っていましたが、オーバーオールの負帰還により、それなりに動作していたと考えられます。負帰還の効果、あなどれません。次回は、気になっていた2段目の位相補償用コンデンサを変更します。

後日譚その後

前回の記事で、アンプ出力部の位相補償回路がゾベルフィルターと呼ばれている事を紹介しましたが、関連情報をネット検索したところ、前回対策した発振現象は寄生発振とすると、ネット情報と整合がとれる事がわかりました。寄生発振は終段トランジスタのスイッチング時に発生しやすいとの事で、今回の記事で確認したとおり、発振が発生したR-ch/Hotアンプのみ終段のバイアス電流が流れていなかった事から頻繁にトランジスタのスイッチングが発生していました。このトラブルが発生してなければ、ゾベルフルター追加はしなかったと思います。アンプの安定性向上の面でば不幸中の幸いだったのかも知れません。

 

つづく(製作編58)