無帰還広帯域真空管アンプ(製作編18)

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製作編18

設計の見直しを行います。

気になっていた点

ここまで製作を行ってきましたが、設計で気になっていた点がありました。初段のSPRR回路の等価抵抗動作をする真空管のヒーターカソード間の耐圧仕様です。データシート上は90Vとなっていて(本記事アイキャッチ写真参照)、初段のB電源をトランジスタを使ったリップルフィルタ構成とした事で定常動作時にこの要求を逸脱する恐れはなくなりました。残りは過渡時と異常時の対応です。具体的には電源オン直後や初段差動入力部の真空管が動作不良時に、Ipが所定値以下となると上記気にしているカソードの電圧が90Vを越える恐れがあります。この時にその真空管が壊れるだけではなく、周辺の回路へ影響を及ぼします。という事で、このタイミングとなってしまいましたが対策を検討してみます。

対策案1

一番安易で確実な対策は、ヒーターカソード間の耐圧の高い真空管に変更する事です。以前間違って買ってしまい手元に12AU7があったので仕様を確認してみました。下記が仕様書の抜粋です。

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12AY7の仕様と異なり、電圧印加条件により100Vと200Vの2つの数値が記載されていました。今回の用途では、ヒーター電圧の方が低いのでDC + Peakで200Vがスペックとなります。初段の電源電圧165Vを越えているので十分な値です。次はgmを確認します。プレート電圧により幅をもった値となっていて17~20です。12AY7が40なので、ゲインはざっくりと6dB下がってしまいます。下表は構想編で作成した現行機と今回設計したアンプの各段のゲイン一覧です。

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この表から、現行の設計ではゲインに余裕がないため、12AU7の採用は断念せざる得ません。

対策案2

当該カソード電圧が90Vを越えたら、その真空管のヒーターを回路から切り離す事を検討してみます。具体的には初段の差動アンプを構成している真空管のプレート電圧が90Vを越えたらSRPP等価抵抗動作をする真空管のヒーター回路をトランス二次巻き線から切り離します。監視が必要なポイントは合計4カ所です。単電源用オペアンプをコンパレータ動作をさせて制御信号をつくります。その出力を4入力ANDで受けてリレー操作コイル駆動用のドライバへ入力します。リレーはヒーターの両端子を切り離す必要があるので、2回路品を使用します。まずは使えそうなリレーがないか調べてみました。秋月電子で手頃なリレーを見つけました。

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操作コイル電圧は5Vで操作コイル電流は22.9mAです。消費電力は115mWです。このリレーを駆動するためのドライバ在庫がないか調べてみました。すこし大型ですが、2SC3422を見つけました。下記は概要です。

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コンパレータ用に単電源のオペアンプの在庫を確認してみます。手頃なものが見つかりました。JRCのNJM2904Dです。下記が電源電圧5V時のスペックです。

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その入力は初段差動アンプのプレート電圧を高抵抗値で分圧しておよそ2.5Vでコンパレートできるようにします。コンバレータの基準電圧は5V電源を半固定抵抗で調整して生成します。念のため4入力ANDの秋月電子在庫状況と仕様確認も行います。TC74HC21APとしてラインナップされていました。下記が仕様抜粋です。

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上記を元にざっくりと回路図を描いてみました。

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左上のブロックがコンパレータ回路で、その右がリレー制御回路です。下はこの回路の電源です。オペアンプ入力部の電解コンデンサはオーディオ信号除去用です。耐圧を厳密に守る事を考えるとフィルタを入れるべきではありませんが、どうしようか?他に何点か気になる部分はありますが、さらに検討を進めてみます。

 

つづく(製作編19)