Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編9)

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製作編9

アンプ回路ドライバ段を実装します。

定数変更

前回の記事で抵抗の在庫の関係で、終段のバイアス設定用の定電圧回路の定数を変更しました。修正済みの回路図は以下のとおりです。

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ドライバ段実装の前に定数変更を行った終段の温度補償回路を兼ねる定電圧回路を整理しておきます。回路図は以下のとおりです。

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今回の回路では、定電圧回路を流れる電流は5mAをセンターとして入力信号に応じて増減します。電流が変化しても両端電圧は常に一定となる必要があります。その仕組みを簡単にまとめます。トランジスタのVbeは約0.6Vで一定です。従ってR1の電流I1は0.6/R1となります。R2を流れるI2はI1+Ibとなりますが、Ibは無視できるため、I2=I1となります。従って定電圧回路の電圧は0.6 + R2 x I2 = 0.6 + 0.6 x R2/R1 = 0.6(1 + R2/R1)と算出できます。簡単まとめると、定電圧回路を流れる電流がいくらであっても回路の両端電圧が0.6x(1+R2/R1)になるようにトランジスタが電流を流してくれる回路と言えます。設計上の注意点は、このトランジスタに印加される電圧は小さい為、Vce特性を確認しておく必要があります。

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グラフはUTC_2SC1815Lの仕様書の抜粋です。このグラフからVceは2V以上あれば動作は問題なさそうです。もう1点は、終段の熱暴走の温度補償機能です。トランジスタは一般的に温度があがるとVbeの電圧0.6Vが小さくなります。ドライバ段のベース間に一定の電圧を印加した状態で、温度上昇すると終段とドライバ段のVce値が小さくなりベース電流が増加していきます。それに伴いコレクタ電流も増加し、トランジスタの温度がさらに上昇します。これが熱暴走です。バイアス用の定電圧回路電圧0.6(1+R2/R1)も温度により変化します。係数0.6はトランジスタのVbeなので、温度上昇に伴いこの係数が小さくなります。全トランジスタのVceが温度に対して同様に変化すると仮定すると、1+R2/R1を4以上に選定すれば、この回路がドライバ段と終段のVbeの変化を吸収して熱暴走を防ぐ事ができます。今回の定数変更で安全率が減ってしまいましたが、4以上をキープしているので温度補償動作は期待できます。それでは本題のドライバ段の実装に入ります。

ドライバ段実装

大物部品は、ドライバ段電源供給用の3極の端子台とドライバ用トランジスタおよび出力用の3極の端子台です。初めにコンプリメンタリペア表からドライバに使用するトランジスタ4ペアを選択しました。

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特に理由はありませんが、hfeの小さなものから使用します。続いて大物部品を仮置きしてみました。

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基板の空きスペースに余裕があるので楽に配置できました。部品を実装していきます。上記の部品以外に、電源用のパスコンとドライバのエミッタ抵抗を取り付けました。

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残りドライバへの電源配線で実装完了です。

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4枚の基板に対して平行して同じ作業を行ってきましたが、少々作業に飽き気味となってきています。

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こうやって基板を並べてみると壮観で実装の苦労が報われた気がします。次回は、終段バイアス回路のトランジスタモジュール(基板)を作成します。

 

つづく(製作編10)