DCパワーアンプ電源改良(構想編)

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構想編

先日、絶縁トランスによるDCパワーアンプの唸り対策を行いましたが、完全に唸りをなくす事ができなかった為、追加の対策を検討します。合わせて電源の改良も行います。

対象のDCパワーアンプ

NS-1000Mマルチアンプシステムのウーハーチャンネルを担当しているアンプで、A級BTL方式モノラルDCパワーアンプです。J-FET差動入力の差動2段で、終段はパラレルコンプリメンタリ方式をとっています。

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電圧増幅段の電源は、ツェナーダイオードに電流バッファーを組み合わせた物でアクティブな動作をさせていません。その後の検討で、この方式の電源出力インピーダンスが1Ω程度ある事がわかった為に、改良したいと考えていました。今回の検討の中で設計変更をしたいとおもいます。終段の電源は、普通の全波整流回路ですが、8W出力のアンプとしては、トランスの電流容量 5Aで、平滑用電解コンデンサはトータル100,000uFとし余裕の設計としています。

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トランスの唸り対策

今まで対策は2回行ってきました。最初はダイオードブリッジを使った電源タップ式のアダプタを作成しました。

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回路図は以下のとおりです。

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結果は、音への影響がある割に、効果が少ない為、採用には至りませんでした。下記のように回路を変更すると効果は上がるとの事ですが、ネット上の情報ではそれ以上に音質への影響も増えるとの事です。

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次の対策は、絶縁トランスを使った供給電源のDC成分のカットです。大容量の絶縁トランスはそれなりの値段なので、ヤフオクで探して競り落としました。1.5KW品で送料・消費税こみで8,000円でお釣りが戻るレベルで入手できました。それを、キャスター付きの板に取り付けてテーブルタップの中間に接続して完成です。

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さすがに電流容量15Aの絶縁トランスだけの事はあり、音への影響は我慢できるレベルです。唸りは、アンプのトランスで発生していたものの大半が絶縁トランスへ移るものの、100%ではなく、電源事情が悪い時には、リッスニングポイントでアンプのトランスの唸りがまだ聴こえる状況です。さらにもう1段改善させる為にいろいろ考えましたが、良い案がなく、唸りの原因となるアンプのトランスを外出ししてみる事にしました。せっかくなので、その際に電源回路のグレードアップも合わせて行いたいとおもいます。

対策の概要

アンプ内には、電圧増幅段用と終段用の2個のトランスがあります。トランスの唸りは、容量の大きなトランスの方が大きく発生しますが、今回は両方を外出しして、トランスの2次側ラインを延ばしてアンプに供給する事にします。この外出ししたトランスユニットは、十分な防音をする事で、唸りの対策をします。トランスの2次側を延長する事は、1次側の延長よりも特性への影響は大きくなると考えられますが、DCラインの延長に比べれば影響は小さいと考えられるので、この仕様で検討を進めます。

コネクタの選定

汎用性のあるコネクタという事で、XLRコネクタを検討してみます。XLRコネクタは、スピーカーケーブルを含む電力電送ケーブルにも使用されるので、特性を調べてみました。ネット検索をかけてみると、サウンドハウスに多彩な在庫がある事がわかりました。

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メーカーはいくつかりましたが、3極のものは15Aが定格値です。終段電力供給用には十分な定格値です。下記はITT製のコネクタの仕様ですが、4極以上は下記のとおり定格値が小さくなります。

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用途によって使い分けが必要です。次回は、電源回路の改良も含めて具体的な回路検討を行います。

 

つづく(設計編1)

真空管アンプのハム対策(番外編35)

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番外編35

真空管HPアンプのハム対策を続けます。

トランスの取り付け向きの変更

ネット上の情報に従って、出力トランスの取り付け向きを90°回転させて効果の確認を行ってみます。取り付けネジを外して向きを変更しようとしましたが、配線長が足りずにそのままの状態では試す事ができませんでした。仕方がないので、つっぱる配線を継ぎ足して向きを変えられる状態としました。写真はアンプのリア側から撮ったもので、出力トランスを90°回転させた状態です。

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ネット上の情報のとおり、ハムのレベルは明らかに下がりました。固定方法は、当初L字アングルを使って、出力トランスのオリジナルの取り付けフランジを使う事を考えましたが、L字アングル自体の取り付けに場所が必要で追加工も必要となるため、出力トランスの取り付けフランジを90°曲げて、当初の取り付け穴に固定する事としました。

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取り付け強度は明らかに不足しますが、自室使用に限定される事と、別途トランスカバーを考える事として、この方法で進める事としました。写真は配線をフォーミングして実際に取り付けた状態です。

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反対のチャンネルも念のため事前に効果の確認を行いました。

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同様の効果が確認できた為、正式に取り付けを行いました。写真は両方のチャンネルの出力トランスの固定を変更した状態です。

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さすがに格好が悪い事と、ネジのゆるみで出力トランスがぐるぐる回ってしまう事を防ぐ為にトランスカバーを検討してみます。以前にアマゾンで真空管を検索した際に目についたアルミ製のトランスカバーを探しました。

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1個2,480円です。サイズ的にも十分で、シャーシ上にも搭載できそうです。注文して数日で到着しました。本体は胴の部分と蓋の2ピース構成です。蓋と本体取り付け用にM4のネジが8本付属します。寸法図は見つからなかったので、寸法測定して加工図を作成しました。

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トランスを取り付けた状態で、ポンチが打てるように図面を工夫しています。具体的には、加工図を写真のとおり切って(一点鎖線がカット用線)出力トランス部に被せます。

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この状態で、取り付け用のネジ穴のセンター各4点にポンチで印を付けます。加工図を剥がして、シャーシ内の部品の配置の都合で、各カバー固定用に3点に4.2mmのドリルで穴をあけました。写真はカバーの胴の部分を取り付けた状態です。

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だいぶ見た目が変わりました。最後にトランスカバーに蓋を取り付けるとこんな感じになりました。

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見た目だけでは、出力トランスが電源トランス以上に立派に見えます。尚、本記事のアイキャッチ写真は、ボトムカバーを取り付けた状態の写真です。この状態で、万が一出力トランスの取り付けネジが緩んだとしても、トランスカバー内でトランスの向きが動くだけなので、故障時のリスク低減ができると思います。

ハムの確認

事前の確認時と同様にカナル型ヘッドフォンをヘッドフォン端子に接続して耳に装着します。この状態で電源オンすると、従来は電源オンの瞬間からプリウス低速走行時の疑似モーター音ににたハム音が大きく聞こえましたが、対策後はわずかに聴こえるのみです。カソードが暖まり、アンプが動作を始めると、負帰還によってわずかに聞こえたハムも全く聞こえなくなりました。当面、この状態で運用したいとおもいます。今回の教訓としては、実使用状態を考慮した出力トランスの配置の事前確認は必須と感じました。5回に渡り、番外編としてハム対策を行いましたが、そこそこの効果が得られたので今回で終わりとします。おつきあいありがとうございました。

 

おわり(番外編35)

真空管アンプのハム対策(番外編34)

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番外編34

EL34ppアンプのハム対策を続けます。

EL34pp負帰還回路残骸

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写真はEL34ppアンプの初段配線部です。写真ではわかりにくいですが、負帰還回路がそのまま残されていて、帰還配線が外されてショート防止の為にセロテープで絶縁された状態となっています。必要があればすぐに元に戻せるようにこのような対応となっていました。帰還なしの音が気に入った事と、マルチアンプシステムでは、それなりのアンプゲインが必要となる為、負帰還構成に戻す見込みがない事から、これを機会に不要な配線と部品を全て削除する事にしました。下記写真は、フィードバック用の配線のみ削除したもので、帰還用抵抗とコンデンサがまだ残っています。

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これら不要な部品を全て取り外し、入力部の配線をシンプルにします。その結果入力部配線用に取り付けた平ラグ端子板を中継せずに入力配線を行う事ができました。

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この状態で一旦ノイズを聴いてみる事にしました。ヘッドフォンを接続して電源オンします。変更前にホワイトノイズの奥にわずかに聞こえていたハムが全く聞こえなくなりました。改めて入力部の配線の影響を認識しました。今回の改造の結果、シャーシ内は以下のとおりシンプルになりました。

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音聴き

ハム対策行った状態で改めてマルチアンプシステムで音を聴いてみました。その結果期待した程の効果が得られなかったスコーカーチャンネルですが、スコーカーに耳を近づけるとハムは聴こえるものの、リッスニングポイントは聞き取れないレベルになっていました。ツイーターチャンネルは、元々ハムは聞こえていませんでしたが、今回の対応でまったくハムの心配がないレベルまで改善させる事ができて、より安心して音楽を聴くことができるようになりました。音はプラシーボ効果とは思いますが、より生き生き鳴っているように聴こえます。その結果現状の課題は、先日対策したトランスのうなりです。ここの所、近隣のエアコンの稼働率が上がったためか、トランスの唸りが酷いタイミングが増えています。唸りの大半は絶縁トランス側に移ったものの、100%ではなく、唸りの状況が酷い時には、DCパワーアンプのトランスの唸りがリッスニングポイントでまだ聞こえてしまいます。抜本的な対策を行う必要がありそうです。良いアイデアがあるわけではないので、気長に検討したいとおもいます。

再び真空管HPアンプ

ほぼ同じ回路構成のEL34ppパワーアンプが無帰還状態にもかかわらず、HPで確認時にまったくハムが聴こえずにホワイトノイズだけであった事から真空管HPアンプの追加改善をしたくなり、改めて検討を行う事にしました。残留しているノイズは、プリウスの低速走行時の疑似モーター音のような音です。このノイズはヘッドフォンをした状態で電源オンすると、カソードの温度が上がる前、すなわちアンプが動作する前は大きな音で聴こえ、ヒーターが暖まりアンプが正常動作すると、負帰還によってノイズがほぼ聴こえなくなっています。この状況からノイズの原因は、出力トランスが電源トランスの漏洩磁束を拾っている事にほぼ間違いありません。「真空管アンプの製作設計編4」で触れましたが、今回の設計は出力トランスの配置で妥協していました。この際、取り付けの向きを変更して最良の状態としたいとおもいます。写真が現状の出力トランスの取り付け状態です。

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これをネット上の情報にあったとおり、出力トランスの取り付け板を垂直方向に90°回転させて効果を確認したいとおもいます。次回は効果を確認した上で対策を行います。

 

つづく(番外編35)

真空管アンプのハム対策(番外編33)

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番外編33

EL34SGLパワーアンプのハム対策検討の続きを行います。

新たな対策検討

前回は、入力回路配線変更と銅板によるシールド対策が期待した程の効果がなかった為、新たな対策を検討します。前々回の記事の最後に書いた透磁率の高い材料を磁界を誘導する形で置いてみる事にしました。まずは金属の透磁率を確認してみました。理解しやすいように真空の透磁率との比を示す比透磁率を確認してみます。空気中はほぼ比透磁率は1なので、比透磁率がその材料の空気中と比べた磁束の通し易さを示す事になります。注意点としては、一定量の磁界を越えると磁気飽和して比透磁率は1に下がるので、効果を保には、ある程度の厚みが必要となります。

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手軽に入手可能な材料で比透磁率が高いものは鉄です。まずは初段の真空管にスチールの缶を被せてみる事にしました。スーパーに適当な缶を探しにいきました。目についたのは、トマトジュースの缶でした。片側を缶切りで全面カットし、洗って乾燥させて真空管に被せてみました。

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最初はそのまま被せてみました。銅板の時と同様にかぶせる際には、ハムの高調波が消えて効果がありますが、手を離すと効果がなくなります。次に、シャーシに触れる缶の縁の部分に絶縁テープを貼って被せてみました。残念ながら状況は全く変わりませんでした。せっかくなので、電源トランスに対策を試してみました。手頃な缶がなかった為、16cmの鉄製の片手持ち鍋を被せてみましたが、これも効果がありませんでした。一旦シールドによる対策検討はあきらめて、他の対策検討を行います。

回路対策

だめもとの範疇ですが、手持ちの100uF/400V品の電解コンデンサを効果がありそうな部分に追加接続してみました。対象は電源回路です。

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上記回路で400V品の電解コンデンサが実装されている3カ所に順番に接続して効果を確認しました。

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最初はトランジスタを使ったリップルフィルター用の電解コンデンサに追加接続します。元々、100uFが接続されているので、追加接続で2倍の容量になります。ショートしないようにワニグチクリップ電線で接続して電源オンしました。結果は残念ながら効果はありませんでした。その後、初段の平滑用電解コンデンサと、大元の平滑用電解コンデンサ部に接続して確認をしましたがどちらも効果はありませんでした。対策のアイデアが尽きたので、EL34SGLアンプの対策検討は一旦終わりとします。今回の検討でやや効果があった項目は、入力の配線変更のみでした。

せっかくなので

この機会に、ハムの問題が発覚していないEL34ppアンプの確認を行ってみます。このアンプは、マルチアンプシステムのツイーター駆動用として使用しているので、万が一ハムが出力されていると、直結しているツイーターに悪影響を与える事になります。このアンプもEL34SGLアンプと同様に、製作当初は負帰還をかけていましたが、運用の途中で帰還を外しました。回路上に残骸が残っているので、不要な配線と部品を削除したいとおもいます。検討用に、ヘッドフォン接続用ジグを出力に接続し、シャーシ内をいじる為に、ボンネットにダンボールを貼り付けて検討可能な状態としました。ボトムカバーを外すとこんな感じです。

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真空管アンプ製作1号機なので、最近の製作と細部が違っています。この状態でハムを確認してみました。ヘッドフォンを接続して電源オンします。ほぼホワイトノイズですが、その奥の方にかすかにハムが聴きとれます。製作した3台の真空管アンプを比較すると、初号機が一番優秀です。対策検討する必要がないレベルですが、次回負帰還の残骸の削除を行い、確認を行います。

 

つづく(番外編34)

真空管アンプのハム対策(番外編32)

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番外編32

今回はマルチアンプシステムのスコーカーチャンネル用のEL34SGLパワーアンプのハム対策を行います。

EL34SGLパワーアンプ状況

製作後の確認で、スコーカーに耳を近づけるとハムが聞こえましたが、リッスニングポイントでは聞こえないレベルだったので、対策を見送っていました。その後、システムを3wayマルチアンプ化した際に、スコーカーとツィーターのアッテネータも削除した事で、スピーカーの実効的な能率が高くなり、ハム問題が健在化していました。このアンプは差動入力で初段を定電流ダイオードを使用した差動アンプ構成をとっている為、同相入力のノイズに対しては強くなっています。

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ハムレベルの確認

スピーカーでハムのレベル確認では効果がわかりにくいため、ヘッドフォンで確認する事にしました。ヘッドフォン接続用にちょっとしたジグを作成しました。

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この接続アダプタをアンプのスピーカーターミナルに接続します。インピーダンスをあわせる為に、並列に10Ωの抵抗も接続しました。

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この状態で一旦ハムのレベルを確認します。入力を無信号状態で電源オンします。とてもヘッドフォンアンプとしては使えない状態のハムのレベルです。但しL/Rチャンネルはほぼ同等のレベルで高調波も含んでいます。気を取り直して検討の準備を進めます。検討時にアンプを逆さに置く必要があるので、ボンネット上に保護用のダンボールを貼り付けました。

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これで検討用の準備は完了です。

2匹目の狢

前回の改善検討で効果のあった入力配線のループ縮小による対策を行ってみます。写真は、入力回路配線部分です。R-chの配線は外した後ですが、L-ch配線は大きなループができています。

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このアンプですが製作当初は負帰還構成をとっていて、途中で無帰還に変更した事から、負帰還回路用の一部の抵抗が実装されたままとなっていました。

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具体的にはR05とR06は外していましたが、R03とR04が実装されたまま残っていました。今回の対策で残った抵抗も外してしまう事にしました。写真は対策後の入力配線です。

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だいぶ配線がすっきりしました。期待しつつ電源オンしてハムのレベルを確認します。やや改善したものの残念ながら抜本的な効果はありませんでした。他の対策を探すしかありません。

追加対策検討

真空管HPアンプの検討時と同様に、感電に注意しつつノイズに関連している回路を探してみました。触ればノイズが増える部分はありましたが、現状聞こえているノイズがそのまま増えるようなポイントは見つかりませんでした。

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アンプの部品配置の影響

本アンプは初段に12AX71本と、終段がシングルデュアル構成の為、EL34が2本の構成です。この為、初段真空管を電源トランス前に配置し、終段をその脇に2本並べて配置しています。

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初段は差動構成としていますが、ノイズに敏感な部分の為配置の影響が気になりました。試しに、前回の記事で購入した銅板を電源トランスと初段真空管の間に挿入したところ、高調波ノイズが押さえられました。但し銅板がシャーシに触れると効果がなくなります。また、銅板を絶縁した状態で間に置いても効果あがありません。

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私が手に持って間に挿入している時のみ改善効果があります。理由はわかりませんが、これでは対策がとれません。他の方法を検討せざる得ません。次回は対策検討の続きを行います。

 

つづく(番外編33)

真空管アンプのハム対策(番外編31)

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番外編31

2台の真空管アンプのハム対策を行います。

対象のアンプ

1台目は先日製作を完了した真空管ヘッドフォンアンプです。能率の高いヘッドフォンに変えた事で追加対策が必要となりました。2台目は、以前から記事で触れていましたが、マルチアンプシステムのスコーカーチャンネル用のEL34シングルパワーアンプです。マルチアンプ化により、スピーカーの実効能率が上がった事でハム顕在化していました。

真空管ヘッドフォンアンプ

汗ばむこの季節は、パッド式のヘッドフォンを装着したくない事が多くなり、以前購入していたインナーイヤータイプのバランス対応ヘッドフォンを引っ張り出しました。

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製作記事で紹介しましたが、負帰還でゲインを下げた事でハムは気にならないレベルまで下がりましたが、このインナーイヤータイプのヘッドフォンに替えた事で能率が高いからか、気になるレベルのハムが再発しました。症状はL-chからハムの高調波が聴こえます。製作記事中でも紹介しましたが、ボリュームとL-chの段管のカップリングコンデンサ付近をシールドする事で改善する事を確認していたので、事前に対策部品を買いにいきました。1点目は銅板です。加工しやすいように0.1mm厚のものを購入しました。

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100x200mmサイズで188円でした。2点目は、銅箔テープです。厚みは0.08mmです。

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50mm幅x5mで1,780円です。価格を見てちょっと躊躇しましたが、作業性には代えられないと考えて購入しました。まず初めに銅箔テープをボリュームのボディーに貼ってみました。

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事前の確認とは裏腹に、ほとんど効果がありませんでした。続いて段管のコンデンサ付近のシールドを銅板を置いて効果の確認をしましたが、自立させて手を離すと殆ど効果が認められませんでした。新たな対策を探すしかありません。感電に注意しながら原因と思われる部分に手を近づけて確認を繰り返した所、L-chのHotの入力ラインが影響を受けやすい事がわかりました。初段Hot側のグリッド端子への配線は写真のとおり、大きなループがあります。Cold側も同様の影響をうければ、初段は差動入力としているので相殺されるはずですが、Hot側のみのループです。

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写真の赤のラインですが、このラインをできるだけループを小さくするように配線をやり直しました。

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ボリューム側はHot側入力への帰還ラインのループが比較的大きくなっていました。

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写真中の黒のラインです。引き回しを変えてループを小さくしました。

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対策後に音を聴いてみましたが、L-chのハムの高調波はほぼ聞こえないレベルまで改善しました。ヘッドフォンを普段使用しているパイオニアのSE-MHR5に替えたところ、静かな環境でわずかに聞こえていたハムもほぼ聞こえないレベルに改善していました。当面、この状態で運用してみたいとおもいます。

その後の確認

ネットで関連情報を漁ったところ、低周波の漏洩磁界に対しては、銅版では殆ど効果がないとの事でした。透磁率の高い材料で磁束を誘導するように対策部品を配置する必要がるとの事でした。次のEL34SGLパワーアンプの対策時に考慮して対策検討したいとおもいます。次回は、EL34SGLパワーアンプのハム対策を行います。

 

つづく(番外編32)

真空管HPアンプの製作(まとめ編)

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まとめ編

アンプが完成したので、音質比較をした後、設計を改めてまとめます。

音質比較

比較対照は、先に製作したBTL方式A級DCヘッドフォンアンプです。比較に入る前に簡単に紹介します。回路は入力がDual J-FETのカスケード接続の差動アンプです。2段目は普通の差動アンプ構成で、ドライバおよび終段はコンプリメンタリバイポーラトランジスタ構成です。

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電源には24VAのトロイダルトランスを使用しています。

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比較で使用するヘッドフォンはいつも使っているパイオニアのSE-MHR5です。

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比較の方法は、普段聴いているCDを最初にトランジスタアンプで聴いて、その後真空管アンプに切り替えます。音の印象を比較します。

■氷の世界/LINDENBAUM(井筒香奈恵)

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トランジスタアンプの方が女性ボーカルがよりハスキーに聴こえます。奇数次高調波の影響でしょうか?真空管アンプは中低域が厚く鳴ります。音量を上げて聴きたくなり、音はなめらかです。

木星/惑星

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トランジスタアンプは音の分離が良く聴こえました。真空管アンプは音が厚く暖かみのある音色です。トランジスタアンプも悪くありませんでした。

ファランドール/BJⅡ(Bob James

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トランジスタアンプの音はベースの音に芯があり、ハリのある音がします。真空管アンプは演奏に奥行きを感じます。ブラスの音が美しく響きます。

■海風/海風(風)

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トランジスタアンプはパワーで鳴らす感じのベースが特徴です。真空管アンプはアコスティックギターの響きが厚く美しい。音が厚く鳴ります。

■星に願いを/スペシャル(ケニードリュー)

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トランジスタアンプはベースの基音が明瞭に鳴ります。真空管アンプはベースに迫力がありピアノが美しく響きます。

音質比較まとめ

トランジスタアンプはタイトな感じで鳴ります。ボーカルは真空管アンプと比較して、ややハスキーな感じに聴こえます。真空管アンプは全般的に演奏が厚く聴こえます。ボーカルはハスキーな感じはなく艶やかに聴こえます。この差はアンプの裸ゲインの差に伴う帰還量の違いや、素子の特性の違い(偶数次と奇数次の歪み量の差)に起因するのでしょうか?普段、ヘッドフォンアンプはデスクトップのTVの音を聴く為に使用していますが、この普段使いの場合は真空管アンプの音の方が適している印象です。機会があればヘッドフォンを買い足してまた比較をしてみたいとおもいます。

設計まとめ

最後に設計のまとめを行います。今回は初めて全て3極管を使い、コンパクトに構成するために、オール双3極管構成としました。パワートランスと出力トランスはヘッドフォンアンプ用のものがないので10Wクラスのパワーアンプ用の物を選定した為、音質にも好影響を与えています。

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初段と終段のロードラインも改めて掲載します。終段は負荷抵抗を見直した為、変更を反映したグラフとしています。

■初段ロードライン

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■終段ロードライン

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電源回路は製作実績のある、トランジスタを使ったリップルフィルタを採用しています。

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ここからは外観写真を掲載します。

■フロント写真

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■フロント写真(ボンネット付き)

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■リア写真

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■シャーシ内部

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真空管

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写真を見てのとおり、シャーシは、もう1クラス小さいものでも実装できそうですが、残課題のハムの影響を考えると、このサイズが適当だったとおもいます。本製作は10連休となった今年のスペシャルなゴールデンウィークの過ごし方として設計を開始しましたが、GW中には完成できずにこのタイミングとなってしまいました。今回もおつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)