DACユニットの検討(製作編21)

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製作編21

PCM1792AのI2Cインターフェースを使って、モノラルモードの設定を行います。記事作成に余裕があるため、9月4日まで隔日のアップロードを継続します。

I2Cについて

I2Cはフィリップスが開発したシリアルバスです。通信はSDA(シリアルデータ)とSCL(シリアルクロック)の2線式です、7ビットのアドレス空間のうち16の予約アドレスを除いた112個のノードが同一バス上で通信可能な規格です。今回はArduinoをマスター、2枚のDAC基板をスレーブとして通信を行います。話は逸れますが先日ニュースで通信規格仕様中で使用されるマスター、スレーブの呼称を変えるとの報道がありました。日本人にはあまりピンときませんが、奴隷制度を連想する事が理由だそうです。馴染んだ呼称を変える事はすぐにはできそうにありません。

PCM1792Aの仕様

下の抜粋は、PCM1792Aのアドレス設定に関する仕様です。

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下位の2ビット(ADR0/1)がICの端子電圧で設定され、1つのバス上にアドレス4Ch~4Fhとして最大4個接続可能です。デジットキットではADR0/1を決める各端子がプルアップされているため、デフォルトでアドレスは4Fhとなっています。今回はこのアドレスと、ADR0を決める端子をGNDに落として4Ehの2つのアドレスを使用する事にしました。下記はこの仕様をソースコードに反映した部分です。

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次はモノラルモード設定に関する仕様を確認します。設定機能はレジスタ20にあります。下記がレジスタ20の機能一覧です。

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この中のMONOビットとCHSLビットを操作して各DAC基板をL/Rバランス出力モードに設定します。下記がMONOビットに関する仕様の抜粋です。

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MONOビットはデフォルト0で、ステレオ動作となっています。このビットを1にセットします。次にCHSLビットの仕様を確認します。

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CHSL=0でLチャンネル、CHSL=1でRチャンネル再生モードとなります。これらの設定は、ArduinoWire.hライブラリを使用すると簡単に設定できます。下記はそれぞれのDAC基板にL/Rチャンネルモノラル再生モード設定を行う関数(MonoLI2CとMonoRI2C)のソースです。関数の呼び値valueに設定するDAC基板のアドレスを入れてコールするとその基板が所定の動作モードに設定されます。

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動作確認用のMain関数は、上記をコールしてループ処理でアイドリングさせています。

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これで確認用のソースの準備が完了しました。

I2Cバス接続

次はDAC基板とAruduino間を接続します。ソースを作成するためにPCM1792Aの仕様を見ていたところ、このICは5V入力に対応していますが、出力レベルが3.3Vの為、回路変更する事にしました。作成すみのシールド基板を改造します。改造する回路図は以下のとおりです。

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改造後のシールド基板かこんな感じとなりました。段々汚くなってきましたが、隠れてしまうので気にしない事にします。

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次は配線用ケーブルをつくる為にDAC基板の仕様を確認します。

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CN3B(5pin)がマイコンインターフェース用のピンヘッダです。シリアルバスは2芯のシールド線を使用する事とします。SPDIF出力ではシールド電線を使って痛い目にあいましたが、このバスは低速なので問題なしと判断しました。

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1ピンと2ピンはプルアップされているので、アドレス4Fh設定の場合はオープンとなります。2本の電線は短くカットして端末保護チューブを被せて処理しました。

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一旦、このケーブルを使って動作確認を行う事にします。本記事のアイキャッチ写真はDAC基板に作成したケーブルを接続した状態です。紙面が尽きたので確認は次回記事で紹介します。

 

つづく(製作編22)

DACユニットの検討(製作編20)

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製作編20

部品実装が全て完了したので、Rチャンネルの動作確認を行い、モノラルモード動作確認の準備も行います。

Rチャンネル動作確認

Rチャンネルとはいえ、まだDACのモノラル動作設定ができていないので、動作自体はステレオモードとなっています。この確認では、本製作で気になっていた点の1つ、SPDIF基板出力の分岐の確認も行います。十分配線確認して電源オンしました。とりあえず何もおきません。早速1KHz 0dBの再生を行ってIV変換基板出力をモニタしてみました。波形は出力されているものの、定期的に表示波形がちらちら変動しています。何回か波形を止めたところ波形がずっこけている事が確認できました。

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再生を止めて無音状態にしたところ、ずっこけるタイミングでノイズが発生している事も確認しました。

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試しにLチャンネル側の分岐出力を外してみたところ、正常な波形に戻りました。但し、DAC入力側を外しても状況は変わりませんでした。心配していた点で問題発生です。配線を元に戻してDAC入力のオーディオシリアル信号のLRCKとBCKをモニタしたところ、定期的にBCKが変動している事も確認できました。以上の状況から配線に使用した4芯のシールドケーブル起因と考えて、QIケーブルをそのまま使ってみる事にしました。但し、2ピンと3ピンを入れ替える必要があるので、コネクタハウジングから対象のピン外して入れ替えをします。

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ハウジングのストッパ部分をピンセットで少し持ち上げて、対象の電線を引っ張ると抜けました。2ピンと3ピンを入れ替えて再接続します。

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Rチャンネルはまだシールドケーブルのままです。あまり期待せずに電源オンして再生したみました。ずっこけ現象は発生しなくなりました。このままでは見た目も良くないので、電線を編んでみる事にしました。5本編み線のやり方が分からなかったので検索したところ、Youtubeに編み方の映像が沢山あり参考にさせてもらいました。先ほどの要領で4本ハウジングからピンを抜いて5本編みをしました。ケーブルはすっきりしましたが、改善効果が気になります。先ほどと同様に配線して確認しましたが、問題ありませんでした。特性を揃える為にLチャンネルのケーブルも同様に変更しました。

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両チャンネルともに少し長いですが、ブレッドボードの確認はこのまま進めます。5本編みケーブルの影響を確認する為に-60dB 1KHz再生時のノイズ特性を確認します。Lチャンネルと同様に測定を行いました。

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ノイズレベルは1KHzのレベル比で約-16dBでケーブル変更前と変わりませんでした。SPDIF出力の分岐問題は、ケーブル変更で解決しました。やれやれ。

LCD表示不具合

動作確認中に、時々表示が欠落する現象が発生していました。動作確認に影響はなかったため、ずっと放置してきました。

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ユニットに組み上げた後は、見た目の品質に影響するので、対策を検討します。ソースコードを眺めて、エイヤーで対策を入れてみました。入れた対策は下記のとおりです。

LCDクリアコマンド実行後に100msのウエイトを挿入

LCDカーソル設定コマンド実行後に100msのウエイトを挿入

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上記のコマンド受信後の動作中にprintコマンドを受信している可能性を考慮した対策です。変更後の確認では、現象の再現はしませんでしたが、当面様子見したいとおもいます。

DAC基板モノラル動作

PCM1972Aは、SPIとI2Cのコマンド受信機能を持っています。このデジットキットでは、JP1Bにショートジャンパを挿すとSPIモードでオープンのままの場合はI2Cモードの動作となります。マイコンインターフェース系の接続情報は以下のとおりです。

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次回はPCM1792のマイコンインターフェース仕様を理解してモノラルモード設定の準備を行います。

 

つづく(製作編21)

DACユニットの検討(製作編19)

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製作編19

残りの基板の実装と基板間の配線を行い動作確認の準備を行います。

IV変換基板実装

2枚未実装基板が残っていますが、最初にIV変換基板を実装します。部品実装がやりやすいように、スタッドを取り付けて最初にフィルムコンデンサを取り付けました。

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次はIV変換回路に改造するために抵抗シルク4カ所にジャンパを取り付けます。

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続いて改造用に別に購入した1KΩの抵抗を4本取り付けました。

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基板のリードの穴の間隔が狭いため、リードの根本でフォーミングしないとうまく挿さりません。次はセラミックコンデンサを4個取り付けます。

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次にオペアンプ用のソケットを2個取り付けました。最初に1つのピンをハンダ付けして、傾きをお補正してから全ピンをハンダします。

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さらにピンヘッダを取り付けます。全部で6個です。

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写真奥に1ピンのヘッダがありますがGND用です。取り付け時の傾きの矯正に苦労しました。最後に電解コンデンサを2個取り付けて完成です。

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通電確認は後でまとめて行う予定です。実装完了した基板をブレッドボードに装着してみました。

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DAC基板実装

最後の実装はDAC基板です。IV変換基板と同様に部品実装をやりやすくするためにスタッドを取り付けました。

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最初に抵抗3本を取り付けます。

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次はセラミックコンデンサ3個を取り付けました。

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次に抵抗モジュール取り付け用のソケットと、抵抗モジュールを取り付けます。

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抵抗モジュール取り付けでお約束どおり、ピンを曲げてしまし折れないように慎重に戻しました。続いてピンヘッダ11個とりつけました。

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ピンヘッダは熱に弱く、実装が傾きやすく、実装数が多いため罰ゲームの様相ですが、耐えて全て取り付けました。次は電解コンデンサ6個を取り付けます。定格が2種類あり、かつ極性もあるので注意しながら取り付けました。

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最後にGNDピンを取り付けて完成です。

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GNDピンは、写真左上の黄色の台座のある部品です。これで全基板の部品実装が完了しました。完成した基板をブレッドボードに取り付けてみましたが、ますますいい感じになってきました。

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配線ケーブル製作

最初にSPDIインターフェース基板とDAC基板間の接続ケーブルを製作します。先に製作したものと同様に4芯のシールドケーブルを使い、両端に5極のQIケーブルの端子を取り付けました。SPDIインターフェース基板のオーディオシリアル入力を改造して、2系統の出力としたところに片側を接続し、反対側を先ほど実装を終えたDAC基板の入力に接続しました。出力の分岐は、今回製作上で気になるポイントの1つです。

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本当はすぐにでも通電確認をしたいところですが、DAC基板は電流出力の為、次段のIV変換基板と接続を先に行います。接続は2系統のバランス出力となるため、2芯のシールドケーブルを使用します。ケーブルの製作は地味な上に手がかかります。

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次は、IV変換基板の電源配線を行い、先にIV変換基板の通電確認を行いました。

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最初にオペアンプを実装せずに電源オンして、オペアンプ用のソケットの各電圧を確認しました。問題なかったのでオペアンプを実装します。次はDAC基板の電源配線を行い、実装が完了したチャンネルの通電確認の準備が終わりました。次回は通電および動作確認を行います。

 

つづく(製作編20)

DACユニットの検討(製作編18)

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製作編18

前回紹介が漏れてしまったcold系の動作確認を行い、順番が逆になりましたが、オシロFFT機能の確認と、現行DACユニットの特性測定を行います。

Cold系DAC動作確認

Hot系と同様にCDプレーヤーで0dB 1KHzの正弦波の再生を行って出力波形をモニタしました。回路図上はCold系ですが、現状はDACがステレオ動作をしているので、別チャンネルの波形をモニタしている事になります。

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所定の波形の確認ができました。ノイズレベルも前回の記事で紹介したレベルで違いはありませんでした。

オシロFFT機能

予定を変更して、今回測定に使ったオシロFFT機能の確認を行います。オシロはOWONのエコノミータイプのSDS1102で、1GHzサンプリング、100MHz帯域です。今回の測定結果では、7.8Vppが約-10dBと表示されていました。方法は発振器で正弦波を入力して表示を確認しました。

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最初に1KHz 8Vppの信号を入力して表示の確認です。

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1KHzの表示は-10dBでした。ブレッドボード測定時は7.8Vpp -10dBだったので、ほぼ同等の結果となっています。8Vppの正弦波は2.83Vrmsなので、この結果からFFTが示す0dBは25.3Vpp、8.95Vrmsと算出できます。この基準値はいったい何なのでしょうか?次にレベルを約1/10の784mVppを入力してみました。

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1KHzの結果は-30dBと、レベルに見合った表示となっていました。次は周波数を5KHzに上げてみました。レベルは8Vppです。

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レベルのピークが5KHzに移動し、レベルは-10dBを示しています。これらの確認結果から0dBの基準はよくわかりませんでしたが、ノイズの周波数解析に使用できると改めて判断しました。

DAC-1000の特性

せっかくなので、現行DACユニットのDAC-1000の特性を参考に測定してみました。測定はR-chのバランス出力をモニタしました。最初に1KHz 0dB再生の確認です。

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バランス出力で12Vpp、4.26Vrmsです。カタログ上のスペックは4Vrmsだったので、何らかの負荷前提の数値でしょうか?次は20KHz 0dB再生です。

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波形が若干荒くなりましたが、何ら問題ありません。続いて1KHz -60dB再生です。

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波形はノイズが増えましたが、正弦波は視認できます。この時の波形をFFT解析してみます。

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レベルは-76dBで、ノイズレベルは-101.6dBを示しています。0dB基準のダイナミックレンジは約86dBと算出できます。さらに測定レンジを広げてみました。

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5MHz帯域では、ノイズレベルの上昇等確認できませんでした。市販品なので、さすがにそつなくまとめられている事が確認できました。前回の記事の測定結果と比較すると格段の差があります。製作中のDACユニットはブロックごとに別基板となっている事で、ブロック間のGND電位がノイズの点で不利で、かつアンチエイリアスフィルターも1段しかかけていない事も不利に働いていると考えられます。今回の確認で、製作中のDACユニットの実用化へのハードルが高い事を認識しました。次回はノイズ検討は一旦保留して、残りの基板の実装を行います。

 

つづく(製作編19)

DACユニットの検討(製作編17)

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製作編17

DAC基板出力とI/V変換基板入力を接続して、DACの動作確認を行います。尚、夏休みの為作業が進むので、8/21まで1日おきに記事をアップロードしていきます。

DAC基板配線残り

前回の記事でDAC動作確認に必要な配線が完了したとしましたが、I/V変換基板との接続が残っていました。現時点で接続が完了した部分は以下のとおりです。

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DAC基板からは、2つの差動信号が2つのピンヘッダから出力されます。応用篇の説明によると、この部分も電線を撚る指示がされていました。この部分も撚るかわりに2芯シールド線を使用する事にしました。シールド線はいつも使っているベルデンの1503Aです。DAC入力部のケーブル加工と同様に熱収縮チューブを駆使して加工しました。まずは1本目が完成しました。接続するとこんな感じになります。

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もう1本作成する必要があります。応用篇の実体配線図を見ると、こちらの接続ではGND配線をしない指示となっていました。

 

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おそらく、ハム対策ではないかと考えられます。この指示に従って、シールドラインの接続を、I/V変換基板のコネクタ側でしない事としました。目で見てわかるように写真のとおり加工しています。

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完成したケーブルでDAC基板とI/V変換基板を接続すれば、今度こそDACの動作確認に必要な配線は完了です。

DAC動作確認

DACの動作確認は、EIAJのテストディスクを再生して、各部の信号をオシロでモニタします。まずは0dB 1KHzの正弦波をリピート再生させてブレッドボードの電源をオンしました。発煙等なく、まずは一安心です。波形の確認ポイントは、I/V変換出力です。

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2chあるオシロのプローブをHotとCold端子に接続しました。

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黄色がHotで、青がColdです。赤はオシロの演算機能を使って差信号を表示しています。出力信号は反転していて、それぞれのレベルは7.8Vppです。差信号のレベルは15.6Vppとなっており、想定どおりの動作をしている事が確認できました。再生するトラックナンバーを変えて、20KHz 0dBを再生してみました。

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やや波形の滑らかさは悪化したものの、1KHz時と同様の位相関係とレベルの確認ができました。次は-20dB 1KHzを再生してみました。

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波形にノイズは乗っているものの、0dBと位相関係は同等です。レベルは780mVppとなるはずですが、ノイズによるカーソル位置の誤差によりやや大きな値を示しています。ノイズが気になったため、ポーズ状態の波形も確認してみました。予想よりも大きなノイズを確認したので、オシロの掃引速度を上げてみました。

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差動信号で89mVppを観測しました。0dB再生時の出力波形との比較を行うと以下のとおりです。

20 x log (15.8 / 89E-3) = 45dB

試しに両信号を加算してみました。

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ノイズレベルは63mVppまで下がりました。ピークはビットクロックの漏れ込みのようです。加算で消えた波形は明らかに信号系で加えられているもののようです。このオシロにはFFT機能がついていることを思いだし、周波数解析をしてみる事にしました。最初に1KHz 0dB再生時のものです。

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1KHz 0dBの信号が-10dBとして観測されています。次に1KHz -60dBの信号を再生してみました。

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1KHz -60dBの信号が-70dBとして観測されています。続いて無信号時を確認してみました。

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この場合のノイズレベルは-82dBと観測されました。CDのダイナミックレンジ換算で72dB(-10+82)と計算できます。最後にシステムの電源をオフして同様の測定を行ってみました。

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ノイズレベルは、-99.6dBを観測しました。測定結果に対して測定系に少しですが余裕があります。Dレンジ72dBはCDとしては不十分ですが、最初に確認したノイズ波形は、ディザ等含めた量子化ノイズの可能性ががあります。一旦ノイズの検討は保留して製作を続けたいとおもいます。

 

つづく(製作篇18)

DACユニットの検討(製作編16)

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製作編16

引き続き基板の電源配線および基板間の配線を行います。

平衡不平衡基板電源配線

この基板には左右チャンネル分の回路が実装されているため、電源も左右独立で供給します。供給元はアナログ+/-15V電源基板です。赤-黒と白-白の平行ケーブルをばらして単線にして、それを赤、黒、白に組み合わせて編んで使用しました。ケーブルの両端は解れないように、インシュロックで固定しています。左右チャンネル分を準備して配線しました。

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線長は後の事を考えて少し長めに設定しています。この基板は組み上げた際に動作確認を行っているため、このタイミグでは通電確認のみ行いました。確認内容は出力オフセット電圧です。確認の結果特に問題はありませんでした。

I/V変換基板配線

初めに電源配線を行います。この基板には片チャンネル分が実装されているので、+/-15Vアナログ電源のLチャンネル側に接続します。3極のピンヘッダからの供給なので、購入済みのQIケーブルをカットして使用しました。反対側はバラ線をハンダ処理して電源基板の端子台へ接続します。

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まずは、オペアンプを実装せずに通電確認を行います。確認ポイントは、オペアンプ実装用のソケットの電源端子電圧です。正しく+/-15Vが供給されている事が確認できました。一旦電源をオフして、オペアンプを装着しました。

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BBのロゴが印刷されたオペアンプは使った事がないので、見た目が新鮮です。

DAC基板配線

次はDAC基板とデジタルインターフェース基板の接続を行います。特性優先とした為、DAC基板を片チャンネルで1枚使用しています。この為、デジタルインターフェース基板出力を2枚のDAC基板へ接続する必要があります。接続はGNDを含めて5本です。配線を分岐させるのはスマートではないと思いつつ、デジタルインターフェース基板の資料を眺めていたところ、DAIトランシーバーモード用のデジタル入力用のピンヘッダがあり、1つのピンを除き共通となっている事に気づきました。

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回路図右下のCN9Gピンヘッダです。トランシーバーモードで使う事はないので、DATAラインのR15Gを取り外して、3pinをCN10Gの3pinと接続して出力を2系統設ける事にしました。

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基板に抵抗が5本並んで実装できるようになっていますが、右から2本目をカットしました。代わりに、ハンダ面で3ピン同士を接続しています。

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これでケーブルを分岐させる事なく、2枚のDAC基板へ信号を出力する事ができます。続いて改造したこのピンヘッダとDAC基板間の配線を行います。応用篇の説明によるとこのオーディオシリアル信号は「よじって配線してください」と記載されていました。よじる効果はどれほどかわからなかったので、事前に4芯シールドケーブルを購入しておきました。共立エレショップのソフトタイプ仕様のものです。配線は下図のとおり、2ピンと3ピンを入れ子にする必要があります。

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このケーブルの作成には手間がかかりました。2種類の径の熱収縮チューブを駆使して見栄えを考慮しています。

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写真は4芯を接続したところです。左に写っているのが熱収縮チューブで、この後右にずらしてドライヤで加熱しました。写真には写っていませんが、写真右外のシースに熱収縮チューブを被せてあり、このハンダ部に熱収縮チューブをスライドして再度ドライヤで加熱すると加工完了です。反対側も同様に処理をしました。完成したケーブルで基板間を接続しました。

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見栄えはまあまあではないでしょうか?次はDAC基板の電源配線を行います。供給電圧は5Vと3.3Vです。3極のQIケーブルをカットしてデジアナ電源基板と接続しました。(本記事アイキャッチ写真参照)これでDAC動作をさせるための最低限の配線が終わりました。次回はこの状態で動作確認を行います。

 

つづく(製作編17)

DACユニットの検討(製作編15)

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製作編15

基板への電源配線と基板間の配線を行い、完了した部分から通電確認を行います。

トランス配線確認

基板間の配線の前に、前回通電確認した+/-15V電源のトランス配線を確認します。回路はトランスの2つの二次巻き線を使って全波整流動作をさせています。

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使用したトランスの仕様は以下のとおりです。(上側)

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接続は黄と白をまとめてGNDへ接続しています。極性を間違えると動作はするものの、単に二次巻き線をパラレルに接続されるだけで、全波整流動作となりません。確認は通電中の波形をオシロでモニタしました。

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以下が確認結果です。

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想定どおり、位相反転している事が確認できました。実効値15.5Vとほぼ無負荷なのでやや高い電圧となっています。極性確認ができたので、二次巻き線の電線をインシュロックで束線しました。

S/PDIF信号配線

この配線は、CDプレーヤーからのS/PDIF信号をRCAピンジャックで受けて、パルストランス基板に入力し、パルストランス出力をデジタルインターフェース基板へ出力する部分です。共立エレショップから3C-2Vを使ったビデオケーブルを購入していて、このケーブルをカットして使用する予定でした。

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3C-2Vは太くて取り回しが悪そうなので、手持ちの細いビデオケーブルをカットして使う事にしました。カットして見たところ、電線は普通のシールドケーブルです。

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ブレッドボードは、特性より取り回しを優先してこの電線を使う事にしました。初めに入力側のRCAジャック配線を行います。

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出力側も同様に配線しますが、デジタルインターフェース基板側の入力は2極のピンヘッダです。事前に購入しておいた2極のQIケーブルをカットしてシールド線に接続しました。

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反対側は基板端子台接続なのでバラ線をハンダ処理します。完成したケーブルで基板間を接続しました。

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ピンヘッダの接続はどんな向きでも挿せるので、基板に黒の配線位置を示すマーキングをして誤挿入を防止します。

デジタルインターフェース基板配線

次はデジタルインターフェース基板の電源配線を行います。下図のとおり、3.3Vを2カ所のピンヘッダへ供給します。

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電線は2極のQIケーブルをカットして使用しました。電源はアナデジ電源の3.3V出力の1つを使用します。電線が長かった為、インシュロックで束線しました。電源配線は、共立エレショップからダウンロードした応用編の説明書にも記載されていましたが、2カ所ある3.3V電源端子の1つの極性が添付の組立説明書と逆になっていて危うく誤配線で基板を壊してしまうところでした。注意が必要です。

デジタルインターフェース基板通電確認

デジタルインターフェース基板に電源供給できるようになったので、通電確認を行います。CDプレーヤーで0dB 1KHzの正弦波を再生してデジタル信号を入力しました。本記事のアイキャッチ写真が信号モニタ時の写真です。初めに、LRCKとBCK出力をモニタします。

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写真ではLRCK='L'の期間を観測していますが、約88.2KHzとサンプリング周波数の2倍となっている事が確認できました。その'L'の期間にBCKが32パルス入り、最大32bitのデータの転送ができるようになっていました。次はDATAとBCK出力のモニタです。

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0dB 1KHzの信号を入力していますが、DATAに数値が乗って転送されている事が確認できました。波形のタイミングを見る限り正しく動作していそうです。次回はアナログ基板への電源配線を行い、DAC動作の確認を行います。

 

つづく(製作編16)