Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編15)

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製作編15

前回組立を紹介した終段モジュールをヒートシンクに取り付け、完成したアンプモジュールの通電および動作確認の準備を行います。

終段モジュール取り付け

終段モジュールは、トランジスタを介して取り付けます。今回使用するトランジスタはフルモールド品ですが念のため確認してみました。

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取り付け穴部にも金属が露出した部分はありませんでしたが、背面に2カ所窪みがあり、その奥に金属のような部分が見えます。取り付け時には、放熱シートを使用するため、問題にはなりません。パッケージはどの程度の厚さでモールドされているかわからなかったので、念のため固定用のネジは樹脂ネジを使用しました。

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同様にコンプリメンタリのもう一方も取り付けました。次はパスコン用のGND線を基板間に配線します。

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このラインは基本的に電流は流れないので電線の太さは気にしません。続いて、出力電流が流れるエミッタ抵抗間を配線しました。

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このラインは太くしたいと考えましたが、エミッタ抵抗に0.33Ωを入れている事から太くしても意味が無いと考えて、配線の作業性も考慮し先のGND配線と同じ径の電線(赤の被覆電線)を使用しました。次は終段ベース入力配線を行います。長めに電線を直出ししていたので、敷線に必要な長さに合わせてカットし、アンプ基板の端子台に接続しました。

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NPN側のベース入力配線と出力をドライバの帰還ポイントへ戻す配線を同様に行いました。

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見栄えも考慮して、インシュロックで束線しています。これで終段モジュールの取り付け完了です。

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いい感じに仕上がったとおもいます。モジュール基板のハンダ面も参考に掲載します。

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この作業をあと3枚分行いました。

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4枚中1枚でPNPとNPNの取り付け位置を逆にしてしまいました。(上記写真の一番奥のもの)取り付け後に気づきましたが、特性への影響はなさそうなので、そのままとする事にしました。

通電確認準備

次は組み上がったアンプモジュールの通電および動作確認の準備を行います。アンプ基板単体の確認時と同様に電源はユニバーサル電源から供給します。終段とドライバ段の電源は共通なので、配線が煩雑になる事が予想される為、接続用のジグを作成する事にしました。今後の事も考えて、+/GND/-電源を3分割して、接続を端子台経由でできるジグを作成します。

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基板の長辺の一方に入力用の端子台を、反対の長辺に出力用端子台3を3個並べて配置しました。

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配線は悩みましたが、出力のセンターの端子台と入力用の端子台間を3本直線でダイレクトに接続しました。この配線の為、入力側と出力側の+/GND/-の配置は反対となります。出力の両端の端子台へは、部品面のジャンパ線でそれぞれ接続しました。

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これでシンプルに電源配線ができそうです。ユニバーサル電源との接続は以下のとおりです。

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次回は、組立完了したアンプモジュールの通電と動作確認を行います。

 

つづく(製作編16)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編14)

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製作編14

終段をヒートシンクに取り付ける為の終段モジュールの実装を行います。

終段モジュール

今回実装する終段モジュールは、回路図上の赤枠内の部分です。

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回路図は、前回検討を行った位相補償コンデンサの容量値と終段のパスコンを追加しています。終段モジュールに必要な入出力は以下のとおりです。

・終段電源(+9.6V/GND/-9.6V)

・信号入力(ドライバ段エミッタ2本/ドライバ段出力)

・信号出力

このモジュールをどのような構成にしたものか?実際にヒートシンクにユニバーサル基板を当てて考えてみました。

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コンプリメンタリの2つのトランジスタを1枚の基板に実装すると部品実装が楽になりそうですが、温度補償モジュールが干渉するため、基板を切り欠く必要があります。トランジスタの取り付け穴の間隔も、1枚の基板実装を考慮していなかった為に、1枚基板実装はあきらめました。配線は煩雑になりますが、コンプリメンタリトランジスタ専用の基板に実装する事にします。基板のサイズは、実装部品や配線を考慮して、幅9穴x高さ5穴としました。見た目を考慮して、基板前方をユニバーサル基板オリジナルのカット辺とします。

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入出力の配線の方法を考えます。一旦、端子台の実装を考えましたが、終段モジュールは、トランジスタのみで固定する為、端子台配線時のネジ締めに強度面で耐えられません。仕方がないので基板直出しにする事としました。基板の穴にダイレクトに挿せる電線の芯径は、温度補償モジュールの配線に使ったものが最大ですが、この電線では終段の電源供給には役不足です。手持ちのワンサイズ太い電線を挿す為には、穴径をφ1.2に拡大する必要があります。出力はさらにワンサイズ太い電線を使う為にφ1.5に穴を拡大しました。

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右は2SA用で左が2SC用です。2SC用の左端の大きな穴に出力用電線を挿します。写真ではわかりにくいですが、残り3カ所穴を拡大しています。それぞれ+/GND/-電源線を挿します。これで基板の加工は完了です。

終段モジュール部品実装

最初にモジュールに実装するコンプリメンタリペアトランジスタを選別します。下記はコンプリメンタリペア表ですが、今回は水色の編みかけのペアを選定しました。

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今回もhfe測定値が同じものをペア選択できました。コンプリメンタリペアトランジスタの端子の並びは同じなので、各基板の部品実装は同じにしました。

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実装部品は、エミッタ抵抗と電源のパスコンです。一旦部品を取り外し、トランジスタを仮止めしました。まずは電源配線を行います。コレクタ端子の手前の拡大した穴に電源用電線をさしてハンダ付けします。

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その電線とコレクタ端子を接続します。作業性を考えて、エミッタ抵抗のリードを利用しました。

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次にエミッタ抵抗とパスコンを実装してGND電線も接続しました。

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あとは、ベース入力配線をすれば完成です。同様にNPNトランジスタの終段モジュールも実装を行いました。この作業をトータル4ペア分行いましたが、かなり息切れしてしまいました。特に電線を基板の穴に挿す事が大変で、芯線1本がはみ出しては、芯線を拠り直しの繰り返しを何度も行いました。それでもなんとか4ペア分実装完了しました。次回は終段モジュールをヒートシンクに取り付けます。

 

つづく(製作編15)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編13)

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製作編13

アンプ基板およびトランジスタを取り付ける為に、ヒートシンクの加工を行います。

ヒートシンク加工

ヒートシンクには、アンプ基板、温度補償用トランジスタモジュールと、終段のトランジスタを取り付ける為に、M3のネジ穴を合計7個あけます。まずは、加工図をヒートシンクに貼り付けます。

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加工図の穴のセンターにポンチで印を付けます。M3のネジ穴は、下穴をφ2.5であけて、その後M3用のタップでねじを切ります。

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位置を正確に出す為に、最初にφ2の穴をあけて、さらにφ2.5に広げました。

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穴があいたらタップでネジを切ります。タップは約5年ぶりの使用なので気を使いました。

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ねじ穴を2つ切ったら、タップに潤滑剤を塗布して、焼け付きを防止しました。最初はおっかなびっくりでしたが、すぐに慣れました。

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切ったねじ穴に、基板固定用の6角スペーサーを取り付けてみました。

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いい感じに取り付けられました。ネジ穴は1個の放熱器に7個なので、合計28個あけました。最後の方は作業に飽きてしまい、集中力が落ちて失敗しないか心配でしがた無事ネジ穴あけは終了しました。

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ヒートシンク基板取り付け

ヒートシンクに取り付けたスペーサーに基板を取り付けます。基板およびヒートシンクともに、左用と右用があるので、間違えずに取り付けます。基板4枚中3枚は問題なく取り付けられました。残り1枚はスペーサーの位置が基板の取り付け穴位置と合わず、そのままでは取り付けができませんでした。通常は、板金側の穴を拡大して調整しますが、今回はタップが切ってあるため、基板側の穴を削りました。対角の2点を固定した状態で、のこり2つの取り付け穴のずれている方向に印を付けて、基板の取り付け穴を削りました。そんなに手間がかからずに取り付ける事ができました。(アイキャッチ写真参照)

トランジスタモジュール取り付け

ヒートシンクには、残り3つのM3のねじ穴が残っています。3つのネジ穴は直線上に並んでいて、両サイドには終段のコンプリメンタリペアのトランジスタを取り付け、センターにトランジスタモジュールを取り付けます。取り付けには、放熱シート、M4ナット、M3ネジ、M3用平ワッシャを使います。

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ヒートシンクのねじ穴に合わせて放熱シートを置きます。トランジスタモジュールの取り付け穴にM3ネジを通して、クリアランス確保の為にM4ナットとM3用平ワッシャ2枚をかませて、放熱シートに被せる感じでトランジスタモジュールを取り付けました。平ワッシャ2枚はクリアランス調整用に入れています。

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写真では、放熱シートが一部浮き上がっていますが、トランジスタ部分はしっかり固定されていて問題ありません。アンプ基板との位置関係はこんな感じです。

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同様に残り3枚ともトランジスタモジュール基板をヒートシンクに取り付けました。次回は、終段のトランジスタをモジュール化してヒートシンクに取り付けます。

 

つづく(製作編14)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編12)

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製作編12

アンプ基板残り3枚の通電確認とヒートシンクの加工をスタートします。

アンプ基板通電確認残り

残り3枚は、全てハンダ不具合起因により、オリジナルの完成状態では正しく動作しませんでした。原因特定は思いの外苦労しました。原因がわかってしまえば、各部電圧確認結果のつじつまが合い、全て他愛もない状態でした。今後の教訓として異常状態の確認時の心得を整理しておきます。

1)各部電圧確認時は確認ポイントで接続される全部品の端子電圧を確認する

2)部品不良はまずないと考えて、ハンダ不良(未接続 or 他とショート)を疑う

このたった2つを意識していれば、原因特定の時間は半減したとおもいます。

事例1

2段目の差動アンプ右側のトランジスタのエミッタとコレクタ間のハンダショートです。確認時の各部電圧は以下のとおりでした。

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上記の結果を配線にミスがない前提で電圧を理解しようとすると、まったく訳がわかりません。2項の教訓を踏まえて確認を行っていれば、すぐに原因が特定できたと考えます。

事例2

ドライバ段のNPNトランジスタのエミッタ抵抗ハンダ忘れです。状態は以下のとおりです。

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写真のとおり良く見ればわかる状態でした。同じ作業を4枚続けて行ったため、後半の基板実装時に集中力が途切れてしまいミスしたと考えます。この時の各部電圧は以下のとおりです。

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これも配線が正しい前提で考えると、なんとも不思議な状態ですが、1項の教訓を踏まえて確認を行えばこの案件もすぐに原因特定できたとおもいます。

事例3

初段JFETのソース端子のハンダ忘れです。状況は以下のとおりです。

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この時の各部電圧は以下のとおりでした。

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ここでは、間違ったツェナーダイオードの取り付けを疑い、交換しましたが症状はかわりませんでした。ここでも教訓を踏まえて確認を行えばすぐに原因特定できたとおもいます。都合3枚の基板で、ハンダ忘れ2件、イモはんだ2件、ハンダショート1件とハンダミスのオンパレードでした。やれやれ。なんとか4枚の基板の動作確認が完了しました。

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ヒートシンク加工

ヒートシンクには、上記で確認した基板と温度補償用のトランジスタモジュールおよび終段のトランジスタを取り付けます。すでに加工図は作成済みですが、実装完了した基板を使って図面どおりに取り付けた場合に不具合が起きないか、念のため確認を行います。方法はケースを仮り組みして、ヒートシンクに加工図を貼り付けて所定の位置に基板を置いて各部のクリアランスを確認します。まずはケースを仮り組みします。

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設計編で一度組み立てていますのでわけありません。次にヒートシンク加工図を印刷します。

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加工図は、左用と右用の2種類です。それを外形に沿って切り抜きます。

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続いて、切り抜いた加工図をヒートシンクに貼り付けます。

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そこへ、実装完了した基板を取り付けネジの位置を合わせてテープで仮固定しました。

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フロントに取り付けたハンドルと、信号入力用の2極の端子台の位置が近いですが、問題はなさそうです。念のため電源基板も置いていました。

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設計時の想定よりも、かなりすっきりした印象です。配線の作業性も悪くはなさそうです。反対側のヒートシンクの確認は、全てミラー対称なので省略しました。作成済みのヒートシンク加工図は問題ない事が確認できました。次回はヒートシンクの加工を行います。

 

つづく(製作編13)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編11)

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製作編11

実装が完了したアンプ基板4枚の通電確認を行います。

回路図修正

通電確認に備えて回路図を確認したところ、ミスが見つかりました。ドライバ段の電流値29mAが図中に記載した電圧とつじつまが合いません。つじつまを合わせる為には、ドライバ段の電流値を見直す必要があります。終段のバイアス電流は0.47Aとしているので、終段のベース電圧は0.16Vとなります。従ってドライバのエミッタ電圧は0.76Vとなり、抵抗には23mAの電流が流れます。一方、終段のトランジスタのhfeを220と仮定すると終段Trのベース電流は2.1mAとなり、ドライバ段のバイアス電流値は23mA+2.1mA = 25mAとなります。またちょっとした勘違いで2段目のVceのバランスをとるためのダイオードを1個追加して5個としてしまいました。気づいた時にはすでに基板を改造した後だったので、このままとします。

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理想は4.5個なので、5個でも問題はありません。発振対策の位相補償用のコンデンサの容量を一旦削除しました。調整完了後に追記します。上記を反映した修正回路図は以下のとおりです。

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通電確認準備

電源はユニバーサル電源から供給します。電源の仕様上、ドライバ段の電圧を+/-6.15Vとしました。過電流保護の設定は、+/-15V電源を30mAに、+/-6.15V電源を50mAにセットしました。次に通電時の基板保護のために、半固定抵抗をプリセットします。オフセット調整用VR1、2段目電流調整用VR2、ドライバ段バイアス電流調整用VR3はそれぞれ以下のとおりセットしました。

VR1:センター

VR2:400Ω(調整推定値の2倍)

VR3:1kΩ(調整推定値の1.4倍)

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続いて初段にDUAL JFETモジュールを装着します。6pinディップソケットに向きを間違えずに差し込みます。

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基板準備の最後は、終段温度補償用のトランジスタモジュールを接続します。3本の電線を間違えないように所定の端子台に接続しました。

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次は電源以外の機材の準備をします。現状のアンプ基板は発振対策をしていません。確認用にオシロスコープを準備します。また位相補償用コンデンサの選定のために信号を入力するので信号のソースとして発振器も準備しました。これで通電確認の準備は完了しました。

通電確認

ようやく通電確認開始です。アイキャッチ写真は確認時のものです。4枚の基板の通電確認は思いの他苦労しました。何の手直しなしで確認ができた基板は1枚のみです。他の基板は、ハンダミス、ハンダ忘れとすべて私の作業ミス起因で、原因特定に四苦八苦しました。最初に手直しが必要なかった基板の確認作業を紹介します。電源オンするとオシロスコープに発振波形が現れます。

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この発振は無視して、各部の電流値を調整します。出力のオフセット電圧が大きくずれていない事を確認した上で、VR3でドライバ段の電流調整を行います。厳密な調整は不要なのでユニバーサル電源の電流表示で25mAに調整しました。次はVR2で2段目の電流調整を行います。調整方法は、R12の電源接続されていない端子電圧が約-1.4Vとなるように調整します。続いてVR1で出力オフセット電圧を調整します。上記3つの調整を数回繰り返す事で調整完了です。

発振対策

2段目のトランジスタのベースコレクタ間にまずは10pFを接続してみました。

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この対策により、発振はとまりました。この状態で正弦波を入力して出力をモニタします。周波数を1MHzからさらにあげていくと、出力の振幅レベルが大きくなり、約3.6MHzでピークとなりその後レベルが下がりました。一旦電源をオフして、位相補償コンデンサを22pFに付け替えました。同様の確認を行ったところ、超広域のピークはなくなり素直な特性となりました。

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上が1MHz時の出力波形で、下が3.6MHz時です。これで1枚の基板の動作確認は完了です。次の通電に備えてVR3を回してドライバの電流値を下げておきます。次回は苦労した残り3枚の通電確認を紹介します。

 

つづく(製作編12)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編10)

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製作編10

終段バイアス回路用のトランジスタモジュールの作成をします。

アンプ基板完成

前回の記事でアンプ基板の実装完了かとおもいましたが、帰還抵抗の実装を忘れていました。20KΩの抵抗を初段逆相入力とドライバ出力間に接続します。ここまでハンダ面に被覆電線を使用せずに実装してきたので、なんとか使わずに済ましたいところです。ハンダ面をじっと眺めて方針を決めました。

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右の基板が帰還抵抗実装したものです。6ピンソケットの右側に20kΩを実装しました。部品面はこんな感じです。

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同様に右側が帰還抵抗実装済みの基板です。ハンダ面に1本も被覆電線を使用せずに実装完了しました。この基板はスピーカーの駆動はできませんが、20dBのDCアンプとして動作可能です。

便利ツール

今回使用した東芝のセカンドソースのUTC製の2SC1815Lと2SA1015Lはオリジナルに比べて捺印の文字が小さく裸眼での識別は私にはできませんでした。アマゾンのページを検索したところLEDライト付きのクレジットカードサイズのポケットルーペを見つけました。1,000でお釣りがくる値段なので試しに買ってみました。

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大きなエリアはx3で、右下の小さなエリアx6となっています。本体左にプッシュボタンがあり、押している間LEDランプが点灯します。さっそく2SC1815Lの捺印確認を行ったところ、x6エリアを使うと快適に視認する事ができました。こんな事ならもっと早く買えばよかったと思いました。

トランジスタモジュール製作

終段の温度補償をする為に、バイアス設定用の定電圧回路のトランジスタをモジュール化して、終段のトランジスタ用のヒートシンクに取り付けます。トランジスタモジュールの構造は、現行機と同じにします。トランジスタ取り付け用の基板を切り出します。切り出しはユニバーサル基板の穴3列を使える幅として、一番端のセンターの穴を固定用にφ3.2まで広げます。穴はドリルの刃を使って手動で穴径を広げました。

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上記基板を途中でカットし、モジュール2個分の基板としました。

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ヒートシンクへの取り付けは、M4のナットと厚さ調整用の平ワッシャを基板とヒートシンク間に挟んでM3のねじで固定します。平ワッシャとトランジスタの干渉を避ける為に、取り付け穴に合わせて平ワッシャを仮固定して、トランジスタの取り付け位置を決めました。

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上記写真のトランジスタの捺印面が放熱シートを介してヒートシンク接触します。使用したトランジスタは、ペア選別漏れしたものを選定しました。

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表中の水色の網掛けのトランジスタです。次は配線用の電線を準備します。配線は3本なので、赤黒の平行電線と白の平行電線をばらして、3色の被覆電線を用意しました。ばらけないように三つ編みします。

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三つ編みが終わったら両端をインシュロックで固定し、基板の端子台に接続する側の端末処理を行いました。

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基板モジュール側も芯線がばらけない様に先端のみをハンダして、基板に差し込みました。接続は、コレクタを赤、ベースを白、エミッタを黒としています。

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これでトランジスタモジュール完成です。同様に残り3セットつくる必要がありますが、この作業は地味に大変で気が滅入ります。それでも気合いを入れて4セット完成させました。

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各セットで電線長が異なるのはご愛敬です。問題があれば後で合わせたいとおもいます。次回は実装完了した基板に作成したトランジスタモジュールを接続してアンプ基板の通電確認を行います。

 

つづく(製作編11)

Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編9)

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製作編9

アンプ回路ドライバ段を実装します。

定数変更

前回の記事で抵抗の在庫の関係で、終段のバイアス設定用の定電圧回路の定数を変更しました。修正済みの回路図は以下のとおりです。

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ドライバ段実装の前に定数変更を行った終段の温度補償回路を兼ねる定電圧回路を整理しておきます。回路図は以下のとおりです。

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今回の回路では、定電圧回路を流れる電流は5mAをセンターとして入力信号に応じて増減します。電流が変化しても両端電圧は常に一定となる必要があります。その仕組みを簡単にまとめます。トランジスタのVbeは約0.6Vで一定です。従ってR1の電流I1は0.6/R1となります。R2を流れるI2はI1+Ibとなりますが、Ibは無視できるため、I2=I1となります。従って定電圧回路の電圧は0.6 + R2 x I2 = 0.6 + 0.6 x R2/R1 = 0.6(1 + R2/R1)と算出できます。簡単まとめると、定電圧回路を流れる電流がいくらであっても回路の両端電圧が0.6x(1+R2/R1)になるようにトランジスタが電流を流してくれる回路と言えます。設計上の注意点は、このトランジスタに印加される電圧は小さい為、Vce特性を確認しておく必要があります。

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グラフはUTC_2SC1815Lの仕様書の抜粋です。このグラフからVceは2V以上あれば動作は問題なさそうです。もう1点は、終段の熱暴走の温度補償機能です。トランジスタは一般的に温度があがるとVbeの電圧0.6Vが小さくなります。ドライバ段のベース間に一定の電圧を印加した状態で、温度上昇すると終段とドライバ段のVce値が小さくなりベース電流が増加していきます。それに伴いコレクタ電流も増加し、トランジスタの温度がさらに上昇します。これが熱暴走です。バイアス用の定電圧回路電圧0.6(1+R2/R1)も温度により変化します。係数0.6はトランジスタのVbeなので、温度上昇に伴いこの係数が小さくなります。全トランジスタのVceが温度に対して同様に変化すると仮定すると、1+R2/R1を4以上に選定すれば、この回路がドライバ段と終段のVbeの変化を吸収して熱暴走を防ぐ事ができます。今回の定数変更で安全率が減ってしまいましたが、4以上をキープしているので温度補償動作は期待できます。それでは本題のドライバ段の実装に入ります。

ドライバ段実装

大物部品は、ドライバ段電源供給用の3極の端子台とドライバ用トランジスタおよび出力用の3極の端子台です。初めにコンプリメンタリペア表からドライバに使用するトランジスタ4ペアを選択しました。

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特に理由はありませんが、hfeの小さなものから使用します。続いて大物部品を仮置きしてみました。

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基板の空きスペースに余裕があるので楽に配置できました。部品を実装していきます。上記の部品以外に、電源用のパスコンとドライバのエミッタ抵抗を取り付けました。

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残りドライバへの電源配線で実装完了です。

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4枚の基板に対して平行して同じ作業を行ってきましたが、少々作業に飽き気味となってきています。

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こうやって基板を並べてみると壮観で実装の苦労が報われた気がします。次回は、終段バイアス回路のトランジスタモジュール(基板)を作成します。

 

つづく(製作編10)