無帰還広帯域真空管アンプ(構想編1)

f:id:torusanada98:20201118075142j:plain

構想編1

期待通りの性能を実現する設計できるかわかりませんが、無帰還広帯域真空管アンプの構想をします。

無帰還アンプ

アンプを簡単に広帯域化するには、アンプの裸利得を稼ぎ、帰還をかける事で広帯域化できます。私が最初に製作したEL34ppA級パワーアンプも当初は帰還をかけていました。完成後、しばらくしてせっかくの真空管アンプなので無帰還の音を聴いてみたくて、帰還を試しに外してみました。帰還をかけていた時の音は緻密な感じがしましたが、帰還を外すと薄いベールをつき破ったかのようにはつらつと音楽が鳴りました。それ以降は一部を除き差動&プッシュプル構成のA級無帰還真空管アンプをつくり続けています。

現行High-ch用アンプ

初代のHgih-ch用アンプは初段12AX7の差動方式で、終段はEL34のプッシュプル構成でした。回路図は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201118075213p:plain

このアンプを広帯域化するために真空管を選定し直して製作したものが現行のHigh-ch用アンプです。初段は12AY7に、終段を6N6Pに変更しています。回路図は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201118075231p:plain

両アンプの周波数特性は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201118075254p:plain

現行アンプが完成し、システムに組み込んで音出しした時に予想以上の変化に驚きました。この驚きを再びという事で改めて無帰還広帯域真空管アンプの設計検討を行います。

現行アンプ周波数特性

現行アンプの周波数特性を決めているパラメータは、初段の出力インピーダンスと終段の入力部容量によるポールが支配的でした。簡単にモデル化してみます。

f:id:torusanada98:20201119072359p:plain

モデルの初段の出力インピーダンスは、初段の負荷抵抗RLと初段真空管のrpと終段の入力抵抗の並列接続Roと考えられます。前提条件は、初段は差動構成としている事で真空管のカソードが仮想接地されているとしています。ポールを決定する容量は、終段の入力容量Cgと終段のミラー容量Cgp x (A - 1)です。Cgpは終段のグリッドとプレート間の容量で、このCgpにかかる電圧は終段の入力電圧のA-1倍となるため、チャージ電流もA-1倍になります。この結果初段出力から見た容量はCgp x (A-1)となります。ポールを決める容量Ciは2つのコンデンサの並列となるため、Cg + Cgp x (A-1)となります。従って、この部分のカットオフ周波数は以下のとおりとなります。

fc = 1/(2π x Ci x Ro)

Ci = Cg + Cgp x (A-1)

Ro = RL || rp || Rin (||は並列接続を意味する)

現行のHigh-ch用アンプ(本記事のアイキャッチ写真)は真空管の選定し直しによって、Cg、Cgpとrpを小さくして初代High-ch用アンプに比べてfcを高くしました。今回は、初段をSRPP(Shunt Regulated Push Pull)構成として、等価RLをさらに下げて広帯域化ができるか検討をしてみます。

SRPP回路

SRPP回路は、負荷抵抗RLを真空管で置き換えた構成です。

f:id:torusanada98:20201118075340p:plain

効果としては、RLから置き換えた真空管の両端間のインピーダンスをRLに比べて下げる事ができ、その結果初段の出力インピーダンスも下げる事ができます。引き替えに必要な真空管が増え、電源電圧の見直しも必要となります。次回はSRPP回路による具体的な効果を推定し、効果が期待できる結果となったら、回路設計を進めていきます。

 

つづく(構想編2)

ユニットメンテナンス(番外編41)

f:id:torusanada98:20201103071655j:plain

番外編41

引き続きボリューム付きのBTLアダプタのメンテナンスを行います。

電源交換

電源基板の動作確認が終わったので、ユニットの電源を交換します。使用したユニバーサル基板は異なるものの、取り付け穴の位置が同じで簡単に取り付ける事ができました。写真は電源配線と電源ランプ配線を行ったところです。

f:id:torusanada98:20201103071720j:plain

この電源基板は、電源ランプの電流をGNDラインに流さない為に電源ランプの電源を+12V/-12Vからとっています。また左右チャンネルの電源の状態を揃えるために、両チャンネル用の電源にランプ用出力を設けています。どの程度影響があるかわかりませんが、未使用の電源ランプ用の端子台に直接LEDを接続しました。

f:id:torusanada98:20201103071750j:plain

写真左上の赤のLEDが追加したものです。基板交換後のユニット内部は以下のとおです。

f:id:torusanada98:20201103071815j:plain

再調整

基板交換後の電源電圧を念の為確認します。

f:id:torusanada98:20201103071841p:plain

電源電圧が変わったので、アンプの再調整を行います。参考にアンプ回路を再掲載して、回路の説明を簡単に行います。

f:id:torusanada98:20201103071904p:plain

入力はデュアルFET差動構成で、カスコードブートストラップ回路により初段の高域特性の改善を図っています。2段目は単純な差動アンプで、終段のバイアス回路をトランジスタで構成しています。終段はコンプリメンタリトランジスタのプッシュプル構成です。調整用のボリュームは3個あり、初段のボリュームは出力オフセット調整用で2段目のトランジスタのエミッタに接続されているものは、2段目のバイアス電流設定用です。2段目のコレクタ部のボリュームは終段のバイアス電流調整用です。3つのボリュームの調整は独立ではなく、他の調整結果に影響を与えるため順番に何回か調整をして追い込みます。正相アンプと反転アンプはシリーズに接続されているため、正相アンプ側から調整を行います。前の電源基板に接続された状態で調整されているので、まずは現状の下記ポイントの電圧の確認を行いました。

f:id:torusanada98:20201103071935p:plain

Lchの正相アンプの確認結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201103072011p:plain

2段目差動アンプの電流バランスがやや崩れていて、終段のバイアス電流も若干小さくなっていました。VR2を調整して2段目の差動アンプの電流バランスを取り直し、VR3で終段のバイアス電流を調整します。出力オフセットが発生するので、VR1で調整しました。上記の調整を数回繰り返して調整完了です。調整後の各部電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201103072058p:plain

続いて正相アンプの後段に接続された反転アンプの調整を行います。先ほどと同様に調整前の各部電圧を確認しました。

f:id:torusanada98:20201103072126p:plain

正相アンプと同様に2段目の差動アンプの電流バランスが崩れていて、出力オフセット電圧の調整も必要です。上記と同様の手順で調整を行いました。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201103072147p:plain

いい感じに調整できたとおもおいます。Rchも同様の手順で調整を行いました。調整後の各部電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201103072204p:plain

全アンプともに、いい感じに調整ができました。

動作確認

動作確認を兼ねて周波数特性の測定を行います。発振器から2Vppの正弦波を入力して出力波形を観測しました。

f:id:torusanada98:20201103072233j:plain

測定範囲は10Hz~1MHzです。2つのボリューム位置で測定を行いましたが結果に差がなかったので、結果の掲載はボリュームMAX状態のみとします。写真はHotとColdの1KHz波形の観測結果です。

f:id:torusanada98:20201103072251j:plain

f:id:torusanada98:20201103072259j:plain

周波数特性の測定結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201103072313p:plain

1MHzまでフラットなので、結果としては面白味はありませんが、初期の目的どおり動作確認ができました。3回に渡って製作済みのユニットのメンテナンスを行いましたが、自作ユニットは手軽にメンテナンスと修理が行える事がメリットと改めておもいました。

 

おわり(番外編41)

ユニットメンテナンス(番外編40)

f:id:torusanada98:20201028072423j:plain

番外編40

前回に続き、製作したユニットのメンテナンスを行います。今回の対象ユニットはボリューム付きのBTLアダプタです。

ボリューム付きBTLアダプタ

オーディオ製作再開後、わりと初期に製作したもので、アンバランス信号をバランス変換するユニットです。(本記事のアイキャッチ写真参照)そのままパワーアンプに接続できるように出力段にボリュームを入れています。

f:id:torusanada98:20201028072447j:plain

途中で何度か設計変更を行ってきていて、現状のブロック図は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201028072639p:plain

あまり良い構成ではありませんが、全アンプをディスクリート構成としたため実装スペースの都合で妥協したブロック構成となっています。電源もトランジスタを使ったリップルフィルタタイプですが完全ディスクリート構成です。

f:id:torusanada98:20201028072512j:plain

症状

最近あまり出番がありませんが、製作したユニットの評価時に発振器のアンバランス出力をバランス信号変換するために使っています。何れはカセットデッキを復活させて、昔のライブラリを今のシステムで聴くために使用したいと考えています。その評価時に気づきましたがRchが動作していませんでした。動作するLchも、ボリュームをMAXにすると発振します。この現象は完成直後に気づいていましたが、実用上問題がなかったので放置してきました。検討前に回路図を掲載します。

f:id:torusanada98:20201028072549p:plain

f:id:torusanada98:20201028072603p:plain

初めにRchの動作不良の原因を特定します。電源オンの状態で各部の電圧を確認したところ、すぐに原因がわかりました。-12V電源出力が出ていません。さらに電源回路を確認したところ、トランジスタのベースの基準電圧が出ていませんでした。基準電圧生成用のツェナーダイオード自体の故障かまたは定電流ダイオードの故障の可能性が高いです。さてどうしたものか・・・

検討

初めに電源の故障の原因がアンプ側にない事を確認します。Rchのアンプの電源を問題のないLch用の電源につなぎ変えて動作確認をしました。

f:id:torusanada98:20201028072706j:plain

Rchアンプには問題ない事が確認できました。但しLchと同様にボリュームをMAXにすると発振します。

発振対策

最初に発振対策を行います。発振波形は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201028072730j:plain

振幅は1.2Vで約22MHzで発振していました。ボリュームは2KΩ品を使っていますが、内部アンプ出力(ボリューム入力)とボリューム出力間の抵抗値が約300Ω以下で発振するようです。消極的な対策ですが、アンプ出力に390Ωの抵抗を入れてボリュームMAX時も出力を少し分圧する事で対策をとる事にしました。

f:id:torusanada98:20201028072756p:plain

抵抗はボリュームの端子へ取り付けました。

f:id:torusanada98:20201028072817j:plain

この対策により、フルボリューム時に約1.5dB程度信号が減衰しますが目をつむる事にします。

電源修理

リップルフィルタ方式の電源を採用したのは、アンプの消費電流が常に一定(A級バランス動作)の場合、電源を能動動作(安定化)させない方が良いと考えた為です。しかしその後の検討で、このような構成の場合でも電源を安定化させた方が私の好みの音に近い事を確認しました。その電源が三端子レギュレータ方式でもです。ジャンクボックスを確認したところ、三端子レギュレータを使った左右独立+/-12V電源基板を見つけました。

f:id:torusanada98:20201028072841j:plain

BTLアダプタは今後もあまり出番がない事を考慮して、この基板に載せ替える事にします。搭載前に単体の動作確認を行います。

f:id:torusanada98:20201028072906j:plain

三端子レギュレータはJRC製のものが搭載せれていますが、マイナス電源の出力に100uF程度のコンデンサを接続しないと発振します。電源単体でも安定動作をさせる為に100u/16V品をハンダ面に追加しました。無事単体で正常動作する事が確認できました。次回はこの電源をユニットに組み込み調整・動作確認・評価を行います。

 

ユニットメンテナンス(番外編39)

f:id:torusanada98:20201026072624j:plain

番外編39

今まで製作したユニットのメンテナンスを行います。

DACユニット

f:id:torusanada98:20201026072649j:plain

完成したばかりのユニットなので、メンテナンスというよりも後日譚です。完成した翌週末にのんびりCDを聴いていました。1枚目を聴き終わり2枚目の再生を始めた直後にPLLのロックが外れ始め、その間隔がみるみる縮まり、1分もしないうちに断末魔に襲われたような音を発して再生が途絶えてしまいました。発せられた音はどうやらミュートリレーが昔のブザーの様な動作をした為の様です。ロック外れという事でDAI基板になんらかのトラブルが発生したと考えられますが、あまりのショックでその日は何もしませんでした。翌日、トップカバーを開けて内部を確認しました。

f:id:torusanada98:20201026072715j:plain

見た目上の異常はありません。電源オンしてCDを再生させましたが、ロックしません。DAI基板の出力信号をオシロスコープでモニタしましたが、正しく出力が出ていないようです。念のため、DAI基板の入力信号をモニタしたところ、あれれ?入力がない??リアパネルのRCAピンジャックをモニタしたところオーディオシリアル信号が確認できました。そうすると、オーディオシリアル信号の配線か、パルストランスが乗った絶縁基板が原因と考えられます。絶縁基板の入力端子台を確認したところ、シールド線の芯線が正しく挿入されていませんでした。芯線を正しく挿入して端子台を締め直したところ、不具合は直りました。典型的な初期不良です。ほかの配線も見直してトップカバーを取り付けて修理完了しました。やれやれな週末となってしまいました。

12chアッテネータ

f:id:torusanada98:20201026072624j:plain

動作上は全く問題ありませんが、時々アッテネーションのマイナス表示が欠落します。完成直後から時々起こっていましたが、放置していました。

f:id:torusanada98:20201026072755j:plain

ミュートボタン以外の次のアクションで復帰します。ミュート処理以外は、7セグ表示ユニットに表示内容を再送信している為と考えられます。表示ユニットは異なりますが、DACユニットの表示でも同様にコマンド受信に失敗する不具合があり、コマンド発行後にwaitを入れて対策しました。これと同様な事が発生していると推定して同様の対策を入れる事にしました。マイナス表示は、他の表示とは異なり、Individual Segment Control Command 0x7Cを使用しています。このコマンドを送信後に具体的な表示内容(マイナスに相当するセグメントのみ点灯させる)を送信しています。とりあえずここに1msのwaitを入れてみました。

f:id:torusanada98:20201026072819p:plain

修正したソース内にデバッグ用のシリアルモニタ出力が残っている点を見つけました。せっかくなので、不要なデバッグ処理なのでコメントアウトしました。

f:id:torusanada98:20201026072844p:plain

修正ソースをコンパイルして、正しくバイナリが生成される事を確認しました。実機のマイコンにバイナリを転送します。

f:id:torusanada98:20201026072908j:plain

写真センターがマイコンボードですが、フロントパネル側にUSBポートがあります。フロントパネルとのクリアランスが小さく、このままではUSBケーブルが接続できませんでした。仕方がないので、一旦フロントパネルを外して少しずらし、その隙間からUSBケーブルを接続しました。

f:id:torusanada98:20201026072935j:plain

これで無事にバイナリの書き込みができました。この状態でキー操作をしてみましたが、問題ありませんでした。一旦電源オフしてフロントパネルを元どおりに取り付けて改めてキー操作を行いました。問題なかったので、これで当面様子を見たいとおもいます。次回はボリューム付きのBTLアダプタの修理を行います。

 

つづく(番外編40)

DACユニットの製作(まとめ編)

f:id:torusanada98:20201018091035j:plain

まとめ編

DACユニットの製作が終わったのでまとめを行います。

製作まとめ概要

ブレッドボード製作の構想開始が今年の4月なので、DACユニットの完成まで半年以上かかったことになります。正直なところブレッドボード版が完成して、DACユニットの製作に入った時点で少し息切れをしてしまい、ケースの設計でミスを連発させてしまいました。その都度対応をとってなんとか完成しましたが、都度対応した内容を図面に反映してまとめとしたいとおもいます。

ケースの選定

タカチ電気工業のOS99-32-33SSを選定しました。結局3Wayバランスチャンネルデバイダのケースの高さ違い品です。

f:id:torusanada98:20201018091103p:plain

リアパネル設計

取り付ける部品はデジタル入力用のRCAピンジャック、バランス出力用のXLRパネルコネクタ2個、ヒューズホルダ、ACインレットです。内部の基板配置を考慮して取り付け位置を決めました。

f:id:torusanada98:20201018091140p:plain

リアパネルの完成状態は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201018091210j:plain

フロントパネル設計

今回のケース製作でキーとなった点がLCDパネルの取り付けです。紆余曲折ありましたが、アルミパネルに皿ネジでスタッドを取り付けて、そこにLCDパネルを固定しました。皿ネジは銀の丸シール(マイタック8mm)で隠して、その上にスモークのアクリル板を被せました。アクリル板の取り付けは、当初四角で飾りネジで固定する予定ですが、ケースのフレームと干渉したために四角のネジの採用を止めて、パネルに取り付ける4個のスイッチでアクリル板を固定しました。下記はフロントパネルとその上に被せたアクリル板の加工図です。

f:id:torusanada98:20201018091240p:plain

f:id:torusanada98:20201018091252p:plain

アクリル板加工

使用したアクリル板は、アクリルサンデーEXのEX530 t=2mm(スモーク透明、全光線透過率19%)です。アクリル板の加工は想いの他容易でした。直線カットは樹脂用のカッターで、丸穴はアクリル用のビットを使ってドリルで、また大きな穴はホールソーを使用しました。

f:id:torusanada98:20201018091322j:plain

f:id:torusanada98:20201018091333j:plain

完成したフロントパネルは以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201018091400j:plain

ボトムシャーシ設計

ボトムシャーシの加工図は、ブレッドボードの加工図を修正して作成しました。不要な基板を取り外し、取り付け部品間の間隔を見直し、一部基板の配置も変更してケースボトムシャーシの有効寸法内に収めました。選定したケースはフレーム構造のため、ボトムシャーシの4辺がフレームで隠れます。隠れる部分の除いた寸法が有効寸法となります。組立時に干渉が発生してトランスの位置を変更しました。下記はトランスの位置変更を反映したボトムシャーシの加工図です。

f:id:torusanada98:20201018091425p:plain

写真は穴あけが完了したボトムシャーシです。

f:id:torusanada98:20201018091449j:plain

上記であけた穴にスタッドをたてて基板を固定しました。

f:id:torusanada98:20201018091511j:plain

DACユニット組立

上で組み立てたボトムシャーシ、フロントパネル、リアパネルをケースのフレームに取り付けて配線を行いました。下記が組立完了後の各部の写真です。

f:id:torusanada98:20201018091545j:plain

f:id:torusanada98:20201018091605j:plain

f:id:torusanada98:20201018091624j:plain

f:id:torusanada98:20201018091644j:plain

f:id:torusanada98:20201018091708j:plain

まとめのまとめ

DACユニットが完成して、1000Mバランスマルチチャンネルシステムは以下のとおりとなりました。

f:id:torusanada98:20201018091745p:plain

システム中の既製品は、CDトランスポートとして使用しているCDプレーヤーのみとなりました。CDトランスポートの自作は違った意味でハードルが高いので、システムの自作化はこれで一段落した事になります。今回採用したBBのPCM1792Aは、マルチビットとΔΣ変換のハイブリッドDACで、製作の中でその実力を理解できた事も収穫でした。当面、完成したシステムでのんびり音楽を楽しみたいとおもいます。半年以上の長い間、おつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)

DACユニットの製作(製作編6)

f:id:torusanada98:20201014072820j:plain

製作編6

DACユニットの配線が終わったので動作確認を行い、さらに最終の音聴きをします。

通電

配線は終わったものの、通電に躊躇しています。配線の本数が多く、接続間違いによりこの段階で基板を壊してしまったら代替え基板の金銭的ダメージよりも精神的なダメージが計り知れません。特にデジットキットを流用した基板の端子はピンヘッダタイプなので、逆向きにも、ピンズレしてもコネクタが接続できてしまいます。唯一、QIケーブルの茶色を1ピンとする事としたので、接続確認は容易です。但し2ピンケーブルは赤と黒なので改めて説明書を見直しながら接続確認を行いました。特に問題はなかったので意を決して電源オンしました。LCDパネルの表示は問題なく遷移しました。一旦電源オフして呼吸を整えてから再度電源オンして、出力オフセット電圧測定を行いました。4出力ともに1mV以下で問題ありませんでした。

動作確認

さっそく信号を入力して出力波形を確認します。

f:id:torusanada98:20201014072849j:plain

オシロスコープのプローブをLch_HotとColdに接続して、Lch 1KHz 0dBの正弦波を再生しました。出力波形は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201014072917j:plain

仕様どおりで問題ありません。再生トラックを変えてRch 1KHz 0dBの正弦波を再生させました。仕様どおり出力でませんでした。次に再生を止めて無音時のディザ波形を観測しました。

f:id:torusanada98:20201014072940j:plain

f:id:torusanada98:20201014072948j:plain

上が128fs時で下が64fs時ですがどちらも問題ありませんでした。最後に無音時のノイズスペクトラムを観測します。

f:id:torusanada98:20201014073008j:plain

f:id:torusanada98:20201014073016j:plain

同様に上が128fs時、下が64fs時ですがブレッドボード確認時と変わりありませんでした。最後にATTを機能させて波高値を確認しましたが問題ありませんでした。同様の確認をRchも行いましたが問題ありませんでした。あれほど配線間違いを心配していましたが、動作確認は完了しました。

配線見直し

DAI出力とDAC入力間の接続は、オリジナルのQAケーブルを使っているので線長は30cmです。5本の電線を編んで使用していますが長すぎます。特性上で問題は起こっていませんが、見た目の改善の為に短くします。使用中の電線をカットして長さを調整して再接続しました。

f:id:torusanada98:20201017094228j:plain

ハンダ部は熱収縮チューブを被せて保護しました。割と手間がかかる事と、万が一に備えて1本のみを改造して動作確認を行いました。先ほどと同様に出力をオシロでモニタして正弦波を再生しましたが、あらら、ブレッドボード製作時にシールド線を使ったときと同様に波形がずっこけています。どうやら電線の容量だけではなく微妙な特性が影響を与えているようです。見栄えだけの問題だったので、ここは大人しくオリジナルのQIケーブルを編みなおして使用する事にしました。

音聴き

最初にヘッドフォンアンプに接続して音を聴いてみました。特段問題はなかったので次は1000Mマルチアンプシステムに組み込んで聴いています。セットアップは写真のとおりです。

f:id:torusanada98:20201014073043j:plain

下から今回製作したDACユニット、その上がバランス3wayチャンネルデバイダ、さらにその上が12chアッテネータです。ここで初めて気づきましたが、電源SWの位置がチャンネルデバイダと微妙に異なっています。図面を確認したところ、DACユニットの電源SWの方が7mm内側となっていました。いまさらどうにもならないので、次回以降の製作では注意したいとおもいます。音の印象は「DACユニットの検討(製作編34)」を参照いただければとおもいますが、ウーハーchの完全DC化と、8倍オーバーサンプリング前提の比較的軽いアンチエイリアスフィルターの効果が感じられる再生音です。正直、いい感じに仕上がったとおもいます。次回はDACユニットの製作のまとめを行います。

 

つづく(まとめ編)

DACユニットの製作(製作編5)

f:id:torusanada98:20201013072428j:plain

製作編5

LCDパネルの表示を含むマイコンの動作確認を行い、ボトムシャーシへの部品の取り付けおよび配線を進めます。

マイコンの動作確認

前回の記事でモーメンタリSWの配線まで終わっていたので、残りのLCDパネルの配線を行いました。まだDACユニットの電源の実装が終わっていないため、マイコンへの電源供給はパソコンのUSB経由で行いました。USBを接続すると、表示がスタートします。

f:id:torusanada98:20201013072451j:plain

モーメンタリSWの動作も良好で、ブレッドボード時のタクトスイッチよりもキー受付の感触がいい感じがしました。一通り動作確認を行なったところで一旦フレームを取り外してボトムシャーシ状態にして組立を継続します。マイコンへの電源供給ラインを見直します。ブレッドボード時の電線をそのまま使うと配線が弛んでしまいます。

f:id:torusanada98:20201013072513j:plain

適当な長さでカットして電源の端子台に接続しました。

f:id:torusanada98:20201013072540j:plain

これでマイコン基板の取り付けは完了です。

電源トランス取り付け

最後に電源用のトロイダルトランスを2個取り付けます。初めにデジタル/アナログ電源用のトランスを取り付けます。取り付けの穴位置に合わせてボトムシャーシに置いたところ、マイコン電源用のプラグの差し込み時に干渉してしまう事がわかりました。

f:id:torusanada98:20201013072602j:plain

仕方がないので5mmずらして追加で取り付け穴を開けました。

f:id:torusanada98:20201013072625j:plain

その横のトランスとの間隔は10mmが5mmとなりましたが、トランスを取り付けた状態でマイコンの電源プラグを取り外す事ができるようになりました。残りのトランスも取り付けます。

f:id:torusanada98:20201013072650j:plain

当初よりもトランスの間隔が詰まってしまいましたが、問題なく取り付けができました。

電源配線

電源配線を行うためにフレームを被せます。

f:id:torusanada98:20201013072712j:plain

ブレッドボードでは、トランスの電線を切らずに配線を行っていたため、内部の電線がスパゲッティー状態です。初めに120V一次巻き線を短くカットして端末キャップを取り付けました。

f:id:torusanada98:20201013072736j:plain

続いてトランスの二次配線を適切な長さにカットして電源基板に接続しました。

f:id:torusanada98:20201013072811j:plain

次はトランスの一次配線を行います。配線するためににリアパネルをフレームに取り付けました。ACインレット、ヒューズホルダ、電源SW間の配線を行いました。

f:id:torusanada98:20201013072834j:plain

電源SWへの配線は、端子間が近い為、電線接続後に熱収縮チューブで接触の保護を行いました。

f:id:torusanada98:20201013072857j:plain

これで電源配線は完了です。

配線続き

ここまでくると、さすがに配線作業に飽きてきました。気を取り直して、一旦外したフロントパネル配線(モーメンタリSWとLCDパネル)を改めて行いました。

f:id:torusanada98:20201013072919j:plain

f:id:torusanada98:20201013072938j:plain

次は信号の出力配線を行います。リアパネル取り付け前に、2芯シールド線を適当な長さにカットして、XLRパネルコネクタにハンダしておきました。

f:id:torusanada98:20201013073002j:plain

改めて長さを調整して、端子台接続用に端末処理を行います。

f:id:torusanada98:20201013073037j:plain

さらに残りの配線(電源ランプ、基板間、基板電源)を行って配線自体は完了です。電源の一次配線とフロントパネル配線をインシュロックで束線して配線作業は完了しました。完了時の状態は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20201013073100j:plain

束線はしたものの、まだ線長が長い部分があり、すっきりしていません。一旦この状態で動作確認を行い、その後に検討したいとおもいます。次回は最終の動作確認と仕上げを行います。

 

つづく(製作編6)