無帰還広帯域真空管アンプ(製作編32)

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製作編32

L-chのゲインが低い原因の検討を行います。

症状のおさらい

HotおよびColdともに1kHz/200mVppの正弦波のバランス信号をアンプに入力して確認をおこないました。下記はR-chとL-chのHotの入試出力波形のモニタ結果です。

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R-chは出力が1.96Vppありますが、L-chは1.46Vppしか出ていません。この原因をしらべます。

原因調査

原因調査を行いますが、改めてアンプの回路図を掲載します。

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初めに原因が初段側か終段側にあるのか切り分けを行います。この為に終段の入力波形をモニタしてみました。

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写真上がHot側、下がCold側の終段入力波形です。Hot側は9Vppの信号が入力されていますが、Cold側は1Vpp信号入力となっていました。L-chの出力レベルが小さい原因は初段Cold側にありそうです。次に初段SRPP回路Rk(2kΩ)の両端電圧を確認してSRPP回路電流を確認してみます。以下が結果です。

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カーソルの読み値から4Vの電圧がかかっています。何かおかしいです。同様にHot側のRk両端波形もモニタしてみました。

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振幅レベルは大きいですが、両波形間の電圧差は4Vありました。設計上の初段のバイアス電流はHot/Coldともに1mAなのでRk両端電圧は2Vとなるはずです。仕方がないのでマルチメータでRkの両端電圧を測定してみました。結果は以下のとおりです。

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上記は入力電圧を0mV時の結果ですが、ほぼ設計どおりの電圧となっていました。10V/divのレンジで2Vの誤差は大きいですが、安物のオシロスコープなのでこの程度のものでしょうか?念のため入力信号を0Vにして同様の波形観測も行ってみました。

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ほぼ同様の結果でした。上記のマルチメータの測定結果から初段のバイアス電流は設計値どおりとなっていると言えます。ここまで確認した時点で、私の中のチェンジニア魂が沸き上がってきました。L-ch初段の真空管2本を交換してみたい!

12AY7調達

この時点では、L-chとR-chの真空管の交換して確認すべきだったと後で反省しましたが、早々に完成させたい気持ちにとらわれてしまい、原因の特定を後回しにしてにネット検索を行っていました。アマゾンは、3,589円で送料無料でした。前回購入時よりも高くなっている感じがしたので、ほかも検索しました。私は今まで購入履歴はありませんが、アムトランスで2,200円で送料600円で販売されているのを見つけました。会員登録で100ポイントもらえるので、こちらから購入すると2本で4,900円で済みます。さっそく会員登録して注文をすませました。

真空管交換

ゴールデンウィーク最終日の注文にもかかわらず、あけ初日の発送となり、週末の作業に間に合いました。

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まずはL-ch初段入力側の真空管を交換しました。

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さっそく200mVppのバランス信号を真空管を交換したL-chに入力して初段Rk(2kΩ)の両端電圧波形をモニタしてみました。

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上がHot側で下がCold側です。全く症状に変化はありませんでした。いやな予感が頭をよぎります。次回はSRPP側の真空管を交換してみます。

 

つづく(製作編33)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編31)

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製作編31

初段の電源電圧の見直しを行って初段の通電確認をやり直します。引き続きアンプの動作確認を行います。

電源設計変更

電源の設計変更を行うに当たり、現行の電源の回路図を再掲載します。

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初段用電源回路は、回路図の一番下のブロックです。電源電圧はR4とR5の分圧比で決まります。このブロックの入力電圧は254Vなので20V程度電圧を上げる事は容易です。現状負荷状態の出力電圧が約170Vなので、これを20V上げて190Vに変更しますが、具体的にはR4を変更して電圧を調整します。抵抗値を算出してみます。

200k / (200k + R4) x 254 = 190

R4 = 67k

抵抗の在庫を確認したところ1/4W品ですが、47KΩと20KΩがありました。変更後の200KΩ抵抗の消費電力が0.18Wなので1/4W品で問題ありません。電源基板を取り外して、設計変更を行います。基板の実装状態は以下のとおりです。

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製作の当初で電源の設計変更を行ったため、基板サイズを変更しました。この為基板の固定は変則的で、写真センターの2本で固定しています。わりと簡単に取り外す事ができました。

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R4を2本の抵抗の直列に変更しましが、幸い簡単に改造する事ができました。

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写真センターの2本の抵抗です。改めて電源基板を取り付けて通電確認を行います。

初段再通電確認

初めに配電用の平ラグへの接続を外して無負荷状態で確認を行います。出力電圧は197Vでした。まずまずな結果ではないでしょうか?改めて修正版の電源回路図を掲載します。

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確認時に外した接続を元に戻して通常負荷状態で改めて出力電圧を確認しました。結果は約190Vです。設計どおりとなっていました。この状態で初段真空管の各端子電圧の確認を行います。結果は以下のとおりです。

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問題としていた初段差動入力用真空管のプレート電圧は、それぞれ約20Vづつ高くなり、最低でも56Vかかっている事が確認できました。確認の中で頻繁に電源オンオフを繰り返しましたが、電源オン直後に数回耐圧保護回路のリレーの動作音が聞こえ、過渡状態で保護回路が正常に働いている事も確認できました。

アンプ動作確認

動作確認は、アンプ出力に8Ωのダミー負荷を接続した状態で正弦波を入力して応答を確認します。写真は以前に作成した8Ωのダミー負荷です。

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入力信号は、発振器出力を先日修理したバランス変換ボリュームユニットに入力してバランス出力に変換して入力します。

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最初にR-chから確認を行います。入力電圧はHot、Coldともに200mVppの1KHz正弦波としました。結果は以下のとおりです。

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写真上がHotの、下がColdの入出力の波形モニタ結果です。どちらも同相同士で比較しているので、入出力間の位相は合っています。入力電圧200mVppに対して、出力はどちらも1.92Vppなのでゲインは19.6dBです。設計上のゲインは以下の表の通りなので、ほぼ設計どおりの動作をしていると考えられます。

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続いてL-chも同様に波形モニタしてみました。結果は以下のとおりです。

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写真上がHotの、下がColdの入出力の波形モニタ結果です。なんだかすごく変です。同相同士の波形をモニタしているにもかかわらずHot波形は入出力間で逆相動作しています。レベルもおかしいです。いろいろ信号を当たってみたところ、出力トランス二次巻き線の中点のGND接続が不良となっている事がわかりました。中点のGND接続をやり直して再度波形のモニタを行いました。結果は以下のとおりです。

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出力電圧がR-chよりも小さく1.46Vppしか出ていません。ゲイン換算で17.3dBです。一難去ってまた一難です。ミスの連発で疲れ切ってしまったので詳細の検討は次回に行います。

 

つづく(製作編32)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編30)

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製作編30

引き続き通電確認を行います。

チョークインプット電源電圧

終段の電源はチョークインプット電源です。チョークインプット電源は、出力電流によって電圧値が変動する事を確認していますが、アンプの電源投入後プレート電流が流れるまでの電圧をモニタしてみました。オシロスコープの掃引速度を下げてスクロール状態にして確認を行います。結果は以下のとおりです。

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電源投入後、約5秒で最大電圧233Vとなり、ヒーターが暖まりプレート電流が流れ始める事で約7秒後から電圧が下がり始め、約14秒後に158Vで安定しました。オシロスコープの設定を確認するため、電源オンを何度も繰り返していたため、ヒーターが暖まっていた事を考えて、5分以上間隔をあけて再度測定しなおしてみました。

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案の定、電圧が安定する時間が約20秒に増えました。終段の6N6Pの最大プレート定格電圧は300Vなので、この特性でも問題ありません。これで終段の通電確認は完了です。

初段通電確認

初段はSRPP回路初採用な事もあり、片チャンネルづつ通電確認を行います。初めにL-chの確認を行います。L-ch用真空管ソケットに12AY7を2本取り付けました。

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購入した12AY7は、electro-harmonix製ですが、個体によって捺印の位置が異なります。真空管アンプの製作を始めた頃は、捺印が正面となるように拘りましたが最近はあまり気にしなくなりました。終段の通電確認と同様に、シャーシ内に触れられるように上下を逆さまに置いて電源オンしました。とりあえず何も起きずにほっとしました。真空管各端子の電圧は以下のとおりです。

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設計以上に、SRPP等価抵抗動作をする真空管の電圧ドロップが大きく、差動入力用真空管のプレート電圧が設計よりも約10V下がってしまっています。下記が設計時の等価抵抗動作する真空管の特性図です。

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等価抵抗値が120KΩで、プレート電流が1mAなので、電圧ドロップが120Vとなるはずですが、この図から108Vとしていました。下記は設計時の初段差動入力真空管のロードラインです。

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プレート電圧が60Vでも、カソード-グリッド電圧が-1Vと入力信号に対して余裕がありませんが、さらに余裕のない状態となっています。初段の電源電圧を見直す必要がありそうです。続いて、R-chの真空管も装着して通電確認を行いました。

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見た目はいい感じですが、初段の負荷電流が増えるため、電源電圧が下がりさらに厳しい状態となりそうです。電源オンして同様に真空管各端子の電圧確認を行いました。端子に触りにくい部分は、耐圧保護回路基板の入力端子の電圧を測定します。差動入力用のプレート電圧をモニタしている黄色の被覆の電線が接続された端子台の電圧が異常な事に気づきました。即座に電源オフして確認したところ、真空管ソケット側の接続のハンダ不良が原因でした。

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写真はわかりやすいように、電線をソケットの端子から引き抜いた状態です。ハンダをやりなおし、通電確認再開です。結果は以下のとおりです。

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予想どおり、負荷電流が増えた事で電源電圧が下がり、差動入力用の真空管のプレート電圧が34Vまで下がっています。尚、L-chはこの状態で測定をやり直す為、網かけしています。続けてこの状態で、L-chの測定をやりなおしました。結果は以下のとおりです。

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この結果から、初段の電圧を20V以上上げる必要がありそうです。ここまできて、設計の見直しとは、とほほ・・・。次回は対応策を検討して対策を行います。

 

つづく(製作編31)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編29)

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製作編29

引き続き通電確認を行います。

耐圧保護回路基板確認

耐圧保護回路基板は、単体で通電確認を行っていたので確認を一番最後にしました。電源オンオフの度に、リレーの動作音がしているので問題ないと思います。確認項目は半固定抵抗をまわして、基準電圧が調整できる事です。

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写真下右側の2極の端子台脇に基板取り付け直前に確認用の端子(リード)を設けました。この端子電圧をモニタしながら写真左側の半固定抵抗を回してみます。マイナスドライバを半固定抵抗に当てると、リレーがカチカチと誤動作します。最初はノイズによる誤動作を疑いましたが、何回も調整を繰り返しているうちに、ドライバを離した状態で、リレーがオフする事が確認できました。基板の単体確認をしていながらこのざまです、やれやれ。この基板へのヒーター配線が大変だった事が頭をよぎりましたが、一旦基板を取り外しました。

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半固定抵抗の周りのハンダを確認したところ、原因がすぐにわかりました。写真は電源接続のラインをドライバでつついた状態です。見事にハンダがはずれて配線が横にずれています。

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ハンダをやり直して、再度基板と取り付けました。3極の端子台に4本の電線を接続しますが、(上の上の写真参照)4本とも黒の被覆電線にしてしまいました。電線を取り外す際に右と中央の端子台に接続する電線にセロテープを使ってタグを付けています。ヒーター配線も無事終わり、基板の再取り付けが完了しました。早々に電源オンして確認を行いリレーの誤動作が改善している事を確認しました。とりあえず、基準電圧は2.6Vにセットしました。

終段通電確認

次は真空管を取り付けて通電確認を行います。通常は初段から確認を行うところですが、初段は何か起こりそうなので、先に終段の確認を行います。ソリッドステートの帰還アンプとは違い、各段を独立して動作させる事ができるので通電確認のハードルが少し下げられます。まずは終段の6N6Pを取り付けました。

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真空管頭頂部(ゲッター部)が汚れていたので、綿棒にアルコールを浸して拭いてみました。

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写真では解りにくいですが、きれいになりました。この部分の通電確認のリスクは小さいと考えて、左右両チャンネル同時に行います。まずは異常事態に対応できるように、シャーシ内部にアクセスできる状態で電源オンしました。ヒーターが暖まると、定電流源回路のLEDが点灯しました。

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ざっと、各部の電圧を確認したところ問題なさそうだったので、一旦電源を切ってバイアスのバランス調整用半固定を調整できるように、上下を反転して正位置に置き直しました。改めて電源オンして、半固定抵抗を調整して終段のバイアス電流バランスをとります。

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最初にR-chから行いました。調整用のシートは、製作編25で作成済みでしたが、シートの左列をチップジャックの色に変更しました。調整結果は以下のとおりです。

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調整回路は設計どおり機能し、正しく調整ができました。調整後のボリューム位置は写真のとおりです。

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黒マジックがセンター位置です。センターを12時とすると約2時の位置となっています。続いてL-chも調整します。赤-緑間の電圧はちゃんととれましたが、赤-白間の電圧が正しくとれません。一旦調整を中断して、シャーシ内を確認します。原因は、中継用のLラグのチップジャック配線のハンダ不良でした。

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写真は、わかりやすくするために電線を端子の穴から引き抜いた状態です。ハンダをやり直して、再度調整を行いました。調整結果は以下のとおりです。

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L-chのボリューム位置はこんな感じです。

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次回も引き続き通電確認を行います。

 

つづく(製作編30)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編28)

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製作編28

終段の配線を行い全配線を完了させます。引き続き真空管を挿さずに通電確認を行います。

出力トランス1次配線

改めてアンプの回路図を掲載します。

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終段の配線の最初は、出力トランスの1次配線です。出力トランスの1次側の電線は、中継用のLラグに配線されています。この中継用のLラグの端子と、終段の真空管のプレートを接続します。合わせてバイアス確認用のチップジャックへの配線も行いました。

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終段プッシュプルの逆相の真空管のプレート配線も同様に行いました。橙の被覆の電線です。

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同様にL-ch側の配線も行いました。次に出力トランス1次側の電源配線も行います。接続先は、配電用の平ラグです。

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中継用のLラグに接続された赤の被覆の電線です。配線長が長くフォーミングが大変でしたが、なんとか配線できました。

バイアス設定回路基板配線

次はバイアス設定回路基板の配線を行います。最初は-5Vの電源の配線です。接続先は配電用の平ラグです。

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同様にR-ch側も配線しました。続いてGND配線を行います。接続先はGND用のLラグです。

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同様にR-ch側も配線しました。次は、定電流回路の配線を行います。終段のプッシュプル構成となる真空管のカソード端子2個をを事前に接続して、そこに配線します。

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白の被覆の電線を使用しました。R-ch側も同様に配線しました。続いてバイアス調整用のグリッド配線を行います。使用した電線は、他配線に合わせて各相を黄色と橙色の被覆を使用しました。接続先は、カップリングコンデンサと入力抵抗が空中で接続しているポイントです。

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他の部分の配線と同様に正相を黄色の、逆相を橙の被覆電線を使用しています。R-chも同様に配線しました。配線の最後は、出力トランス二次巻き線の中点電位用のGND配線です。出力トランス二次巻き線はスピーカー駆動回路ですが、この部分は電流が流れないので他の配線と同様に黒の被覆の単線を使用しました。

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これで全配線が完了しました。

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まだ動作確認できていませんがインシュロックで簡単に束線しています。当初の予定よりも、実装部品が増えてしまいましたが、シャーシ内に納める事ができました。

通電確認

初めは真空管を挿さずに通電確認を行います。確認ポイントは真空管ソケットの各端子です。電源コードを挿して緊張しつつ電源オン、何も起こらず一安心です。各端子をショートさせないように慎重に当たっていきます。結果は以下のとおりです。

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表中の括弧内の数値はACの電圧値を示します。終段の4pinと5pinの値がL-ch/R-chで違っていました。この部分はヒーター回路用の端子です。

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写真は上がL-ch、下がR-ch終段用真空管ソケット部の配線です。黒の被覆線がGND配線で、紫の被覆線がヒーター用のAC電源線です。L-ch/R-chで配線が異なっています。ヒーター点火確認では問題なかったのにと思いつつ、真空管の仕様を確認してみました。

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4pinと5pinがヒーター回路用の端子ですが、ヒーターの電源供給をどちらの端子に行っても問題ない事がわかりました。ヒーター配線を行ったとき意識していたか過去の記事(製作編10)を見直してみましたが、どうやら意識していなかったようです、やれやれ。次回も引き続き通電確認を行います。

 

つづく(製作編29)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編27)

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製作編27

バイアス電流設定回路基板をシャーシに取り付けて、初段の配線を完了させます。

バイアス電流設定回路基板シャーシ取り付け

左右の基板を間違えずに、シャーシに立てたスタッドに取り付けるだけです。

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写真はL-chです。同様にR-chも取り付けました。

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なかなかいい感じです。シャーシの上面はこんな感じです。

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写真はR-chは、ほぼ穴のセンターに半固定抵抗が設置できています。L-chは半固定抵抗の位置がズレた為、基板を一旦取り外してスタッドを緩めて取り付けなおしました。結果は以下のとおりです。

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位置修正の結果、まずまずの状態となりました。

初段出力配線

初段出力部のカップリングコンデンサを取り付ける為に、終段のグリッド抵抗を取り付けます。抵抗値は初段と同様に今回は1kΩです。

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次に初段出力となるSRPP等価抵抗動作をする真空管のカソードと上記で取り付けたグリッド間にカップリングコンデンサを取り付けます。選定したコンデンサは私の製作では定番のヤンツェンの0.47uF/400V品のフィルムコンデンサです。

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値段も大きさも手頃で使いやすいです。取り付けは、初段側を真空管ソケットの端子に、終段側はグリッド抵抗のリードをフォーミングして接続しました。

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終段側はリードが大きく露出していますが、かかる電圧が数ボルトの為、簡単な接触保護のみとしました。初段側はシャーシに触れる心配がないため未処置です。逆相側も同様にとりつけました。

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R-ch側も同様にカップリングコンデンサを取り付けました。

初段入力部配線

初段の入力部は、事前に取り付けた中継用のLラグ板を使って配線します。初めに入力グリッド抵抗をLラグ板に空中配線しました。グリッド抵抗のリードは、一応フォーミングしています。

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真上からみるとこんな感じです。

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続いて入力インピーダンスを決める入力抵抗を取り付けます。Lラグの別の端子をGNDとして、正相と逆相入力間に47kΩを取り付けました。

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写真Lラグの一番右の端子が正相入力で、その隣が逆相入力です。固定用の端子をとばしてその隣がGNDです。反対のチャンネルも同様に入力抵抗を取り付けました。

初段電源配線

初段の電源は、電源回路基板出力を一旦配電用の平ラグへ接続して平ラグから初段の4カ所に電源供給します。初めに電源基板出力を平ラグに配線します。

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写真中の赤の電線です。説明が漏れてしまいましたが、終段電源とチップジャック間の配線も写真で確認できます。続いて、配電用平ラグから、初段SRPP等価抵抗動作する真空管のプレート用の端子へ配線します。

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入力配線

入力用のXLRパネルコネクタと、上記で配線した入力中継用のLラグ間の配線を行います。電線はいつものとおり、ベルデンの2芯シールド線1503Aを使用します。初めに中継用のLラグに接続します。電線のハンダ付けは、Lラグの各端子下側の穴に行いました。前に配線した部分に影響を与えずに配線できます。

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電線はシャーシ上面すみに沿って敷線しました。反対側はXLRパネルコネクタに接続します。3極の接続を間違えないように十分確認をしました。

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同様に反対のチャンネルも配線を行いました。次回は終段の配線をして、通電確認を行います。

 

つづく(製作編28)

無帰還広帯域真空管アンプ(製作編26)

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製作編26

終段バイアス電流設定基板の実装を行ない、通電確認を行います。

バイアス電流設定回路実装

改めて実装する回路図を掲載します。赤枠点線内の回路です。

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最初にグリッドバイアス回路を実装します。390Kと47K抵抗をそれぞれ2本と0.1uFのコンデンサを実装しました。これでこのブロックの全部品の実装完了です。

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両面基板を使用しているので、半固定抵抗の端子配線も問題ありません。半固定抵抗実装側(ハンダ面)は以下のとおりです。

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配線1カ所で被覆電線を使用しました。ここまでの実装をもう1枚の基板で行います。部品を左右対称の配置としているので、実装中にあたまが混乱します。混乱に拍車をかけるのが、部品の端子配列は非対象な事です。注意深く実装進めてなんとか完了しました。

定電流回路実装

実装部品は、トランジスタ、CRD、LED、抵抗の4点です。トランジスタは異常時を想定して400V耐圧品の2SC3631を選定しています。下記が特性の抜粋です。

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最初にトランジスタを仮止めします。放熱性を考えて端子長を長めに取り付けました。また、2枚の左右対称の基板を考慮して部品を縦位置に取り付ける事で、端子配置の非対称性の影響をなくす事ができます。次にエミッタ抵抗を取り付けます。これも縦方向取り付けができました。

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エミッタ抵抗は抵抗値57Ωと特殊です。系列表を確認しましたが、192系列にも存在していませんでした。特殊用途で作られたものでしょうか?最後にLEDとCRDを取り付けて完成です。全部品縦方向取り付けができましたので、もう1枚の基板は非対称配置に悩まずに実装できました。

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通電確認

最初にグリッドバイアス調整回路の確認を行います。実使用状態に合わせて、-5Vを入力して出力電圧の確認を行います。

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確認の状態は半固定抵抗センター位置と左右にフルに回した3ポイントとしました。結果は以下のとおりです。

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ボリュームセンター位置は、おおよそのポイントなので参考値です。続いて定電流回路の通電確認を行います。このブロックの確認も実使用時に合わせて5.5Vの電源を供給しました。最初にR-ch用基板の確認を行いました。

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10mAの電流ですが、LEDは明るく点灯しています。電流値は以下のとおりでした。

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設計は30mAでしたが、31mA流れています。各部の電圧は以下のとおりです。

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最後はL-chの定電流回路通電確認です。R-chと同様に接続して電源オンしました。あらら、過電流保護回路が働いてしまいました。

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保護電流値は40mAで、出力電圧が2.81Vまで下がり安定しています。基板を確認したところ、原因がすぐに判明しました。CRDの実装ミスです。

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トランジスタの真ん中の端子がコレクタで、右側がベースです。CRDはコレクタ側からベースに電流を流しますが、反対に実装されていました。予備のCRDと交換しました。

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修正の結果、R-chと同じ定電流値を確認しました。

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各部の電圧は以下のとおりです。

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CRDを選別した事もあり、ほぼ設計通りの値となっていました。次回は基板をシャーシに取り付けて、初段の配線を完了させます。

 

つづく(製作編27)